表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2巻発売中】ツンな女神様と、誰にも言えない秘密の関係。  作者: 赤金武蔵
初めてのイベントはトキメキと共に
72/92

第71話 変な女性

 途中のゴミ箱に食べきったゴミを押し込み、身軽にしてから目的地へ。



「おぉ……なんか、すごい場所だな」



 目的の場所は、駅からはさほど離れていない、少し坂を登った所にあった。

 広々とした庭園と、奥には趣のある屋敷がある。

 庭園には色とりどりのバラが咲き誇り、それは見事なものだった。



「鎌倉文学館。今がちょうど、バラの見頃なのよ」

「そうなのか? この時期だと、アジサイのイメージが強いけど……これは見事なもんだ」



 定番の赤はもちろん、白やピンク、黄色、青、オレンジ、緑、黒なんかもある。

 これだけ満開のバラを見るのは初めてだ。いったい、どれくらいあるんだろうか。

 庭園のバラを眺めながら、しばらく探索する。

 一般客もちらほらいるが、白峰高校の生徒は誰一人いなかった。



「ここが来たかった場所か?」

「ええ。ここならスタンプスポットにもなっていないし、静かにのんびりできると思って」



 確かに……ここにいる人たちも、無駄に騒ぐようなことはしていない。

 みんな、思い思いに楽しんでいる。

 かく言う俺も、こういった雰囲気の場所は好きだ。



「いい場所だな……」

「あなたなら、そう言ってくれると思ったわ」



 可憐な花のように微笑み、近くのベンチに座る。

 俺も雪宮の横に座り、満開のバラと、その先に見える海を見渡す。

 海の見える屋敷に、庭園。そしてバラ。

 こんないい場所があったのか。



「ここなら、スタンプスポットにしてもよかったかもな」

「いやよ。私たちがのんびりできないじゃない」

「……俺とのんびりしたかったの?」

「ダメ?」

「ダメじゃないが……」



 なんか意外だと思って。

 家でも一緒だし、そういうことを気にする奴だとは思わなかった。

 雪宮は深く息を吐き、白い目で見てきた。



「ずっと勉強やら、家事やらで、のんびりした時間なんてなかったじゃない」

「それはそうだが……仕方ないだろ。俺らは一人暮らし。それに学生の本分は勉強だ」

「あなたに本分を語られたくないわ」



 この野郎。

 数秒だけ睨み合うが、それもすぐそんな気分じゃなくなった。

 この非日常的な空気がそうさせるのだろうか。気持ちがゆったりしてしまっている。



「ま、確かにな。こういう時でもないと、のんびりなんてできないだろうし」

「たまには休息も必要よ」

「へいへい」



 まさか、あの雪宮から休息なんて言葉を聞くとは。

 春風さんの言うとおり、少しは丸くなったってことなのかもな。

 ベンチでの休憩もそこそこに、庭園の探索や、屋敷の探索をする。

 一応、俺たちもレポートの提出をしなきゃならないからな。遊んでばかりもいられない。



「おぉ……館内もすごいな」

「本当、噂以上ね……」



 異国感溢れる館内に、展示品が並んでいる。期間限定のイベントもやっているみたいだ。

 黒月が前にやっていたことを思い出し、レポート用に写真を何枚か撮る。

 なるほど。これをレポートに貼り付ければ、それだけでページ数のかさ増しができそうだ。



「卑怯ね」

「じゃあお前はやるなよ」

「や、やらないとは言ってないわよ」

「冗談だ。そんな拗ねるな」

「……ふんっ」



 あ、怒った。

 ちょっと不機嫌になった雪宮が、少し早歩きで先に行ってしまう。

 俺はもう少し、ここでのんびり見学させてもらおう。

 展示品を見て周り、奥の談話室と呼ばれる場所に入った。

 どうやら休憩スペースらしい。俺以外には誰も……あ、いや。一人いた。

 綺麗な女性が、メモ帳に一心不乱に何かを書いている。

 けどそのせいで、カバンが倒れて中身が出てしまっている。気付いてないみたいだけど。



「……あの」

「はい?」



 話しかけると、女性が顔を上げた。

 ……可愛い。そんな直球的な感想が浮かんだ。

 かっちりしたパンツスーツを着ている。多分年上だと思うけど、綺麗やかっこいいより、可愛いといった印象の人だ。

 ベリーショートの髪を僅かに揺らし、首を傾げる。

 学生服を着た俺を見て、訝しんでるみたいだ。



「……ナンパはお断りします。こう見えても既婚者ですので」

「違います。全然違います」

「……そこまで否定されると、腹が立ちますね。ナンパしなさい。男の子でしょう」

「えぇ……」



 何この人めんどくさい。なんでこんな人に話しかけちゃったの、俺。



「じゃなくて、カバンひっくり返ってますよ」

「え? ……あ」



 女性は途端に顔を真っ赤にし、いそいそとカバンの中身をしまった。

 本当に気付いてなかったらしい。



「こほん。……わざとです」

「無理がある」



 どんな言い訳だ。小学生でも、もっとまともな言い訳するぞ。

続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お、これはお母さんかな?素の性格はそっくりだったりするんかねー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