太陽らしからぬ一日のリズム
寒い夜になると二人は少しの距離を取りおしゃべりをしました。
君はどこから来たの?
お前はどうしてここにいるの?
何処へ行くつもりなの?
いつからここにいるの?
ずいぶんと遠そうね?
ずっとここにいるのか?
そこには何があるの?
ずっとずっとここにいるのか?
君のことを誰かが待っているのね。
春になっても夏になっても、お前はずっとずっといつまでもきれいなんだろ?
当たり前じゃない。
いつかぼくが立派な大人になったら迎えにきてやってもいいぞ。
えっ、ここに突っ立ったまま、永遠よりも永い時間があるってことを証明しろってか?
それから、というもの小さな彼はいつもの空の隅で朝と晩をひっくり返し、毎日毎日夜を待ちわびるようになりました。
朝陽が昇ると夢の入り口へ立ち、夕日が沈むころ殆どを覚えてはいない夢の出口から出てきて今日を始めました。気温がグングン下がるまでグダグダして、そのうちスノーホワイトに会いに行く。そして朝まで(ある程度の距離を置いて)傍にいる。自分が旅の途中であることなど気にせず、留まる楽しさに溺れていました。ただ、小さな彼は昼夜を逆転して太陽らしからぬ一日のリズムを作ったが為に、たとえば瓢箪から駒が出たこともありました。
いつかはぼくも本当に月の気持ちが分かるようになれるのかもしれない、と思えたのです。
立派な太陽になるためには必要なことだったので、これまで正直に言えば大きな不安の一つでした。満ちたり欠けたりをしながら一晩中誰かに秘密を告白される岩塊の気持ちなど、一体「月」以外の誰に理解できるというのだ? でも小さな彼は長い夜の時間を過ごすことで少しだけ自信を持ったことでしょう。