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第57話 ここまでのこいつらの態度に対する仕返しが一気に来た気がする

「それでは裏勉強会を始めたいと思います!」


「「いえーーーーい!」」


「......」


 俺の目の前には三人の女子がいる。

 当然例の三人である姫島、雪、生野である。

 もっとも生野の存在は謎だが。


 それよりも問題はこの状況だ。

 土曜の休日、テストも近いが俺にとっては絶好のゲーム日和だ。

 そんな日にこいつらが俺の家を訪ねてきやがった。


 そのまま帰すことも出来たがさすがにもう結構暑い外で再び歩かせるのも何なので、少し家で休憩してもらって帰ってもらおうかと思ったらこの状況だ。


 確かに、つい最近放課後に光輝達に誘われて近くのファストフード店で勉強会を行った。


 その時のバレてないと思ってやってるラブコメは大変ごちそうさまだったが......なぜまたしても? しかも俺の家で。


「さて、勉強......と行きたいところだけど、ふむここが影山君の部屋なのね」


「なんだよ」


エロ本(お宝)漁り、もとい探しをしなきゃ始まらないわよね」


「いや、普通に始まれよ。探すな。漁るな」


 姫島が若干興奮した様子で俺の戸棚を見始めた。

 そこにあるのは漫画か全年齢版同人誌かフィギュアしかないから。

 そんな姫島に同調するように妄想力を無限大にしていく雪。


「べ、勉強......まさか保健体育!?

男の子の家で女子三人......あわわわ、これから淫らなことが始まっちゃう!」


「雪ちゃん、落ち着いて。始まるのそっちじゃない」


 そっちは生野が対応してくれた。適切なツッコミだ。こやつ、やるな?


 脳内にピンクモザイクがかかり始めた雪はサッと立ち上がると姫島の方へと向いた。

 その行動に俺も思わず感心する。

 お、さすがに他人の家で漁りは良くないとでも言ってくれるのか?

 まぁ、脳内ピンクでもいい子だからな――――


「って、お前もそっち側かーい!」「って雪ちゃんもそっち側かーい!」


 ちょっとちょっと? なんで姫島と一緒に本棚漁り始めてるの?

 何? 前に俺がR同人誌持ってるってのを覚えててもしかして読みたがってる? 読ませねぇよ?


 まあ、あいつらが探してる限り大人しいから無視しておくか。

 どっちにしろ見えてるそこにはねぇし。


 そんな変態どもを無視して大人しく座っている生野に声をかける。


「で、生野はどうしてここに? いくら接点を持っていようとここに来る理由はないだろ」


「それはまぁ、そうだったんだけどね。

 ほら、どうせ知ってると思うし言うけど、あたしって成績良くないからこのままじゃ夏休み補習確定なんだよね」


「それを避けるためのあの勉強会だったんだろ?」


 光輝主催の勉強会は生野の夏休み補習を避けるためを目的としたいわば生野のための勉強会だ。


 それは生野がヒロインとして光輝達に認識されてる証なので非常に嬉しいのだが......まさかあれでも足りないと?


 いや、成績から見れば勉強会を一回ぐらい開催した所で本当に回避できるかどうかは別。

 でも、それだったらそれを口実に光輝と勉強会を重ねればいいのに。


「そうなんだけど......なんか陽神君が近くにいると緊張しちゃってなんか上手く捗らなくて。

 それだったら同志の方が気が楽かなって」


「ヘタレめ」


「う、うっさいし!」


 そんなすごんで抗議してきたって実際そうなんだから言い逃れは出来ないだろ。

 まあでも、コイツに限ってはもう心配する必要はないな。

 第3ヒロインと言ってもいいだろ。


 そんなことを思っているとふと視線を感じた。

 その方向を見てみれば姫島がこっちを向いている。

 ん? なんだ? あの訝しむ目は。

 俺.....というより、生野か?


 思わず気になって姫島の目を見続けていたら気づかれて恥ずかしそうに投げキッスされた。

 なんで俺が求めてると思ったんだよ。


「つーか、あんた達。いくら男子の家だからっていつまで漁ってんのよ」


「え、男子の家に来たらエロ本(お宝)を探すって相場が決まってないかしら?」


「そんな相場は朽ちてしまえ」


「私は、その、えーっと、あの......読みたいからです!」


「雪ちゃん、それはあまりにもストレートすぎるでしょ」


「言われたこっちが逆に言葉出てこねぇよ」


 変態とむっつりが色々探してる。

 本棚を入念に調べてる辺りから俺のエロ本が本の後ろに隠されて置いてあるとでも思ったのだろう。

 そこまで入念に調べられるとさすがにちょっと心配.....でもまあ大丈夫だろ。たぶん。


「おかしいわね......男の子の家なのに何もないなんて......大丈夫? 色々」


「心配ですよ。学生は大抵エゴと煩悩まみれって聞きますし」


「え、なんで俺哀れられてんの?」


「つーか、それって男子に対してあたしらが心配することじゃないでしょ」


 余計なお世話がここまで過ぎるのは初めてだ。

 お前ら世の中にあるエロ同人誌がリアルでもほとんどだと思ってんじゃないだろうな?


