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第210話 後輩乙女の最強伝説#7

―――陽神沙由良 視点―――


 季節は流れて10月。

 9月の月末試験も無事に終えてここからは文化祭の準備に向けて各学年各クラス躍起になって準備をしています。


 そういう沙由良んも同じように準備をしなければいけないのですが、まだ余裕があるので今はのんびり廊下を歩きながら各クラスの出し物を覗き見。


 とはいえ、これには理由があります。

 沙由良んの沙由良ん流花嫁裁縫拳を使えば作る衣装なんて半日いえ数時間で終わるでしょう。

 しかし、やる気が起きないんですよね......男子の衣装。


 沙由良んは可愛い女の子のエッチな姿が見たいのです。そうでなくても可愛い姿。

 ほら、可愛いって目の保養になるじゃないですか。それです。


 なので、女子の衣装は沙由良んが一人でに終わらせてしまったんですよね~既に。

 残すは男子なんですがこれがまぁやる気が出ない。


 女子の衣装を作ったので他のクラスメイトに男子の服を作って貰ってますが、全くやらないというのもこっちの気が引ける。なので、何着か引き受けたんですけどこの現状。


 もちろん、頑張りましたよ? 着る相手が学兄さんだと仮想して作ろうとも思いました。

 ですが、当然ながら人が着るものなのだから採寸する必要がある。

 そして、その採寸結果を見て学兄さんのと違って現実に引き寄せられる。←今ここ


 くっ、これをどうにかしなければ。どうやったらやる気が浮かぶんでしょう。

 顔を学兄さんだと騙してみますか? いえ、心を騙せても体が騙せない。すぐに違う! と頬をひっぱたくことでしょう。


「はぁ、一体どうすれば......」


「あら、どうしたの?」


 ん? この声は? あ、やはり姫島縁(ちゃんユカ)でしたか。

 片手にボードを持っていて如何にも作業中って感じですね。


「ため息なんて吐いたら幸せが逃げちゃうわよ?」


「なら、その幸せは学兄さんから補給します。学兄さんは幸せ製造機なので」


「いいわね、私も欲しいわ」


「残念ながら先着一名様ですでにこの沙由良んが予約しています」


 明らかな牽制の言葉にちゃんユカは楽しそうに笑っています。

 相変わらずこの人だけ妙に余裕そうなのが気になりますね。


「もしかしてヤりました?」


「え?」


「いや、失礼。沙由良んのおちゃめ機能が出てしまいました」


 本気の顔で「何を?」と聞き返してきているのでその線はないでしょう。

 それに誠実に回答しようとしてくれている学兄さんに対しても失礼な発言でした。沙由良ん猛省。


 しかし、この人はどうしてこんなにも焦りが見えないのでしょう。

 こう見えても人間観察検定準1級の沙由良んなんですが、もしや1級でないとこの人の考え事は読めないのでしょうか?


 沙由良んの悩みをダシに何か聞いてやりましょう。

 そう思ってちゃんユカに「悩み事がありまして」と切り出すと彼女の方から「場所を変えて話しましょう」と提案してきました。


 一応仕事の様子の方を聞いてみたのですが、本人が大丈夫と言っていたので大丈夫でしょう。

 校舎の裏にあるちょっとしたスペースにはベンチがあります。

 そこで二人座って沙由良んは早速悩みの内容を伝えました。


 人によれば小馬鹿にするような質問かもしれません。

 学兄さんもどっちかというとそっちタイプですがすぐに一緒に考えてくれるのでテクニシャンですよね。

 沙由良んの気持ちを下げたと思いきや上げる感じが。沙由良ん特攻です。


 沙由良んが悩みを打ち明けるとちゃんユカは小馬鹿にせず同意的な姿勢でした。

 ふむ、まずは沙由良んに合わせてくれたという感じでしょうか。


「う~ん、まずは沙由良ちゃんがどの程度で作るつもりかが気になるわね」


「どの程度とは?」


「ほら、お化けのコスプレと言ってもコミケのコスプレイヤーみたいに最限度高めってよりはお祭りに合わせた感じでしょう? 違う?」


「いえ、違いませんね」


 ただそれだと女子と男子とでクオリティの差が出てしまうんですよね。

 演劇だったら違ったかもしれませんが。


 その辺りを話すとちゃんユカは「別にいいんじゃない?」と答えました。はて、なぜそう思うのか?


