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第7話 これからについて

 苦笑いを浮かべ、用意していた別のタッパーを紙袋に入れて持ってきた。

 ステーキ、ポテトサラダ、それとバゲット。

 あと、一応買っていたミニトマトのパック。栄養バランスを考えてな。

 雪宮に合わせて、全体的に量は少なめだ。



「ほら、持ってけ」

「ごくり……あ、あり、がと……」



 喉を鳴らすほどの唾を飲み込む雪宮。

 視線は既にタッパーに釘付けだ。

 こんだけ喜ばれると、作り甲斐があるというかなんというか。



「む。ミニトマトきらい」

「わがまま言うんじゃありません。大きくなれないぞ」

「は?」

「……失言でした」



 いや、どこがなんて一言も言ってないじゃん。自意識過剰ですわよ?

 いつもの冷たい視線にドギマギしていると、雪宮はため息をついて目を伏せた。



「ま、まぁ、貰ってる私が文句言うのもお門違いよね。……食べるわ、頑張って」

「お、おう。まあ残ったら、明日にでも返してくれ」

「ええ」



 なんだか、腹を空かせた野良猫に餌をやってる気分になってきた。

 でもずっと作ってやるわけにもいかないし……あ、そうだ。



「もしよければ、これから毎晩作ってやろうか?」

「いいの!?」



 うおっ、顔ちか……!

 俺の提案が嬉しかったのか、目を輝かせてずずいっと迫ってきた。

 ちょ、本当に顔だけはいいな。

 俺が少し距離を取ると、近いことに気付いた雪宮が恥ずかしそうに咳払いをした。



「まあ、八ツ橋くんが私に料理を献上したいのであれば、やぶさかではないわ」

「じゃあやめとくわ」

「…………」



 あ、やべ。泣きそうじゃん。



「うそうそ。冗談だって。その代わり、料金は割り勘。お前も料理を覚えるのが条件な」

「……私も?」

「ああ。これからずっと俺が作り続けるわけにもいかないから、お前にも覚えてもらう。そしたら自分の好きなものを、自分の好きな時に作れるぞ。雪宮、何が好きなんだ?」

「……唐揚げ」

「……唐揚げか」

「な、何よ」

「いや別に」



 昨日のカレーといい、唐揚げといい、意外と子供っぽいものが好きなんだな。



「ふむ……クッキー好き?」

「! ……好き」



 お、反応した。



「チョコレート好き?」

「好き」

「マカロン好き?」

「好き!」

「ケーキ好き?」

「大好き!」

「まあ作れないんだけど」

「!?」



 さっきまでわくわくしてたのに、奈落に落とされたような顔になった。

 ごめんて。だからそんな睨まないで。



「今度作れるようにしとくからさ。俺はお菓子作り。雪宮は料理。一緒に練習しようぜ」

「……わかったわ。でもあんまり高いのはダメよ。私もお金はやりくりしてるんだから」

「わかってるって。俺も金はないし、安く済ませる。明日から家事は教えてやるよ」



 てか、金の心配をするお嬢様ってどうなんだ?



「じゃあ、念のためメッセージアプリのアカウント交換しようか。その方が何かと便利だろう。雪宮が食べたいものを教えてくれると助かる」

「悪用したら吊るすわよ」

「しねーわ」



 てか吊るすって何を? 首? こわ、発想がこわ。

 スマホでIDを交換すると、『氷花』の名前が登録された。

 なんだかんだ、同年代の女子のIDを知ったのって初めてだな。

 相手は雪宮だが、それでも嬉しいものは嬉しい。



「それじゃ、明日からよろしくお願いするわ」

「おう。またな」



 もう用はないとでも言うように、雪宮はいそいそと自分の部屋へと戻っていった。

 よっぽど我慢できなかったんだろう。まあ、ステーキなんてなかなか食えないもんな。

 俺も自分の部屋に戻り、食事の支度をし……そこで気付いた。

 待てよ。よくよく考えると、これ雪宮と毎日顔を合わせるってことだよな。

 学校ではクラスが別だから、顔を合わせるのも廊下くらいしかない。

 だから精神的なストレスも緩和されるけど……これ、自分で自分の首を絞めてるような。

 毎日あいつの冷たい視線を受けなきゃいけないって、ちょっとしんどい気がする。

 ……ま、昨日掃除をしてた時はそうでもなかったから、大丈夫だろう。

 大丈夫だと信じたい。

 大丈夫だよね?

 ……気にしても仕方ないか。……ん?



「すーてきーなスーテーキうーれしーいなー♪ ポテトのサラダーもつーいてーきてー♪ こーんがーりバーゲェットさっくーさくー♪ でもでもトマトはダメなのよー♪」

「ああ、またか」



 今度はステーキの歌……これ、雪宮の癖なんだろうな。嬉しいことを歌にするの。

 隣から聞こえてくる無駄に上手い歌を聞きつつ、俺もソファーに座って夕食を食べる。

 壁越しだけど、一緒に夕飯を食べる。

 それが嬉しくて、俺もつい笑みをこぼした。

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