「いいえ、影山君のことだからないはずがないわ。

 きっと好きなキャラの同人誌は集めてるはず。

 それがたとえR指定であっても」


「ですです。影山さんは好きなものには一途ですから。

 きっとそこら辺をバレないように隠して持ってると思うのです」


「ねぇ、ちょっとあいつら殴っていい?」


「グーはやめなさい。パー.......でもダメ。しっぺ辺りにして」


 こいつらは一体どこまで俺のプライバシーを侵害すれば気が済むのか。

 クソ、あの時帰してればよかった。

 俺に選択肢が見えれば間違いなくバッドエンドルート選んでやるのに......!


「あんたも厄介な連中に好かれたわね。

 正直、学校での印象が違い過ぎて引いてるわ」


「見たか、生野。これ......素なんだぜ?」


「なんでタ〇チ風に言ったのかわからないけど、素がこれって......まあ、人がキャラを演じていたらストレスを感じるわけで、発散したいときもあるのかもね」


「お前は同情する側に行くな。お前は正常だ。正常なビッチでツッコミ役だ」


「今、さらっと悪口言ったような気がするけど、同じよしみとして目を瞑ってあげる。それで......どうすんの?」


 どうすんのって聞かれてもなぁ~。

 正直、こいつらがまともな思考回路に戻るのは諦めるか満足するかのどっちかだが......満足するに行ったら確実に俺の精神がバッドエンドを迎える。


 となれば、あいつらが勝負に乗った所で任してやればいい。

 そう、それだけ。こいつらには見つかりはしない。絶対に!(←フラグ)

 俺は立ち上がると姫島と雪の方に向いて提案をした。


「お前らがそこまでやるだったら勝負と行こう」


「勝負?」


「簡単な勝負だ。お前らは俺が隠してる場所を当てればいい。

 だが、長く時間を使っても面白くない。

 そこでお前らが質問できる回数は三回とする。

 それに対し、俺は答える。

 だが、その内容は『はい』か『いいえ』で答えられるやつだ。いいな?」


「ええ、わかったわ」


「わかりました」


 二人は納得するように頷くと雪が早速質問を始めた。


「まずこの部屋にありますか?」


 なるほど、単にR同人誌があるかどうか聞いたら別にこの部屋以外のどこかに隠してる可能性が生まれる。

 それを阻止したわけか。上手い質問だな。


「はい」


「なら、次。それは見えてる場所にはなくて、でもすぐ近くにある?」


 ん? なんだこの質問? もしかして? いやいやまさか。


「恐らく、はいだな」


「それじゃあ、最後――――」


「おいおい、もう質問するのか? もう少し考えてもいいんじゃないか?」


「いえ、その必要はありません。それでは最後に――――本がせり出ているのワザとですか?」


 .......え?


「......はい」


 そう答えると姫島と雪は「やっぱりだったね」と互いの顔を見て喜び合う。

 俺はその質問に衝撃が隠せず、すぐに答えを求めた。


「......で、それで、結局どこにあるってんだ?」


「まあまあ、落ち着きなさい。

 まず私達は質問をする前にある程度絞っていたのよ。

 この部屋にあるのはその確認のためで、あると分かれば後は影山君の性格を元に推理すればいいわけ」


「俺の性格をもとに?」


「はい。影山君は用心深い人ですから、まず人目につきやすい場所のベッドの下、本棚の本の裏、引き出しの二重底といったテンプレな場所には隠さないと思いました。

 ですが、隠すにはそう言った目を欺く場所に置くのは必須になります」


 ......マジで?


「それで本棚を最初に探っていた時に思ったんですが、この本棚......妙なんです」


「妙って特に普通の本棚にしか見えないけど」


 ちょ、生野! 何お前までこの展開に興味持ってんの!?


「この本棚ね、一見本がびっしり埋まってるように見えるけど、近くで見ると本棚の奥行に対して内側の壁があまりにも近いのよ。

 この本棚の奥行であれば本を奥と手前で二冊入れられるはずなのに、それが出来ない。」


 ダラダラと汗が止まらない。言い返す言葉もない。

 チェックメイト......見事なフラグ回収だ。


「で、あれば隠してあるのはこの本棚の()()()奥行にある空間。

 内側の壁が近いのは私達に本の裏に隠せないと思わせるため。でも、実際は仕切りがある。

 いわば机の引き出しの二重底の本棚バージョンと行った所かしら。

 答え合わせはこれでいい?」


 膝から崩れ落ちる。完敗だ。

 脳内が変態とモザイクで腐っていてもこいつら成績は上位陣。

 頭は十分に回る方だった。完全にいつも素のせいで侮っていた!

 だけど、だからと言って秒殺て!


「それじゃ、答え合わせ~~~~~」


「あ、ちょ、あああああああ!」


 その後、俺の本棚の奥の方に隠していたR同人誌が一斉に公の場に姿を現し、悶絶する俺を他所にあいつらは俺を弄るように地味に読み漁っていきやがった。


 そして、弄るだけ弄ると満足したように帰っていった。

 ちなみに、一ミリも勉強してない。強いてやったのは保健体育。

 ふ、不幸だ~~~~~~!

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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