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第199話 陽気乙女の星降る夜#10

―――生野莉乃視点―――


「......」


「......」


 現在、キャンプ場にいるあたしの目の前には学がいた。

 あたしと同じように何も言えない顔でこっちを見てる。あたしもコメントが浮かばない。


 事の経緯は簡単であたしが行くことになっていたキャンプは実はパパの友達と一緒だったらしく、そこでまさかの学のパパと繋がりがあったようなの。


 で、前に学が嵐で止まった時に互いにキャンプに行くっていうのがまさにフラグ。

 “ラブコメにハプニングはつきもの”とはよく言ったものよね。今の状況がまさにって感じで。


 そして、互いの両親が楽しそうに談笑している一方で、あたし達もあたし達で集まった。


「にしても、まさか生野先輩が一緒とは思いませんでした」


「あたしもよ。でもまぁ、全く知らない人と一緒にキャンプって地獄は回避できただけいいかな。

 それにこうして沙夜ちゃんに会えたのも普通に嬉しいし」


 そう言いながら沙夜ちゃんを後ろからハグ。

 ん~、この絶妙なフィット感がいいわ~。家に抱き枕として来ない?


「それは確かに。俺も知らない女子とかいたら気まずいな。まず沙夜を使って偵察させる」


「兄として妹の使い方はそれでいいの?」


「まぁ、兄ちゃだしね~。むしろ、私を使ってでも人と関わろうとする意志を見せてくれただけでも大きな進歩って感じよ」


「己はどの目線で言っとるのだ」


 学はあたしが沙夜ちゃんを抱きしめてることを良いことに拳で頭をグリグリしていく。

 その行動に沙夜ちゃんはキャッキャしながら楽しんでいる。

 仲いいな、この兄妹。まるで生まれたばかりの子犬がじゃれてるみたい。


「でもでも、それだと生野先輩は心配にならないんですか~?」


「ん? どゆこと?」


「妹目線から見ても顔は普通ですけど、兄ちゃはスペックだけは高いんですよね。顔は普通ですけど」


「そこまで顔の評価を連呼しなくていいだろ」


「だから、逆を言えばその顔さえ目を瞑ってしまえばそれこそ案外コロッといく女子なんて多いんではないかと」


「なるほど」


 まぁ、このキャンプでどれだけのスペックの高さを見るかによるけど、大抵何を聞いても何らかの返答は返してくる。少なからず合格ラインの。


 それに学は性格はちょっと難アリだけどそれも自分の欲求を優先させるための行動で、逆に相手に気を遣う行動だけを取ってみれば十分にイケメンな行動は多い。


 となれば、顔は普通でイケメンな行動は相手がたとえ学じゃなくてもあたし的にもアリだと思える。

 ふむ、そう考えると相手があたしで良かったわね!

 もうカンストしている評価が上限を突破するだけよ。


 そんな沙夜ちゃんの言葉に「案外な高評価で反応に困る」と学は告げた。

 なんとなく二人の日頃の関係が見えた気がする。

 やっぱり沙夜ちゃんには逆らえないのね。


「ま、こんな所で話すのもなんですし、遊びに行きましょう!

 実はさっき兄ちゃがここら辺の近くに川があるって言ってましたし」


「そうなの?」


「あぁ、生野一家と会う前に一人でに確認しに行ったが十分に奇麗な川だったし、足首辺りまでの浅い箇所もあった。やっぱりやるなら川遊びだろ」


「兄ちゃ、さすがキャンプの醍醐味わかってるね!」


「いや、キャンプの醍醐味って川遊びじゃないと思うんだけど......まぁいっか! んじゃ、早速行きましょ!」


 というわけで、学の案内で向かった川。そこは大自然に囲まれた中にある底が透けて見えるほどの清らかな川で、太陽の日差しを反射してそこだけ別世界のようにキラキラと輝いていた。


「ひゃっほー!」


「滑って転ぶなよー」


 沙夜ちゃんが靴と靴下を脱ぎ捨てると勢いよく川に飛び込んだ。

 あの子、服はそのままなんだから―――って何急に脱ぎ始めてんの!? あ、水着来てる......。


「妹よ、そこで脱ぐ必要あったのか?」


「兄ちゃ、私を止めるな。そこに川があったら飛び込む。礼儀だろ?」


「なるほど、わからん」


 あたしもわからん。さすが沙由良ちゃんの大親友なだけあって感性があたし達と違う。

 すると、知らんうちに学も水着に着替えていた。ってあんたも着てたんかい!

