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第94話 ヤンデレムーブガチすぎない?

「「お待ちしてました。どうぞごゆるりとおくつろぎください」」


「......」


 そこにはメイド服を着た姫島と雪の姿があった。


――――遡ること十数分前


 俺は学校入ってからの土日でぐうたらいふを満喫していた。

 こういう土曜日ってぶっちゃけやることないし、ラブコメ支配人として動こうにもあまりにも急すぎる。


 さすがに相手の予定を完璧に把握しているわけじゃないので“まぁ土日ぐらいは自力でラブコメしてこいや”というスタンスと建前で己の心を癒しているのだ。


 やはり癒しとは願うものではなく、ましてや求めるものでもない。

 結局自分のことは自分が一番分かってるわけで、何が癒しになるのかも当然分かり、絶賛モンスターバスター略して“モンバス”をソファでゴロゴロしながらやっている。


 家には妹もいないし、両親もいない。

 まさに俺を癒すためだけの整えられたその環境で俺がぐうたらしないはずもなく、ひたすらに自分の好きなように時間を潰していた。


 そんな時、スマホに一通のメールが届いた。

 画面を見てそのレイソの相手が姫島だったのでとりあえずスルーしてゲームを続けた。

 内容は「少し相談があるのだけど」とあったが、まぁ今じゃなくて良くね?ってことで。


 少しして二通目が届く。


『反応してくれたっていいじゃない』


 まぁ、反応しなかった俺に対する文句を送ることで「もしかして本当に気づいてないかも?」という可能性と「スルーしたな?」という可能性の二つの意味合いを持ったであろう文章が送られてきた。


 前者であれば単に通知音で知らせれるし、後者であれば相手にちょっと申し訳なさを感じさせて気を引くこともできるだろう。


 だが、相手は俺である。そして姫島の性格を知っている以上、ぶっちゃけ無視しても問題なし。ってことで引き続きスルーするとまた少しして通知が来る。


『知ってるわよ。面倒であえてスルーしてることぐらい』


「......めんどくさっ」


 思わず声に出してしまったがこれはアイツが本当にめんどくさい女というよりはめんどくさいムーブをしてると感じた。


 あいつは変態ではあるが......大変態ではあるが常識は持ち合わせて空気も読める奴ではある。

 大抵暴走するのは相手に俺か雪ぐらいがいる時くらいで普通にしていれば純粋に良い奴だ。

 まぁ、これでも大分フィルターかけてるのだが。


 すると少しだけ間を開けて四通目が来た。


『いいわよーだ。どうせ私なんて遊ぶだけ遊ばれて捨てられる存在なのよ。でも、どうせ捨てるならヤリ捨てぐらいしてってよ』


「内容がひでぇ」


 前言撤回......ではないが、やはりこいつは俺相手だと露骨にふざけやがる。

 今絶対遊んでる。暇すぎてかまちょアピールしてるなら本格的に無視するぞ?

 

 五通目が来た。


『ねぇ、もしかしてこれだけ送って気づかないってわけないわよね? 本当は気づいてるんでしょ?

 もしかして気づいていても反応が出来ないくらい何かしてるってこと?』


「なんか急に雲行きが怪しくなってきたんだけど」


 めんどくさい女からある意味もっとめんどくさい女になりかけてるよコイツ。

 ヤンデレムーブやりはじめてるよ。なんか怖いよ。やめてよ。


 とはいえ、途中からコイツの通知が気になり始めている俺がいる。

 これが姫島のやり口だとすれば完全に嵌ってしまったと言えるだろう。

 しかし、このヤンデレムーブの行きつく先が気になる。


 六通目が来た。


『ねぇ、気づいてるんでしょ? もし作業しているなら何やってるか教えて? 謝るからさ? ね? ね?』


「お、一回方向性を修正したのか?」


 このままヤンデレムーブを続けるかと思いきやまるでつい圧をかけてしまったことを謝るような文章。


 正直期待外れ......いや、ヤンデレが好きとかじゃないけど......ほら? ヲタクってその属性嫌いにもなれないじゃん?


