だから一番嫌いな世界に友達を作ろうとした
小さな彼は吹雪く暗闇の先をジッと見つめました。スノーホワイトはしばらく黙ったまま、彼の記憶の中で行われている親子の再会に立ち合いました。
叩き続ける強い風もときどき止む瞬間があります。身体のなかの芯や身体そのものの傾きが戻るとマイナス12℃の風の残響音は、近場から遠くの闇の中へ消えていきます。
再び強い風が吹き始めると小さな彼はスノーホワイトを見て、少し恥ずかしそうに頷きました。
わたしね、きっとどこかの女の子が心の中で想像したから生まれたんじゃないのかなって思っているの!!
どうしてそう思うの!!
わたしがその子のことを感じるから!!
それってどんな感じなの!!
確かに確証などはありませんでしたが、一方では疑念の余地も今ではなくなっている電気のような「直感」を言語化するのは初めてでした……
あなたと出会うまで一人だったけれど、寂しくなんかなかったのね。どうして寂しくないのかよく分からなかったし、考えもしなかったんだけれど、あなたとこうしてお話しているととても楽しい。だって直ぐそこに愉快なあなたがいるから。だとしたら今まで一人でいるときに寂しくなかったのは、なんて言うか誰かがすぐ近くに、っていうかわたしの中に誰かがいるから寂しくなかったのかなって、考えてみたの。そうしたらなんだかそうとしか思えなくなっちゃったわけ!!
その子に会いたい!?
きっともう会っているのよ!! 昨日も今日も明日も、たぶん今も。
お前こそ本当にそう思うのか?
ええ。本当にそう思うわ。
どんな子かな!!
たぶんね、特に冬が嫌いな女の子よ。だから一番嫌いな世界に友達を作ろうとしたの。だって春になっても夏になっても本当の友達がいない女の子だから……
でも本当の友達なんだろ!!
きっとあなたもその子と本当のお友達よ!!
お前もぼくも見たことのない、ぼくたちの本当の友達がどこかにいるんだね!!
月は朝が好き。
君が自分で気にしている所もあの子は案外好きでいるように。
でも君は常に自分の答えを持っていて何かを査定する。月は夜が好きなんだと……
「本当は、わたし春になったら溶けちゃうんだ」今夜のスノーホワイトは、一番大切な本当の秘密を口にすることはありませんでした。