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隠れん坊

作者: 瑛

いやー、今日も暑いですね。少しでも私の怪談話を聞いていただいて涼しくなっていただければ幸いです。


突然なんですけど、“隠れん坊”ってご存じですか?まあ、知らない人はいないですよね。まあ、簡単に言ってしまえば子どもの遊びです。これは世界的に行われている子どもの遊びで英語だと”hide and seek”って言うんです。でもね、この日本で知らない人はいないほどのポピュラーな遊び、成立したのは江戸時代って言われてるのご存じですか?もっと前からあるんじゃないかって思ったそこのあなた‼





・・・正解です。平安時代に今の“隠れん坊”の元になったものがあるらしいんです。でも、それは今と違って大人のそれも、恋人同士が互いの想いを確かめるために行っていたとか。なんでも、山に女性が隠れ、恋人の男性がそれを探しに行くものだったらしいんです。何だか今と比べると壮大ですよね。それに昔から山はあの世とこの世の境なんて言われています。そんなところでかくれんぼをするなんて真実の愛っていうのを求めていたんですかね。それとも別の意味があったのか、それはやった人にしかわからないですね。それより、私みたいに興味をそそられる人は少なからずいるものです。いるんですよ、それを真似しようとする人たちが。





ある大学のある一室、そこには暇で暇で仕方ない5人の学生が集まっていました。なにやらそのなかの一人が興味深いものを発見したようです




「なあ、これ見て見ろよ」

「何々?面白いこと?」

「詰まらなかったら許さないわよ。」

「おー、こわっ。何々?平安時代のかくれんぼだって?面白そうじゃん。」

「へぇ、そうなんだ。知らなかったなぁ。」

「これやって見ない。俺らの中でカップルいることだし。」

「へっ?嫌だよ、そんなの。危ないじゃん。」

「えー、なんで面白そうじゃん。やって見ようぜ、ぜってーすぐ見つけてやるから」

「ヒュー、ヒューラブラブだね、お二人さん。」

「見せつけてくれちゃって・・・やっちゃえ、やっちゃえ。」

「面白そう、やっちゃえ~」

「みんながそういうなら」





あの話を聞きつけて、やろう、やろうと盛り上がっています。ただ、当の彼女は気が気ではありませんでしたが、彼氏が“俺が絶対すぐに見つけてやるから”なんて言うものだから気分がよくなり、次の日おこなうことになってしまいました



「はあ、なんで私OKしちゃったんだろ。・・・あっ、明日の予報雨になってる。やった~、これでやらなくて済むかも。」



その夜、よくよく考えて彼女は不安になっています。雨でも降れば、中止になってくれるだろうなと思って、天気予報をみたら、雨になっていました。彼女は喜んだそうです。でも、こういう時に限って予想が外れてしまうものです。朝起きると違和感がして、カーテンを開けるとそこにはサンサンと照り付ける太陽が昇っていたんです。雨の音すら聞こえず、雲ひとつない真っ青な空に



「噓でしょ!?・・・え!?はあ、これじゃ逃げられないじゃん。」



彼女は落胆しています。極めつけは彼氏から“絶対来いよ”と連絡が。もう逃げ場がありません。せめてと彼女は家にある食料をバックに詰め込み家を後にしました。






待ち合わせ場所に着くと、そこには想像以上の物々しい山がそびえたっていました。あの世とこの世の境、そういうのにふさわしい山が。まあ、ただ単に怖いという気持ちが前に出てしまっているだけなのかもしれませんけどね




「え?ここでやるの?」

「大丈夫だって。それとも、俺のこと信じてないの?」

「そうだ、そうだ。信じられないのかよ。」

「ここまで来て逃げるとか、ありえな」

「そんなことないよね。ただ、確認しただけだよね」




逃げることが許される雰囲気ではありません。それに、大量の荷物を持ってきたのです。周りの空気は冷ややかなモノで、それ以上空気を壊すわけにはいきませんでした。彼女は意を決して山の中に入ります。30分が経ったら彼が追ってくることになっています。彼女はなるべく見つかりやすい場所に隠れようとしました