「だって、この学祭に来るのだってきっと華のJKが見たいからだろうし。

 それは一般客であっても男子生徒であっても変わらない。

 なら、可愛い女の子さえ用意しておけば万事解決」


 えげつない偏見を貰ってしまった。しかし、案外そうとも言えなくないのかもしれない。


 結局この学祭の楽しそうな雰囲気に釣られてやってきたという体で女子であれば若い男子生徒からのキラキラという栄養を補給し、男子は若い女子生徒のキャッキャした姿から可愛いという栄養を補給していく。


 ふむ、そう捉えると一見偏見まみれなこの回答は真理を得ているのかもしれない。

 少なくとも沙由良んに学兄さんの執事姿(ついでに兄の姿も)を見るという目的が無ければそうでしたから。


「ここからはあなたのこだわり次第の話になるけど、もし普通に作る分だったら普段なんのサイズの服を着てるか聞いてそのサイズに合わせれば? LサイズだったらLサイズで」


 そうですね。結局、悩みなんて自分の決断に踏ん切りがつかないから他人に後押ししてもらおうという行為ですもんね。やるのは自分。


「はぁ、仕方ありませんね。学兄さんに自分のクラスを紹介する時に男子だけみっともない格好というのは沙由良んが許せませんからね。

 多くの人に見てもらうなら当然高品質で。沙由良んは手を抜かない! これぞ沙由良ん道!」


 ベンチから立ち上がりシャキーン! と決めポーズ。

 沙由良んの体にやる気が充填されました。ついでに性欲も充填されました。


 沙由良んの反応を見てちゃんユカは「悩みが解決して良かったわ」と自分の事のように喜んでいます。

 そんな彼女をジトーと見てしまいます。


「どうしたの?」


「いえ、少し気に食わないものでして」


 ちゃんユカは小首を傾げました。ま、当然の反応でしょう。

 これは沙由良んが勝手に感じてる気持ちですから。

 やる気がチャージされたついでに言ってやりましょう。沙由良んは臆さない!


「ちゃんユカ、どうしてそこまで余裕そうなのですか?

 友達とはいえ恋敵。相手が勝手に抱えてる悩みを放置しておけば自爆するかもしれないじゃないですか」


 そう質問するとちゃんユカはクスッと笑いました。


「なら、あなたはそうするの?」


「いえ、しません!(キッパリ)」


「それが私の答えよ」


 ふむ、ということはちゃんユカも例え恋敵同士でも仲良くしたいということですか。

 いや、そのことはこの際どうでもいいんですよ! どうして焦ってないんですか!?


 沙由良んが改めて質問として切り出そうとするとちゃんユカが先に答えてくれました。


「それに私は余裕があるわけじゃないのよ?

 ただ、私の好きな人達が恋に全力投球する姿が好きなの。見ていて応援したくなるというか。

 恐らくその態度が“余裕そうに見える”という錯覚を生んでしまったんだと思うわ」


「その割には学兄さんに極端にアタック少なくないですか?」


 ちゃんユカはベンチから立ち上がると大きく伸びをしました。そして、その状態で答えてきます。


「私、ミステリアス目指してるから」


「......っ!」


 真剣な目で言われたかと思えばすぐに温和な笑みを浮かべて「冗談よ」と言ってきました。

 ですが、確かにあの一瞬あの言葉のためだけに空気が引き締められたような気がしたんですが......沙由良んの勘は気のせいではないと言っている。


「それじゃ、頑張ってね。後、私達の魅力的な衣装もお楽しみに」


 ちゃんユカは軽く手を振って去っていきました。

 沙由良んはその後ろ姿を見て思わず言葉を漏らします。


「やはり強敵でしたか......」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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