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狂愛の魔王  作者: ラー油
4章:天敵

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67.〈カメレオン〉

 「ねえ大成、今度の土曜日予定ある?」

 「いや、空いてるよ」

 僕は誰かに誘われる経験が欠如しているため素直にそう答える。

 「じゃあさ、今度の土曜日二人で遊ばない?」

 「二人で?」

 「やっぱりダメ?」

 ノエルは上目遣いで寂しそうにそう言う。

 「……いや、遊ぼうか」

 僕は少し考えた後そう答える。

 最近尾行されているような気配を感じている。

 そしてノエルが後ろを警戒しているような些細な仕草を見かける。

 何かに警戒して何も見ていない瞳をする時がある。 

 ノエルと尾行している輩が繋がっている可能性もある。

 雫を巻き込まずに対処できる機会は好都合だ。

 「と、いうことなんだけど」 

 次の日の朝、僕は一連の出来事を雫に伝えるとジッとした目を向けられる。

 「報告してくれるのは嬉しいですが拒否権ないですよね?」

 「もう承諾しちゃってるからそうなるね」

 それに関しては本当に申し訳ない。

 「別に大成君を束縛する気はないのでいいですけどね」

 「今度必ず埋め合わせするからさ」

 僕は明らかに拗ねている雫にそう言う。

 「それならいいです」

 雫が優しい表情に戻って安心する。

 そんなこんなで時間は流れて土曜日になる。


 「行ってきまーす」

 僕は動きやすい格好でそう言うと待ち合わせの駅まで向かう。

 「あ!おはよう大成」

 「おはようノエル、早いね」

 僕も十分前に着いたけど先にいた。

 それにしても随分と印象が違うな。

 「へ、変かな?」

 「いや、似合ってるよ」

 ノエルとは雫を交えて遊んだことはあるがその時の格好はスカートでお嬢様の印象を受けたが今はとてもラフな格好で親近感が湧く。

 「あ、ありがとう」

 ノエルは顔を赤らめながらそう言って横に並ぶ。

 「行こうか」

 「うん」

 僕達は目的地であるスポーツ施設へと向かう。

 「ノエルが転校して来て一ヶ月経つけど学校はどう?」

 「もちろん楽しいよ、皆とも仲良くなれたし」

 一ヶ月間ノエルを見てきて分かったことはちゃんと高校生であるということだ。

 恐らく普段は使い分けているのだろう。

 それでもふとした瞬間に素が出る。

 体育の授業や雫や僕と話しながらお昼を食べている時など本当に噓偽りない笑顔を向ける。

 その顔を見てから普段の顔を見ると仮面を被ったように見える。

 「僕はノエルに会えてよかったよ」

 「え?」

 僕が噓偽りのない感情を伝えるとノエルは素っ頓狂な声を出す。

 「この世界は悪い人ばかりじゃないって改めて思えたからさ」

 雫以外どうでもいいという思考じゃ山門君と話そうとも思わなかっただろう。

 ノエルへの不信感からきた展開だが関係ない。

 「だからありがとうノエル。僕と友達になってくれて」

 「こ、こちらこそですわ」

 ノエルはそう言うと口を慌てて押える。

 「いつかそっちの口調で話してもらえるよう努力するよ」

 「そ、それ無自覚で言ってまして!?」

 ノエルは何だか怒った様子でそう言う。

 「本当のことを言ってるだけだよ」

 そう、間違いなく本音だ。

 だからこそ関係をリセットするようなことにならないことを心から願っている。


 「まずは何からする?」

 「じゃあ、手始めにバスケからやりましょう」

 ノエルが言ったようにバスケの施設内に入ると1対1で向かい合う。

 「勝負してみたかったの」

 ノエルはゆっくりとボールを突きながらそう言うと一気に姿勢を落として身体を右に傾けながら左に切り替えしてあっさりと僕を抜き去る。

 「油断大敵ね」

 「これは手厳しい」

 明らかに体育の時とは異なる本気の動きにギアを上げさせられる。

 今度は間を空けてどっしりと構える。

 「こんなにスペース空けていいの?」

 ノエルはそう言ってスリーを打とうとするが僕は一歩前に出て止まる。

 ノエルとの身長差は20センチ程ある。見てからで間に合う。

 ノエルもそれを察したのかトップスピードで右に切り込む。

 僕もそれにピッタリとついて行ってノエルが止まるタイミングで詰まらせる考えだった。

 「……マジか」

 しかしノエルは僕がノエルに合わせて止まるタイミングで身体が流れた一瞬のタイミングで反対へのステップバックからシュートを決める。

