昴(すばる)
「昂の尾星」は昂の古の呼称で「統星の尾の星」のほうが正式のようです。この時期は、午後8時頃には東の空に上から順番に昂(スバル星団)、牡牛座のアルテバラン、オリオン座のペテルギウスが距離を置いて並びます。アルテバランが、やや南寄りなのですが、気にならないくらいの配列です。
スバルは星の集団で、昔から六連星とも呼ばれていて、自動車メーカーのスバルのロゴマークは、この六連星が図案化されたもののようです。
スバルは星のあつまりですから、慣れてくると分かりやすいのですが、1等星はないので、慣れないと探しにくい星団かもしれません。いずれにせよ、じっと見ていると、星団の周囲に淡い雲のような光が感じられて、ちょうど、そこで宇宙空間に穴が開いているように思われます。そして、その奥に、また別の宇宙が広がっているように感じます。
至極、個人的な感じ方なのですが、それを詩に取り込んでみました。
空気が澄めば、晩秋の 星は数多の輝きて
暮れて歩めば、川面には いくつか星も映り込む
羽織るコートの襟を立て 腕をすくめて、袖の中
隠した指は、暖かき きみの指をば恋しがる
平家星を見上げれば 昂の尾星は、なお、赤く
辿れば、先に六連星 昴は遠く輝ける
「昂は別の宇宙への 入り口なの」ときみは言う
「じっと見てると、その奥は さらに広がる星の海!」
きみの言葉の浮かびきて 昴をみれば、群星の
輪光の中、その奥に 無限の星を垣間見る
昂が昇り、天上に 座すれば、僕は地を離れ
星の海へと、昂へと 遠ききみへと落ちてゆく
夢幻の空を落ちながら いつしか、きみと隣り合い
二人は、いつか手をつなぎ 果てなき宙を落ちてゆく
星ばかり詠っていますが、毎日、犬の散歩に行って空を見上げていると、どうしても、その広がりや神秘性のようなものに惹かれてしまいます。
ちなみに、前書き「北寄り」と書いていましたが「南寄り」の間違いでした。いつも見ているのに、人間の感覚というものはあやふやです。