 にしても、帰宅部とは思えない良い体してるわね。


 そんな二人が川遊びしてる一方で、当然何の用意もしてなかったあたしは羨ましそうに二人を見てるだけ。いいな~、あたしも知ってたら持ってきたのに。


 そんなあたしの視線に気づいたのが学が沙夜ちゃんの名前を突然を呼んで手を二回叩いた。

 その瞬間、ハッと音に気付いた沙夜ちゃんが学を「隊長、わかりました!」と敬礼する。いや、ほんと仲いいな、この兄妹。


 沙夜ちゃんがこっちに来たかと思うとここに来る際に持ってきたバッグからビキニタイプの水着を取り出した。

 白一色でフリルのついた大人っぽいやつ......でも沙夜ちゃんには明らかに大きい。というか、すでにワンピースタイプ着てるし。


「はい、これ」


「ありがと......ん? これ、あたしの?」


「イエス、マイロード!」


「その返答はよくわからないけど......えぇ!?」


 一先ず沙夜ちゃんに学の視線を隠すよう指示をしてその水着を服の上から合わせてみる。

 ぴ、ぴったし......え、なんで? こわぁ。ま、まさか学が?


「言っておくが俺じゃないぞ?」


「なら、誰よ?」


「それは守秘義務で言えない」


 む、何よそれ。でも、そうなると陰ながらあたしの恋路を応援してる人になるけど.....あー把握。はぁ、全く世話焼きなんだから。


「ちょ、今から速攻で着替えるから絶対に見ないでよ! それと服の音も聞くな!」


「了解です、生野先輩! つまり兄ちゃの視覚と聴覚を永遠に奪えということですね!」


「そこまでは言ってないから! あたしが“よし”と言うまででいいから!」


「わっかりました! 一時的に潰れろ、兄ちゃー!」


「ぎゃああああ! 一生潰されたままになる!」


 なんか沙夜ちゃんが学を押し倒してマウントポジション取ったまま手で目と耳を同時に潰しに行ってる。


 なんかとんでもない現場見ちゃったけど今のうち着替えよ。

 ええい! この場で着替える際の羞恥心なんぞ捨てよ!


「おまたせ」


 そして、着替え終わると沙夜ちゃんはあたしの方を見て「おぉ~!」と唸った。

 このあたしが白ビキニを着るとは思わなかったけど、ここが海で見せたかった水着のリベンジと思えば結果オーライよね。


「で、感想は?」


「......大変美しゅうございます」


「よろしい。遊ぶわよ!」


「なら、良いものがあるぜ」


 そう言って学が荷物の方へ行って取り出したのは水鉄砲。

 それも普通に拳銃タイプのものもあれば、大きめなタンクが付いた高い値段の水鉄砲、そして明らかに形式の違うホースの付いた水鉄砲。


「んじゃ、俺はこのホースを使わせてもらおう」


「沙夜ちゃんはどれにする?」


「私は拳銃タイプを二丁拳銃スタイルで行くので、その大きいのを任せます」


「オーケー。んじゃ、準備を始め―――ぶわっ!?」


 あたしがタンクに水を入れようとしたら突然強めの圧の水が顔にかかってきた。

 その方向を見ると学がホースの先端を持って構えている。


「はっはっは! 俺の武器はこの場に水がある限りノンリロードなのだ! くらえ、俺の無限放水を!」


「くっ、兄ちゃの奴! なんて卑怯な攻撃を! 生野先輩、二人で協力してあの巨悪を倒しましょう!」


「えぇ、そうね! いきなり女の子に水ぶっかけてくる男はちゃんと成敗してやらないと!」


 そして、あたし達は学対あたし達という形で水をかけあった。その時の時間をなんと表現したらいいのか。ともかく、短くて長い時間で最高だったわ!

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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