「うーん、どこがいいかな。・・・ってうわっ‼」




彼女はキョロキョロと辺りを見回していたためか、目の前が崖になっていることに気付かず、ズザザザザッと滑り落ちてしまいました




「いててててっ。・・・っ‼」





彼女は立ち上がり、すぐにでも元の道に戻ろうとしましたが、足を挫いたのか足が思うように動きません。何度も立ち上がろうと試みますが、その行動虚しく足は言うことを聞いてくれないみたいです




「まあ、出発してすぐだったし、見つかるよね。彼もああ言ってたし」




しかし、彼女の願いが叶うことはありませんでした。いつの間にか闇に包まれ、真っ暗で何も見えず、耳が冴え遠くの音が聞こえそうです。ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛という獣の唸り声やザワザワと木々が擦れている音、そして、闇夜にあるいくつかの赤黒い光。彼女は休まる暇がありません。



「ううう。見つけてくれるって言ったのに、嘘じゃん。それになんか視線感じるし、早く助けてよ‼」



彼女が大声を出した直後、ガサガサッと音が聞こえてきました



「な、何?」



目を凝らすとしても、そこにはすでに何もいなく、吸い込まれそうな闇しかありませんでした。不思議なことに足音も鳥が羽ばたく音も聞こえず、その正体が何なのかわかりません。大きい声を出したら、また同じ起きるのではという思考は彼女にはないようです



「な、何なのよ、もう。誰か助けて~‼」



しかし、彼女の声が誰かに届くことはなかったのです。そして、時だけが虚しく進んでいきます。ただ、彼女の持ってきた食料のおかげでなんとか持ちこたえています。それでも、持ってきた食料も残りわずかになってしまっていました



「はあ、何日経ったの。このままじゃ私死んじゃう。誰かに助けてもらうことを考えてちゃだめだ。自分でなんとかしなくちゃ。」



幸か不幸か彼女の足は自然治癒で、なんとか歩けるまでに回復していました。彼女は必死に崖を登ります。よいしょ、よいしょと



「あ、あともう少し‼」



彼女はやっとの思いで手をヘリに駆けることができました



「はあ、はあ。やった、私、やった」




彼女は崖を乗り越えることができたのです。ただ、助かったのも束の間、また足が動かなくなってしまいました。そこに見えた微かな光、目の前に人影があったのです。彼女は頭に浮かんだ人の名前が出ていました



「彼君、ねえ彼君なの?助けて。足が動かないの‼」



彼女の言葉が届いたのかその人影はこっちに寄ってきます。そして、衝撃な言葉と行動が



「誰だよ、お前。そんなみずぼらしいやつ知らねえよ」



そう言われた直後、その人影に肩をトンと押されてしまいました。後ろに落ちていく途中手を伸ばしますが、何かを掴むことは叶いません




「へ?」





結果を言うますと、彼女は病院のベッドで目を覚ましたのです。そして、そこにはサークルのメンバーも。みんな安堵の表情を浮かべ、ある者は泣き、ある者はベッドに突っ伏しています。それにしても、白々しいですよね。人のことをみすぼらしい姿をしていたからと突き落としておいて。まあ、そこで目にした彼女の姿が本当に化け物じみて怖かったのかもしれませんが。それでもですよ。彼女もほら顔をゆがませていますよ




「私のこと突き落としておいて、何よ。嬉しくもない癖に‼」



彼女は彼に向かって叫びました。ただ、彼から返ってきた言葉は彼女の予想を大いに外れたものでした



「何言ってんだよ。見つけたのは俺だけど、お前のこと突き落としてねぇよ‼」



「え!?」



そのあと、彼女は俯いて何も言いませんでした。ただ、私は彼女の言いたいことは安易に想像できました




“じゃあ、誰が突き落としたの?”と




この中で”隠れん坊”は誰なんですかね。それとも、この中にはいない誰かなのか、それは”隠れん坊”にしかわかりません。勘違いが起こした事故なのか、はたまた計画的なものなのか。彼女はどんな未来を選択するんですかね。鬼となって隠れん坊を探すのか、隠れん坊を野放しにするのか。あなたは誰だと思いますか?そして彼女の立場だったらあなたはどんな選択をしますか?まあ、犯人が誰だとしても、どんな選択をしても待っているものは・・・ね


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