 だから正直このままヤンデレムーブを続けてくれればなーってのが願望なわけで。

 とりあえず、sw〇tchの電源切って通知に集中しよう。


 七通目が来た。


『既読が全然つかない......わかった、ごめんね? もううるさくしないからこれで最後にするから』


 そう文章が来たかと思うと同時に動画も一緒に送られてきた。

 動画? 一体どういった動画なのだろうか。ずっと通知だけで文章見てたからわからんわ。


 こればっかりは実際に姫島との会話画面にいかないと見れないので、仕方なく画面ロックパスワードを入れていく。


 まぁ、姫島も最後と言っていたし、この動画を見たらさすがに電話でもかけて謝るか――――


――――動画再生


『............ほら、いる』


「っ!?」


 数秒間無言の後に言われたたった四文字のその言葉は俺を体の芯から震えさせるには十分な威力を持っていた。


 周囲の環境音すら何も聞こえず、全くの無言の中でまるでこっちの行動を全て把握しているかのようなそれは一気に体温を下げていく。


 八通目が来た。


『既読ついた。やっぱりいるじゃない』


「やばっ、怖い怖い怖い。なんか急に怖いんだけど!?」


 九通目、十通目、十一通目


『ねぇ、なんで反応してくれないの?』

『さっきからこんなにもアピールしてるのに?』

『なんで? ねぇ? なんでなんでなんで? ねぇ? ねぇねぇねぇねぇねぇ!』


「落ち着けストーップ! もういい! もういいから! やめて! ガチで怖い奴やめて!」


 え、待って待って待って。これってガチ? え、ヤンデレムーブだよね? そうだよね? そうだと言って!


 落ち着け、俺。落ち着くんだ。冷静になれ。ここは普通に電話してやればいいだけだ。

 妙にもう後ろから刺しに来そうな勢いな文章だったけど電話すれば大丈夫! そうなはず!


 俺はこの流れはもう不味いと感じすぐに電話を掛けた。

 俺のせっかくの土日がヤンデレに侵食されてしまう。

 このままじゃ癒しどころの話ではなくなってしまう。


――――プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル、現在電話に出ることが――――


「電話に出ねええええええぇぇぇぇ!」


 それはそれでイラッとするが、妙なソワソワする感覚からあまりそういうことも考えてられずツーコール目。しかし、やはりでない。


『.......もしかして女でもいるの?』


「え、そっちで反応しないといけないの?」


 姫島からのレイソ。明らかに流れは続いているが正直安心した。

 というのも、このまま姫島がガチってたら絶対こういう流れにならず電話に出るはず。


 それでもあえてレイソでやってきたということはあくまでヤンデレムーブってことだ。はぁ、焦ったぁ(安堵全開)。


 しかし、安心したとなると意外にしてやってくれたことに笑いとイラ立ちが同時に込み上がってくる。


 俺のやったらやり返せ精神というのが、このまま姫島にそれもせっかくの休日を潰されていいのかという気持ちがそうさせる。


「さて、何してけちょんけちょんにしてやろうか......ん?」


 そう思った矢先に動画が再び。

 少しだけビクビクしながら再生してみると「招待状を送ったから」とだけ送られてきた。


 招待状? と思いながら何気なくふと玄関に向かってみるとドアを出てすぐ近くのポストに何か入っている。

 それを確かめてみれは茶色い封筒で後ろには姫島の名前が。え、なんか怖い。


『花市さんから影山君からの面白い情報をいただいたわ。

 バラされたくなかったら雪ちゃんの家まで来ることね』


 ただの脅迫文章だった。作り込みがガチすぎて怖い。いや、これも一種でマジもんだろ。


――――ということで、雪の家を訪ねてみれば冒頭に戻る。


「......帰っていい?」


「「ダメです」」


 ですよね。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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