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第188話 相変わらずガツガツ過ぎて心臓が持たねぇ

 とある日、俺は自室で扇風機の風に当たって涼みながらベッドに寝そべりゲームをしていた。

 しかし、ゲームに対する集中力などまるでない。


 ただ何か手を動かしてないとずっとあいつらのことで悶々と考えては、増々頭がこんがらがってしまうような気がしたのだ。


 だから、あえて別の何かに集中して気持ちをリセットしようとしているのだが、それをやっては失敗してを繰り返してるのが今だ。


 すると、突然ノックもなしに俺の部屋のドアが開く。


「学兄さんのセンスティブを堂々覗き見!

 あなただけの妹兼彼女兼未来の花嫁! 陽神沙由良んっです!」


「突然Vtuberみたいな挨拶して部屋に突撃してくんな。それと挨拶が酷いぞ」


 元気よく現れポージングを決めるが無表情の沙由良んはずかずかと俺の部屋を入ってくるとベッドに上がって覆いかぶさってくる。


 え、え!? なんか押し倒されたみたいな構図になってんだけど!? 急に何してんの!?


「学兄さん、“お楽しみ”をしましょう」


「いや、何急に!? どうした? それにお楽しみって―――」


「もちろん、×××です」


「この状態でハッキリ言うな、バカ」


 俺は沙由良んの肩を掴んでどかそうと押し返すが、逆に抱きつかれて全く剥がせなくなってしまった。

 くっ、こいつ、どこにそんなくっつく力があるんだ? 全然離れねぇんだが。


「兄ちゃ、剥がそうとしても無駄だよ。

 その子は一度くっついたら本人の意思でしか離れないから」


「沙夜!」


 声に思わずその方向を見るとドアに腕を組んで寄りかかりながらカッコつける妹の姿があった。

 いや、妹よ? 後方腕組みする前に兄ちゃんが襲われてんの助けよ? 君の友人でもあるんだぞ?


「とはいえ、この感じじゃいつまでもくっついたままだろ。

 それに抱き着いてから一言も発さないし。

 沙夜も兄と自分の友人のそんな場面は見たくないだろ?」


「別に? 血の繋がった存在でもないんだから私にその愛を止めることなんて出来ないよ。

 それにそういう系の話は散々沙由良ちゃんに読まされたしね」


 や、やっべ~、妹が寛容的すぎる!

 というか、すでに沙由良にそういうのは全然セーフであるという認識を刷り込まれてる!

 沙由良もさりげなくピースしてんじゃねぇ!


 確かに倫理観的にはセーフだけどもさ!

 こう、精神的に来るものはないの!?

 俺だったら俺の友人が妹に手を出そうものなら堪えるぞ!?


「ま、好き同士ならなんの問題ないんじゃない?

 それこそここでおっぱじめても、私はクールに去るだけだぜ兄貴☆」


「いや、寛容的になり過ぎだあああああぁぁぁぁ!」


 俺は意地でも沙由良を引きはがすとベッドの前で沙由良と沙夜を正座させた。

 そして、俺はベッドにどかっと座って見下ろしていく。


「さて、主犯沙由良よ。うちの妹の認識をぶち壊してくれたことに関して何か弁明はあるか?」


「男女の愛の育みに何か間違いがあったんですか?」


「間違い......は確かにないかもしれないけど、それは色々と切り離して考えすぎだろ。

 少なくとも、前の沙夜だったらこの状況で恥ずかしがっていたはずだぞ」


「調教の賜物です、ブイ」


「成長の賜物だぜ、兄ちゃ」


「コイツ、全く芯がブレねぇ。というか、沙夜もそれを誇らしげに言うな」


 むしろ、何が悪いのかという二人に対してもはや何を言っても無駄なような気がしてきた。


「それにしても、妹系後輩を正座させて先輩が見下ろすって構図はいいですね。

 まるでこれから淫靡でエッチでセンスティブな調教が行われるような気がして興奮します」


「ほんとブレねぇな」


 それにその三単語の意味ほとんど一緒だし。

 とにかくドエロいという意味しか伝わって来ないんだが。


 ともかく、興奮してるのは本当らしく若干息遣いが荒いし、頬も赤くなってる。

 おっかしいな、ちゃんと扇風機回してんのに部屋の温度さっきより明らかに高くなってない?


