第218話 寄り添う乙女の聖なる夜#1
―――姫島縁 視点―――
早いもので季節はもう秋が終わり冬に突入しようとしている。
影山君の気持ちが通じてからもうすぐで1年になるってわけ。
これを考えて早いのやら短いのやら。
ただ終始いい思い出であったことはたしかね。どれもこれも嬉しかったり楽しかったり。
高校生活においての青春という言葉においてはこれほどまでに充実した2年間は早々に無かったんじゃないかしら。
もっとも望むべき未来の姿は影山君とお付き合いしてそこから彼氏彼女として過ごす高校生活であったけど。
告白で想いが通じ合い、初めてのデートで互いに緊張して、ちょっと汗ばんだ互いの手が絡み合い、少し気取ってキスなんか交わしちゃったりしてその後は......ぐふふ、おっとこれ以上ははしたないわよ、私。
とまぁ、理想論を今更語るならこうであったわけで。
だけど、今思っても私一人の力で影山君の心の扉を開けられたかと思うとハッキリと断言できないのよね。
押しても引いても開かない扉。開け方が間違ってるのか単純に動かすだけの力が足りないのか。
それすら知らない状態でした告白はあえなく玉砕。
だけど、それでも諦めきれなかった私は意地でも彼にしがみついた。
別に告白に回数制限があるわけでもないしね。それに全く私に眼中にないって態度も腹が立った。ま、その当時はだけど。
そして、彼のラブコメ計画を手伝っていくうちに次から次へと増えていくヒロイン達。最初の雪ちゃんの登場で「ん?」ってなったけれど、生野さんが出てきた時点で察したわよね。
あ、これ影山君のラブコメじゃんって。本人は気づいてなさそうだったけど。
それから出てくるわ出てくるわ後輩&妹系ヒロインに男装女子ヒロイン。
花市さんが来た時はだいぶ心があばばばばってなってたけど違くて良かったわ。
とはいえ、幼馴染特権の距離の近さにはムッとするけど。
けれど、彼女達の登場がなければ影山君の心が決して開くことはなかった。
彼の心の扉は間違いなく私達五人が協力して開けたもの。
その嬉しさにはヒロイン同士で通じるものがあったわ。
でも、これで協力関係は終わり。
彼女達は言わば、とあるダンジョンをクリアする上で一時的に組んだライバルのような存在なのだから。
それこそ抜け駆けありのお宝争奪戦。
それはもう目を見張るものがあったわ。
昴ちゃんも雪ちゃんも莉乃ちゃんも沙由良ちゃんも皆が皆、影山君に対して猛アピールを仕掛けていった。顔を見ればすぐにわかる。
そして、ここに置いてかれた者が一人。
不味い! これは非常に不味い! 安易にミステリアスキャラとか作ってみるんじゃなかった! 気が付けば周りに誰もいない!
確かに、私は恋する女の子が頑張ってる姿を見るのが大変好きなのだけれども!
それはそれとして! 別にもう傍観者でいいやとかじゃ決してなく!
でも、私はなんとか最後の切符は奪取した。運が良かったとも言えるけど。
ともかく、これから私は影山君にアピールしまくりまくりの日々を過ごすのよ!
私はガタンと立ち上がった。
今は夜でさらに自室なので周りを気にする必要も無し。
この燃え滾る闘志はもはや甲子園を目指す高校球児と変わらないわ!
「とはいえ.......」
スーッともとの場所に着地。
目の前の勉強机に広げられている「影山君を落とすプラン」という題名だけやけにハッキリしているページは白紙もいいところ。
「デートってどういうことすればいいのよぉ......」
ぐでぇと机に伏せていく。もちろん、デートがどういうものかはわかる。男女が街を歩けばそれはもはやデートってことは。
けど、けどね? 私の場合単なるデートってわけにはいかないのよ。
だって、影山君はもう既にヒロイン四人とデートを済ませてるわけでしょ?
すると、どのデートも考えられて魅力的であったわけでしょ?
そこで私が安易に街ブラデートとかしてみなさいよ。幻滅されるに決まってるわ!(※彼女の単なるネガティブ思考です)
それに私は見た目だけ取り繕っただけの心は中学の頃から何も変わってない文学系芋娘だもの!
高校に入ってからは影山君がいた影響で推しを見て気分が舞い上がるヲタクのようになってしまっただけであって、本当の私は色んな知識だけいっちょ前に揃えただけの存在なのよ~!
それにぶっちゃけここまで変わればあの告白で成功すると思ってたもの。
ほら、ヲタクって面食い多そうじゃない? いける自信があったから無駄に性知識ばかり集めてたのに......破綻もいいところよ。
というか、影山君も影山君じゃない? 何私以外の女子と仲良くデートなんか行っちゃってるのよ!
まぁ、影山君がしっかりと一人一人の気持ちを受け止めるために断らなかったのは分かってるし、私もそれを利用しようとしているのだから人の事言えないのだけど。
一見すれば平凡な顔つきをしてるのに親友の話をしてる時の彼は本当に無邪気で嬉しそうにしてたり、そのくせ他の男子からもちやほやされる女子におざなりな態度を取るかと思いきや存外ちゃんと見てくれてるとかいうツンデレムーブしてたり、私達にマウント取られないように必死に表情固めてるけど時折堪えきれずに赤面してたりとかもう好き!
うん、やっぱりなんだかんだ言おうとしても彼への好きが溢れてしまうわ。
だって、こうして考えてるだけでも自然と口元が緩んでくるもの。
あ、きっとよろしくない顔してるわ。
「さてと、どうしましょうか」
私は起き上がるとなんとなくペンを持ってページの端をトンットンッと一定のリズムで叩いていく。
左手は頬杖をついてぼんやりとページを眺めながら考えた。
やりたいことだけを考えれば今見てるページに埋めきらないほど出てくる。
小さなこと大きなこと、したいことされたいこと。それらが眺めてるだけで勝手に書き足されてる。
だけど、その願いはどれも付き合い始めた後のことなのよね。残念ながら。
彼を落とすということを一つに考えれば全くと言っていいほど出てこない。
それは彼をその程度しか思っていないということではなく、単に私が彼に対してしてあげたいことに納得しないの。
ただでさえ他の子達にハードル上げられてるのに、さらに自分自身でもハードルを上げてる。そりゃ簡単に出てくるわけないわよね。
いっそのことお母さんにお父さんとの馴れ初めとか聞いてみる?
いや、この年になって自分の両親のノロケとか聞かされるのは罰ゲームでしかないわ。
それに私自身が聞くのが嫌だし。
どんずまりか~。出来れば、あの日までに完璧に私に対する印象を上げておきたいんだけど―――
―――ピロン♪
「ん? 誰かしら。もしかして影山く......んではなかったみたいね。結弦ちゃんからだわ」
彼女から来た内容は光輝君に対する告白に関しての相談だった。そんな相談私がしたいぐらい......ん?
そういえば、確か結弦ちゃんって陽神君の幼馴染だったわよね?
で、陽神君と影山君は小学校来の親友で当然その頃から結弦ちゃんとも面識がある。
ということは、ショタ影山君を知ってるって.....コト!?
影山君のショタ......ふ、ふふふっ、おっとこれ以上は拗らせてしまうわ。自重しなさい私。
しかし、これで方針もといまず次にやるべきことは決まったわね。
それ即ち影山君の幼少期を知.....ゲフンゲフン、影山君のことをより知ってそれをデートに活かす。
「待ってなさい! ショタ山君......じゃなかった影山君! ふふっ、ふふふふふ」
読んでくださりありがとうございます(*'▽')




