第37話 校外学習・準備
「八ツ橋生徒会長、起きなさい」
ゴスッ!
「ふがっ!?」
お、おぉぅ……!? 脳天に痛みが……!
痛みに耐えて目を開けると、目の前に雪宮が仁王立ちしていた。
……国語辞典を持って。
「定例会議中に居眠りをするなんて、いい度胸ね」
「わ、悪かったと思うが一つ聞きたい。その手に持っているのはなんだ」
「……目覚まし?」
「気でも狂った?」
流石の八ツ橋さんもドン引きですよ。
だってそれ、普通に鈍器じゃん。凶器じゃん。下手したら死んでるで、俺。
ジト目を向けるが、雪宮は真正面から冷たい目で睨んできた。ひえっ、怖い。
「なら起こし方をもっと工夫してくれませんかね、雪宮生徒会長殿」
「……ガラスの灰皿?」
「一昔前のヤクザ映画か」
しかもそれ起きれないから。一歩ミスったら永遠の眠りにつくから。
「じょうだ──」
「冗談じゃ済まされないぞ」
「…………(ぷいっ)」
顔逸らすなコラ。
顔を逸らしたまま、雪宮は自分の席に戻って行った。
くそ、まだ頭ジンジンする……!
おいお前ら助けろよ。
そう思ってうちの生徒会メンバーの方を向くが、こいつらにも目を逸らされた。
あ、笑ってやがる。あとで鉄拳制裁だ。お前らも痛みを味わえ。
「……で、なんの会議してたんだっけ」
「…………」
ごめんて。だからそんなゴミを見るような目で見ないで。
「……今回の議題は、校外学習についてです。目の前の机にかじりついて勉強するだけでは人間形成はされないというのが、白峰女子の考えです。自然や文化に触れることで人間形成の糧とする。よって、校外学習に力をいれているのです」
ああ、そうだった。そんな話だった。
校外学習か。確かにいいかもしれない。
ずっと勉強ばかりでもつらいだろうし、なんなら勉強が嫌いなやつも中にはいるだろう。
それを考えると、息抜きになっていいかもな。
「でもそれって、先生たちが先導してやるんじゃないのか?」
「行く先に関しては先生が決めることになっています。ですが現地では生徒会が主導になって、イベントを進めることになっているのです。生徒の自主性を高めるのが狙いということで」
なるほど、そういうことか。
受け身じゃなくて、率先して行動する、か。いいかもしれないな、その方針。
「例年は生徒会が現地のことを調べたりして、ルートを決めていました。ですが今年は統合後の初の校外学習ということなので、少し趣向を凝らそうかと思います」
趣向?
雪宮がホワイトボードに何かをキュッキュと書いていく。
なになに? ……スタンプラリー?
「今年の行き先は鎌倉と湘南です。それらに十ヶ所にスタンプコーナーを設置。そのうちの五つ回るコースを、それぞれの班で決めてもらいます。そうすれば、生徒たちが本当に興味のある場所を楽しめると思います」
お……おぉ。すげーきっちりしてる。
雪宮の言う通り、そういう趣向は面白い。というか、普通に俺がやりたい。
高校二年生なんだから、引率なんてする必要はない。ましてや全部こっちで決める必要もない。
生徒の自主性というなら、自分たちで決めさせることも重要ってことか。
「まずは一か月後に、二学年の校外学習があります。続いてさらに二週間後に一学年がありますので、各学年の生徒会メンバーは現地の視察をし、スタンプポイントを決めてください」
「三年生は?」
「受験勉強があるので、三学年からはイベントがほとんどありません。よくて学園祭とか体育祭ですね」
三年生、カワイソス。
まあこの学校の授業ペースを考えると、むしろそれが普通なのかもな。
てことは、俺らも今年のイベントが最後か……なら、全力で楽しまなきゃな。
「ということで……八ツ橋生徒会長。これでよろしいですか?」
「え? ……まあ、いいと思うぞ」
「ありがとうございます」
……? なんで俺に許可を得たんだ?
首を傾げていると、みんな俺を見て苦笑いを浮かべていた。え、なんで?
すると、俺の隣にいた副会長が、俺の脇をツンツンつついてきた。
「ほら会長、前にスタンプラリーを却下したろ。それでだよ」
「あ」
確かにあったな。一番最初の定例会議のとき。
いや、あれは親睦会でスタンプラリーって言われたからであって、スタンプラリー自体を悪いとは言っていない。
だから全然大丈夫だ。
「それでは、二年生はこの場に残ってください。二班に分け、現地の視察の日程を決めます」
そして、黒羽からは三人。白峰からは四人のメンバーが残り、今日の所は解散になった。
気になるメンバーはというと……くじ引きの結果。俺、雪宮、黒月が鎌倉。その他のメンバーが湘南になった。
……こいつ、またやりやがったな。
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