「それでこれから沙由良ん達はどんなエッチな調教を行われるんですか?」


「なんで行う前提なんだよ」


「え、兄ちゃ、マジ?」


「妹よ、俺が了承した体で勝手に話しを進める出ない。

 そして、勝手に兄の株を落とすんじゃない」


 それにしても、なんで沙由良は最初からフルスロットルなのか。

 いや、いつもそうなんだけど。今日はいつにもましてって感じがして。


 ......あ、そういうことか。理解した。通りで「お楽しみ」とか言ってたわけだ。

 前回姫島に会った時もそうだったが、こいつらは俺が雪と夏祭りに行ったことを知っている。


 そして、沙由良は前に俺が学校の図書室で生野の勉強を見ていただけで嫉妬しているかのような行動をしてみせた。


 つまり、今回の行動はそれと一緒というわけか。

 まぁ、コイツだけ学年違うし、焦る気持ちもわからなくはない―――


「言っておくけど、沙由良ちゃんがこうなってるのは夏コミ用のネタで興奮しすぎただけだから。

 そして、今日は前からやろうと決めてた勉強会で、家に兄ちゃのニオイがあることに気付いて本能のままに動き出しただけの結果だから」


「獣か、こやつは」


 それであんな訳の分からん挨拶して俺を襲ってきたわけか。

 いや、それにしても行動力がおかしい。

 もう少し恥じらいは躊躇いというのはないの?


「それじゃ、お前達二人はこれから勉強会するってことなんだな?」


「はい、学兄さんから実技ありの保健体育の勉強をする予定です」


「実技ありというか実技しかないだろ、お前の脳内には」


 「あほなことを言ってないでとっとと勉強を始めろ」と二人に促すと沙由良は渋々了承したかと思うと俺の部屋の組み立て式のミニ机を広げて勉強し始めた。

 ちょいちょいちょい? お二人さん? なぜここでやる?


「自分の部屋でやらんか」


「別にいいじゃんよ。それに兄ちゃは頭がいいって皆が行ってたしね。

 だったら、わからないとこは教えて貰おうかと」


「そうですね。そして、休憩がてらに実技に入るのもいいかと」


「それ絶対に休憩にならないやつ」


 しかしまぁ、確かに分からないことをわざわざ部屋を移動して聞きに行くという労力はめんどうなのは確か。


 それに前に沙夜が「沙由良ちゃんは学年で一桁台に入るぐらい頭いいんだよ」と自慢げに言っていたから、おおよそ俺が教えるべきことはないだろう。


 そして、二人が勉強し始めた。

 その様子を横目で確認しながらゲームをしていたが、途中から妹が俺のやってるゲームが気になりだしたのかチラチラ見始めたので、仕方なく俺も夏休みの宿題を消化することにした。


 俺は自室にある勉強机に座って始めていく。

 背後から沙夜と沙由良が真面目にやってる音が聞こえてくる。

 ま、その大半が沙夜が沙由良に教えて貰ってる感じだが。


 それから2時間ほどたったぐらい。時刻は15時ぐらいだろうか。

 沙由良が「わからないことがあるので教えてください」と聞いてきた。


 見せてきたのは英語のワークブック。長文を読んで設問を答える系の問題か。

 正直、俺も英語はあまり得意じゃないんだが、多少は―――!?


「さ、沙由良?」


「どうしました?」


「どうしましたって......」


 沙由良は俺の隣で教えを聞くことはせず、わざわざ背中から抱き着いて覗き込んでくる。

 そうなると、必然的に胸が当たり、さらに耳元に熱ぼったい吐息がかかってくる。


「ドキドキしてますね」


「勝手に人の左胸に触れないでくれる?」


「ふふっ、我慢しなくてでも大丈夫ですよ」


「沙夜!」


 俺は思わず妹の名を呼んだ。しかし、返事はない。


「ただの屍のようだ」


「勝手に殺すな」


「寝てるだけですよ。もう限界って言って。ちなみに、私も限界だったんですよ?」


「睡魔が?」


「性欲がです」


「直球過ぎる!」


 沙由良はそっと俺の首元に腕を回すと英語の長文の一部を指さした。


「あまり大きな声をあげるとせっかく気持ちよさそうに寝てるちゃん沙夜に失礼なので、静かに教えて貰いましょう。で、これがわからない文です」


「お、お前......」


 そこに書いてあった文は「I love you」というもはや小学生でも知ってる英文であった。

 完全におちょくってやがる。今こいつの顔は見えないが絶対にやけたような面してやがるはずだ。


「これぐらいはいいでしょう。お誘いした夏祭りプランもご破算してしまいましたし。

 これぐらいは言ってもらってもバチは当たらないですよね」


 最近のコイツの積極性はキレッキレでかなり不味い。

 が、こっちがいつまでも受けに回るとは思わねぇことだな!


「え?」


 俺は沙由良の腕を解くと後ろへ腰を捻って、ほぼゼロ距離のような顔の近さで言ってやった。


「愛してる」


「......っ!?」


 すると、沙由良は一気に顔を真っ赤にして後ずさると「今日はもうお腹いっぱいなので帰りましゅ」と終始ボーっとした様子で荷物をまとめ帰っていった。


 その姿に俺は勝ったと思ったのも束の間、布団にもぐって気持ち悪いほど悶え苦しんだ。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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