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第52話 親密度上げるイベントじゃないよな?

 なんだか面倒事が増えたかもしれない。

 最初に思ったのはそんな感想だ。


「なになに~? もしかして同志も練習?」


「......まぁそんなところだ」


 生野はイタズラっぽい笑みを浮かべてそう聞いてきた。

 あの感じ若干面白がっているな?

 にしても、ギャルの生野がおとなしい雪と一緒にいるとはな......。


「お前らが同じクラスってことは知ってたけど、随分と仲良くなったんだな。

 正直、まるで接点なさそうだが」


「接点ならあるじゃん。同志の件で。

 で、それ以来試しに話しかけに行ったらもうチョー可愛くて!

 それにすっごく()()()だから、少しエッチなワード出すと顔赤くするのよ」


 違います。雪はピュアではありません。

 ただ口には出さないだけで、妄想が酷いのです。

 顔を赤らめたのは恐らくモザイク入る妄想で興奮しただけです。

 単純な変態度サーチでは姫島より上です。


 にしてもまぁ、雪もムギューしてくる生野に対して特に嫌な顔していないし、仲良くなった意味ってのはあながち間違ってなさそうだな。


 これで雪の社交性もまた少し前進したということか......まだまともに話せる男は俺だけだけどね!


 そんなことを思いながら俺が生野と雪をボーっと眺めていると生野が何やらニヤニヤした顔で告げてくる。


「なになに~? もしかして私達のボディに見惚れちゃった?

 まぁ、同じよしみとして見るだけ1分500円にしてあげる」


「金とんのかよ」


「で、感想は?」


 そう聞いてきたので、俺は改めて生野の容姿を見た。

 相変わらず均整の取れた完璧なスタイルと言うべきか。

 姫島とはまた違うベクトルで凄いな。

 恰好はスクミズだが、普通にグラビア写真集にあってもおかしくなさそうだ。


 顔も黄金律で完璧、スタイルもモデル並み、まさに非の打ち所がない容姿。まさに天性のものだな。

 天は二物を与えないという言葉があるが、あいつは完全に甘やかされたタイプだ。

 まあ、後は頭だが......そこはいざとなればどうにでもなる。


「そうだな。クッソエロい」


「エロっ!? ちょ、何どストレートでそんな言ってるわけ?

 っていうか、言うだったらもうちっと恥じろや!」


「自分の感想を言っただけなのにどこに恥ずかしがる要素があると?」


「ダメよ、この人羞恥心ぶっ壊れてるの」


 失敬な。俺は至って正常だ。

 正常にありのままのエロさを受け止めている。

 恥ずかしがって目を逸らすぐらいなら男としての性分を尽くす!


「な、なんか眼光鋭くなってるんだけど......」


 そう言って生野はモジモジとした様子になり始めた。

 自分から感想聞くような真似させといて、いざ相手に強きに出られるとチョロインになる......うん、さすが第3ヒロイン候補だな!


 そんな俺の様子に近くの姫島が「あなたって誰にでもああなのね」とどこか冷めたような目で見ていて、ふと目が合った雪は生野と同じように体をくねらせる。


 いや、ごめん雪。お前だけは見ると異様な背徳感しか湧かないんだ!

 そして、俺はその背徳感で興奮を感じるタイプではないのだ!


「に、にしても、同志にしちゃ随分と羨ましい光景じゃない?」


「何が?」


「何がって.......ほんとに気づいてないの?

 ほら、今この場にいる男子は同志一人で他三人は学校で噂されるほどの美少女」


「ふむ、確かに.......」


 言われてみれば、この状況は世の男子からすればかなり羨ましい光景に移るかもしれない。

 しかし、しかし俺にとっては違うんだよな~。


 俺がラブコメしてどうするって話になるから、せめて俺がいるとしてもこの場にはあと光輝、乾さん、結弦が欲しかった。


 そうすれば、完璧な「プール回」になったはず。

 もはや誰にも咎められない光輝のためのラブコメになったはず。


 そう考えるとこれは偶然の産物か運命のイタズラか。

 もし後者だったら一度ラブコメの神に説教してやりたいわ。

 とはいえ......