 「まぐれ……じゃなさそうだな」

 ノエルの目は獲物を狩るような鋭く集中した目だった。

 「次は止めるよ」

 僕はそう言って極限まで集中する。

 「そう来なくちゃ」

 ここからは一進一退の攻防となったがフィジカルの差で僕が有利に進む。

 そして8対8で同点の場面で僕の攻めの番になる。

 「ここまで来たら勝ちたい」

 僕はそう言って手段を選ばないことを心に決める。

 「ちょ、ちょっと!そこまでするの!?」

 僕がとった行動はノエルに背中を向けて力技でゴール下に向かうことだった。

 どんなに汚い手を使っても今は勝ちたい。

 「男なら正々堂々と戦いなさい」

 楽しそうなノエルは僕の背中に体重をかけてブロックしながらそう言う。

 「これ以上続けたら開始十分で倒れる羽目になるからね」

 そう言って背中でノエルを押した勢いのまま後ろに跳ぶ。

 「甘いですわ!」

 ノエルはそう言って勢いよく手を伸ばしながら前に跳ぶ。

 「ちょちょ」

 ノエルは熱くなったのか空中でかなり強引なブロックをしにきてお互いに態勢を崩す。

 「きゃ!」

 空中でバランスを崩したノエルは僕を押し倒すように倒れる。

 「大丈夫ノエル?」

 僕は馬乗り状態のノエルのそう聞くが返事はない。

 「あ、あう、あっあ」

 どんな顔をしているか見えないが悶えるような声が聞こえる。

 「ご、ごめんなさいまし!」

 ノエルは悲鳴のような声でそう言うと鎖で自分を引っ張って離れる。

 その声で冷静になって周りを見渡すとかなりのギャラリーが出来ていた。

 「これは確かに恥ずかしいな」

 僕はそう呟いてノエルと一緒に足早に退散した。

 

 「今日はありがとう大成」

 ひとしきり遊んで沈みかけている夕日を背にノエルはそう言う。

 その表情はどこか哀愁を感じる。

 「こちらこそありがとう。今日は楽しかったよ」

 僕がそう言うとノエルは泣きそうな顔を向ける。

 その後もノエルはずっと不安そうでソワソワしている。

 「……さてと」

 僕は聞こえなようにそう呟くと神経を後ろに尖らせる。

 駅に着いたタイミングから何者かの視線を感じた。

 そして今のノエルは分かりやすく後ろを警戒している。

 今まで視界に捉えられたことはなく真上から視線を感じたこともある。

 ただの〈透明化〉ではないと思われる。

 僕は目を閉じて聴覚だけに集中する。

 余計な風やセミの音を消し去って必要な音を探る。

 「……ペタ……ペタペタ」

 僅かだがそんな音が聞こえると僕は落ちていた小石を拾う。

 「た、大成。あの……」

 「待ってノエル」

 僕はそう言って鼻の前に人差し指を立てて早歩きをする。

 「……ペタ……ペタペタペタ」

 「そこか」

 位置が分かった僕は振り返って手にした石を思いっきり透明人間に投げつける。

 「っな!」

 そんな声と同時に力強く地面を蹴る音がする。

 「だいたい二週間前からいたよな?何か用か?」

 恐らく着地したであろう何もない位置を見ながらそう聞いてみる。

 「返事もなしか、失礼なやつだな」

 そう言ってみるがピンチである。

 さっきの投石で軽く血を流してもらいたかった。

 でも実体が存在することが分かればやりようはある。

 「何で位置が分かるのよ」

 ノエルは何かを呟いたが気にしている暇はなくペットボトルの中身をぶちまける。

 「しまっ!」

 〈透明化〉の弱点は実体が存在すること。

 僕も返り血を浴びないように気を遣った。

 「そこか」

 横に長いシルエットを確認した僕はローキックの要領で蹴るが再び跳躍されて避けられる。

 「逃がさないよ」

 僕は着地を狩るために全力で走ると空中に赤色の円が浮かび上がって中心に折りたたまれたようなピンク色が見える。

 そのピンクは圧縮されて今にも破裂しそうに見えた。

 「っぶな!」

 咄嗟に横に転がると足元をピンク色の舌が銃弾のように通って地面を抉る。

 「素晴らしい能力だな」

 思わず僕はそう呟いていた。

 攻撃まで出来るなら〈透明化〉の上位互換だ。

 「素晴らしい能力だと?ふざけるなよガキが!」

 明らかに怒り心頭な声が上がると透明人間が姿を現した。

 「なるほど、能力は〈カメレオン〉か、やっぱり素晴らしい能力だ」

 僕がそう言うと〈カメレオン〉は理解出来ないような顔をした。

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