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第82話 文化を勉強するから文化祭

現在第2巻が発売中です!!

「え、文化祭?」



 ある日、朝飯を食っていると、突然雪宮からそんなことを言われた。しかも来月だと言う。

 余りにも寝耳に水。せっかく校外学習が終わって一息ついたと思ったのに。



「ええ。年間スケジュールにも、ちゃんと載ってるわよ」



 かばんから取り出したペラ紙を俺に突き出す雪宮。確かに書いてある。よく見ると、夏休み明けには体育祭、修学旅行の日程も組まれていた。



「こんな紙貰ったか?」

「2年の初めに配られてるわよ。……まさか失くしたの?」

「だな。失くした」

「何を自信満々に言ってるのよ」



 ジト目で睨まれた。ごめんて、そんなに睨まないで。

 笑顔で誤魔化すと、雪宮は呆れたように嘆息してスケジュールをかばんにしまった。まさかそれ、いつも持ち歩いてるの? 意識たけぇな。



「と言っても、今回のイベントは私たち生徒会ではなく、文化祭実行委員が主導になるわ」

「あ、そうなの?」



 なんだ、めっちゃ楽じゃん。よかったー、面倒なことがなさそうで。



「でも私たちは私たちで、生徒間の親睦を深めるという役目もあるのだから、変に浮かれてはダメよ。と……特に、男女のことで」



 少し頬を染めて、釘を刺してきた。そんなに恥ずかしがるなら、わざわざ言わなきゃいいのに。

 それにわかってないな、雪宮。俺たちは男子校で、女子への免疫が極端に減ったんだぞ。浮かれる前に深い闇の底に沈むわ。



「わかってるって。文化祭マジックなんて起こらないから」

「……あなた、文化祭でマジックをするの?」



 あれ、この言葉通じない?



   ◆◆◆



「そっ、それではっ。ら、来月には文化祭がありますので、そろそろクラスの出し物を決めようと思います……!」



 その日の1時間目。本来であれば数学の時間を潰し、クラスの出し物を決める時間となった。なんともタイムリーな話だ。

 珍しく授業のない時間に、クラスメイトたちは一様にソワソワしている。

 因みに文化祭実行委員は、4月の委員会決めで決まっている。各クラス男女1人ずつで、今教壇に立っているのはその2人だった。

 女子生徒は天盾南帆(あまだてみなほ)さん。クラスでも随一の可憐な見た目と小さな身長で、男子生徒だけでなく女子生徒からも愛されている。

 男子生徒は九堂。紹介終わり。

 九堂が黒板に、無駄に綺麗な字で『文化祭の出し物案』と書いていく。

 ふむ、出し物か。こういうのって大体は……。



「「「…………」」」



 沈黙だよな、知ってた。言い出しっぺが割を食うことになるし、勉強も大変な白峰なんだ。わざわざリソースをそっちに割くこともない。

 でもこれじゃあ、余りにも可哀想だ。



「あ、あの、その……ぁぅ……」



 見ろ、天盾さんなんて泣きそうな顔をしてるじゃないか。男子お前ら、もっといつもみたいにガンガン行け。

 はぁ……仕方ないな。



「すまん、天盾さん。ちょっと聞きたいんだけど、いいか?」

「は……はいっ! な、なんでも聞いてくださいっ、八ツ橋さん……!」



 うっ、眩しい笑顔。助け舟を出してくれたのがそんなに嬉しいのか。



「俺たち男子生徒は、白峰に来て初めての文化祭なんだ。まだこの学校の文化祭が、どんなものかを理解してない。だから去年の文化祭の出し物を教えてくれるとありがたいんだけど」

「な、なるほど。確かにそうですね。すみません、気が利かずに……」



 今度はシュンとしてしまった。表情豊かな子だなぁ。雪宮も見習って欲しい。



「そ、それで、天盾さんのクラスは何を……」

「はい! 『紅茶の暗部と幸福の歴史』です!」



 …………ん?



「えーっと……それってもしかして、展示物……か?」

「はい。文化に関するものを調べ、展示する。それが文化祭ですから」



 ……ガチ?

 そっと、見守っている先生に目を向ける。



「先生、これ本当ですか?」

「ええ、まあ」

「……屋台とか、お化け屋敷とか、有志のイベントは?」

「近年では無いですね。もちろんやりたいのであれば、止めはしません。私たち教師も、精一杯バックアップします」



 ですよね!? よかった! そんなつまらん文化祭、本気でやる気出ないもん!!



「やたい? おばけ? いべ?」



 聞き馴染みがないからか、天盾さんも女子生徒も首を傾げている。なるほど、こりゃ難儀しそうだ。



「えっと……すみません、先生。放送室行ってきていいですか?」

「……はい? ちょっ、八ツ橋くん!?」

「後で説教はたくさん聞きますからー!」



 教室を飛び出し、急いで放送室に向かう。

 これはまずい。恐らく今、学校中がお通夜状態だ。こんな状態でクラスの出し物なんて、決まるはずがない。

 放送室に飛び込むと、チャイムを鳴らしマイクのボタンを押した。



「あー、あー。生徒会長の八ツ橋葉月だ。繰り返す、生徒会長の八ツ橋葉月だ。今クラスでは、文化祭の出し物について話し合っていると思う。だがしかし、どうやら女子生徒たちは文化祭を文化の展示発表会だと思っている節があるらしい。そこで男子諸君、お前らが先導して文化祭の案を出せ。いろいろあるだろ、女装喫茶とかたこ焼きの屋台とか駄菓子の押し売りとか。お前らそういうの得意じゃん。せっかくの高校の文化祭だ。楽しまないと損──」

「ちょっ! 八ツ橋くん何をしているんですか!?」

「げっ、先生! ちょっ、待って謝るんで! すみませんすみませんごめんなさい! というわけでお前ら、以上俺からでした!! あ──」



 ブチッ──。

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