「まぁ、俺も人並みの優越感は感じるかもな」


「さすがに男子だもんね~」


「プールにスクミズ、美少女三人、男子一人、あわ、あわわわ! これってもはや3ピ――――」


「いや、ならんから。妄想飛躍しすぎだ。プール入って頭冷やせ」


 雪のバグり方に生野が「この子、たまにこうなるけど大丈夫?」と聞いてくるが、悲しきかなそれが正常なのだ。


「そんなことよりも、お前らは目的があってここに来たんじゃないのか?」


「あ、そうそう。練習しに来たんだ」


 練習? もしかして俺達みたいに泳げない奴がいるのか?

 となると、まあ恐らく生野は泳げるだろうし、泳げないのは雪か。


 生野も意外に面倒見が良いんだな。

 そういうとこなぜ光輝の前で見せてやらんのか。


 そして、生野と雪がプールに入っていく。

 雪が入った瞬間若干プールから湯気出たような気がしたのは気のせいか。


 雪は足が下につかないのか泳ぎながら移動し、生野の正面に立つと雪が生野の手を取って、生野が顔をつけながらバタ足―――って泳げないの生野(お前)かーーーーーい。


 完全に見た目に騙されたわ。

 いや、あいつ運動神経良い方だって聞いたし、中学の時もリレーでアンカー任されるほどと聞いたから泳ぎもいけるかと思えば......まさかあいつも泳げないとは。


 となると、あいつも再試験の練習に来たクチか。

 っていうか、足ついてない雪はどうやって生野をリードしてるの? え、立ち泳ぎとか?


 生野が一旦泳ぎが止まったタイミングで二人に話しかけてみる。


「練習って生野(お前)の方だったのかよ」


「そ、そうよ。なんか悪い!?」


「安心しなさい。影山君もあなたと同じだから」


「え、嘘っ!」


 そう言って驚いた表情で俺を見てくる。

 すると、段々頬を膨らませて破裂させるように笑い声を吹き出させた。


「やっぱ同志、気が合うわね~! 男版のあたしじゃん!」


「お、おう......」


 なんだろう......若干反応に困る。

 てっきりバカにされると思ってたから。

 いや、こいつのこの気さくさが案外周りに敵を作りにくい要因なのかもな。

 それでいてあの美ボディで童貞を落とすと......なるほど魔女だな。


 肩を叩いてきて若干ウゼェ。

 だが、それが世の拗らせ男子からは「ボディタッチ多い=え、俺のこと好きなんちゃう?」と思わせてる原因なんだろうな。


 生野に叩かれないように距離を取りつつ、他の二人の様子を見てみると不毛な張り合いをしていた。


「影山さんと合法的に手を握れるなんてずるいです!」


「ふふっ、それは違うクラスの運命を恨みなさい」


「で、でも、私は頭撫でられたことありますから!」


「なっ! 私は馬乗りになったことあるわよ!」


「壁ドンされました!」


「さ、さっきだって胸、む、胸をおおおおおお......ね!」


 「ね!」じゃねぇよ。こっち見んな。

 後、雪は何で若干負けそうで涙目になってんだ。

 正直、聞いてる俺はすっごく頭が痛いんだからな?


 それにお前らの会話のせいで生野から完全に性犯罪者みたいな目で見られてるし。

 「全部不可抗力だから」と言いたいが、俺「不可抗力」って言葉使いたくないの!

 だって、ラブコメの主人公みたいだから!


 しかし、それで話がまとまる二人ではない。

 っていうか、この二人のケンカ? みたいなのは初めてだよな?

 この場合はケンカするほど仲が良いという感じで捉えていいだろう。

 だって、張り合ってる内容すっごいバカだし。


「それじゃあ、ここはせっかくだから水泳で勝負しましょうか。

 どちらが先にこの50メートルプールを補助なしで泳ぎ切れるかを!」


「「え?」」


「わかりました! 受けて立ちます!」


「「ちょ、ちょっと!?」」


 なぜか俺と生野の練習を互いの不毛な意地の張り合いのために使われようとしている。

 いやまあ、泳げる練習してくれるのはありがたいけどさ?


 されど、俺達が説得しようともすでに二人はやる気モード。

 それから俺達はめちゃくちゃ泳ぎの練習させられた。スパルタもスパルタだった。


 そして、その練習成果を示す結果は――――俺と生野も25メートルあたりで水死体になりかけたのであった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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