第46話 スイーツタイム
二人を伴って学校から喫茶店に移動。
平日の夕方近くだからか、奥様方もいない。別の学校の生徒や、大学生のカップルがちらほらいる程度だ。
おかげで待つことなく座れた。
「二人は何注文する? 俺はブラックコーヒーだけでいいけど」
「待ちなさい。ここは慎重に考えるべきよ」
「そーだよ、はづきち。せっかくごーほー的に寄り道できてるんだから、食べたいものは慎重にならなきゃ」
と、雪宮はメニュー表をガン見して顎に指を付けた。
隣では、黒月も鼻歌交じりにメニュー表を見ている。
そんなもんかね……別に一度帰ってから喫茶店に来ても変わらないと思うけど。
「いつもコーヒーだから、どうせなら紅茶を……ならここではクッキー……? いえ、普段食べないケーキやパフェを……はっ、モンブランがある……!? な、悩ましい……」
真剣な顔で、考えてることは可愛いな。
確かに甘いもの好きなのは知ってたけど、いつも家にいるからそんなに食べてないもんな。
クッキーだって、この間食べたばかりだったし。
そんな雪宮を初めて見たのか、黒月はニコニコと雪宮を見ていた。
「氷花ちゃんってスイーツ好きなんだねぇ」
「……好きじゃないわ」
「ぬへへ、それは無理があるよ〜」
黒月がニヤニヤと雪宮を覗くと、恥ずかしそうにぷいっとそっぽを向いた。
黒月の言う通りわかりやすいからなぁ、雪宮って。
「食べたいやつ、全部食ったらどうだ?」
「えっ。それじゃあお夕飯が……」
「大丈夫だろ、一日くらい。いつも頑張ってんだし、たまには息抜きしような」
「……わかったわ。すみません」
雪宮が店員を呼び止め、あれこれと注文する。
いつものように無表情だけど、少しウキウキしているように見えた。
「はづきち、優しーじゃん」
「俺はいつも優しいだろ」
「……そうだね。そーかも」
……? なんか黒月、ちょっとテンション低い……か?
いつもうっとうしいくらいにテンション高いのに、憂いがあるみたいな……やっぱり体調悪いんじゃ。
そう思い話しかけようとすると、黒月はニヤリと口角を上げた。
「にしても、氷花ちゃんがいつも頑張ってるのを知ってるって、はづきちもよく見てんだね」
「ん? いやぁ、そういうわけじゃ……なんとなく、雪宮の性格上そう思っただけで」
「ふーん。まあそのとーり、氷花ちゃんって頑張り屋だからねぇ。こーいう時にでも気を抜かないと、いつも頑張りすぎちゃうから」
「一年の頃からそうなのか?」
「うん。今は雰囲気が柔らかくなったけど、去年とかすっごかったよ。まさに女帝って感じ」
女帝か。言えてる。
会ったばかりの頃の雪宮を思い出して苦笑いを浮かべていると、注文を終えた雪宮が俺を見てジト目を向けてきた。
「何よ、そんなに視姦して。変態」
「してねーわ」
注文したスイーツが運ばれてきてから、話し合いをすることに。
それまでなんの実りのない会話を続 していると、ようやく注文したものが運ばれてきた……のだが……。
「うわ……」
「すごぉい……」
雪宮の前におかれたスイーツの数々。
ショートケーキ、ガトーショコラ、モンブラン、いちごパフェ、メロンパフェ、プリン。
それに加えてクリームソーダも頼んでいる。
圧巻というか、ドン引きというか……。
「お前、それ全部食えるのか?」
「ええ。私にかかれば余裕よ」
とてもそんなことを言える量には見えないんだが。
まあ食うのは雪宮だし、金も自分の分は自分で出す決まりにしたから、いいけどさ。
因みに俺はブラックコーヒーのみ。
黒月は、ロイヤルミルクティーとフィナンシェだ。
雪宮は行儀よく手を合わせると、ガトーショコラへフォークを刺しこみ……ぱくり。
「〜〜〜〜ッ!」
うわぁ、美味そうに食うなぁ……。
目をぎゅーってさせて、喜びを爆発させまいと必死になってる感じ。
「氷花ちゃんかわゆす……写真撮ろ」
「バレたら怒られるぞ」
「大丈夫でしょ。こんだけ夢中になってたら」
……それもそうか。
夢中になってスイーツを食べまくる雪宮に、それを見てニコニコと楽しそうな黒月。
あの、楽しむのもいいんだけど、校外学習のこと忘れてないよね?
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