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第183話 静かな乙女の快進撃#7

―――音無雪 視点―――


 まさか私にこんな日が来るとはかつての私が知ったらどんな反応をするでしょうか。

 ちなみに、今の私はものすごく緊張しています。


 人生で1回しか行ったことのない海にまさか2回目にして男の人とそれも好きな人と来るなんて......!

 一体、どれだけのステップアップをすればその領域に辿り着くのでしょうか!?


 しかし、今日は私にとっての大事な一戦である影山さんとの海デートの日!

 ここで頑張らねばきっと私の望む未来へは辿りつけもしないでしょう!

 ひよってる場合じゃないですよ、私!


「よし、荷物の確認も昨日今日を含めて5回はした。

 必要最低限のものはこの中に入ってる。

 水着は......すでに着てるとして、下着は......よし、ありますね!

 後はタオルとか水分補給用の水筒とか」


 そして、6度目の確認。

 ふと時間を確認するともう少しで出発の時間です。

 とはいえ、こんなに何度も確認していたらその過程で忘れ物をしそうなのでこれくらいにしましょう。


 後は何かあったら困るので早めに行って待つぐらいにしましょう。

 まぁ、もともと待ち合わせ場所に30分ほど早く着く予定にしてるんですが。

 さすがに早すぎますかね?


 私は全ての荷物を持つと家を出発しました。

 そして、目的地の駅に辿り着くとそこで待ちに入ります。


 おばあちゃんから麦わら帽子を渡されて被ってきましたが、他の女性の服装を見ても麦わら帽子被ってる人誰もいなんですが。


 というか、今の私ってもしかしなくても相当幼く見えてたりしません? ど、どうなんでしょうか?


 昨日、瑠奈ちゃんを家に招いてバッチリデートコーデのレクチャーを受けてきましたが、この麦わら帽子が完全に年齢相応の格好を打ち消していないでしょうか。


 なんだか、周囲の人達からチラチラと見られてる気がします。

 やっぱり子供っぽいと思われたり?

 うぅ、おばあちゃん、麦わら帽子以外の普通の帽子は無かったの?


「おはよう、雪。待ち合わせからだいぶ早いが結構待たせたか?」


「か、影山しゃん......」


「なんで会った瞬間から泣きそうになってんだよ」


 それは影山さんに会えて安心したからです。

 影山さんならどんな格好をしようともバカにしないと信じてますから。


「それにしても、随分と目立ってたからわかりやすかったわ」


「私、やっぱり変で目立ってたんですか!?」


「いやいや、周囲の話からすると“随分と可愛い子がいる”ってことで目立ってた。

 つまりはその格好も十分に似合ってるから安心しろってことだな」


「そ、そうなんですか。良かったです」


 ......って、今影山さんが似合ってるって言ってくれました!?

 こ、これはやる気が倍増してきました!

 ならば、この格好も無駄ではなかったみたいですね!


「それじゃ、行きましょう!」


「ちょ、雪!?」


 私は上がったテンションのままに影山さんの手を取るとそのまま駅に中に入り、電車に乗り込んでいきました。


 電車は混雑していて自ずと影山さんとの距離が近くなっていきます。

 こ、これは満員電車あるあるの密着イベントじゃないですか!?

 も、もしかして抱きついても許される感じで?

 どうしましょう、少し興奮してきました。


「わあっ!」


 さらに人が増えてきたのかグイッと影山さんの体に顔が埋まっていきます。

 影山さんの少し筋肉質な体が頬から伝わってきて、さらにニオイに包まれる感じ。

 ちょっと、脳内がエンドルフィンで満たされる感じがして不味いです。


「ご、ごめん雪、苦しいよな?」


「......」


「......雪?」


「ハッ、どうぞおかまいなく!」


 か、完全にトリップしてました。

 まさか想像で書くのとリアルで体感するのでこんなにも違いがあるなんて......これは恐ろしいですね、後でメモしなきゃ。


 それからしばらくの間、電車の人の数が少し減るまで私は現状を堪能してました。

 目的の駅に到着するとすぐに海の潮のニオイが鼻孔をくすぐっていきます。


「ついに着いたな。雪、顔赤いけど大丈夫か?

 悪かったな、人が多かったとはいえ体が密着するような感じになって」


 いいえ、全然問題ないですよ。


「それで倒れても割に本望でした」


「え?」


 あ、本音と建前を間違えました。

 なんとか誤魔化して影山さんを海へと連れて行きます。

 影山さんも海の魅力には抗えなかったのか瞳を輝かせてうれしそうです。

 はぁ、あぶなかった。それはそれとしてはしゃいでる影山さんが少し子供っぽくで可愛いです。


「それじゃ、早速着替えて海に行くか!」


「はい!」


 というわけで、早速更衣室に向かって服を脱いでいきます。

 着ている水着は当然前回選んでもらったワンピース型の水着です。

 荷物の置忘れはない、と。

 後はお母さんから必ずもってけと言われた日焼け止め......。


「.......」


 手にしたそれを思わずまじまじと見つめてしまいました。

 これは......ふと何気なく手にしてますが、伝説の日焼け止めイベントの必須アイテムじゃないですか!?


 ということは、私もあのイベントに参加する資格があると?

 いやいや、こういうのはスタイルの女性がしてもらうことで男性をドギマギさせるもので、私のようなちんまい格好だとその魅力も半減以下では。


 しかし、やらぬ恥よりやる恥。

 この海で勝負する私にとってはせめて聞くだけでもありなのではないでしょうか?


 それが例え断られる結果になろうとも、その僅かな可能性に賭けて実行すべきなのでは?

 ......やりますか! 全部、夏のせいにして!


 私は全ての荷物を取って外に出ました。

 水着の格好で海まで来るとなんだか不思議な気分で、凄く開放的な気がしてきました。


「海だー!」


「雪が叫ぶなんて珍しいな」


「え?」


 陽気なテンションに当てられて叫んだ所を完全に影山さんに見られました。

 てっきりすでに砂浜にいると思ってたんですが......。


「ど、どうしてここに?」


「レンタルでレジャーシートとパラソル貸してくれる場所があってさ。

 そこでレンタルしたものを持ってビーチに向かおうとしたその途中で、更衣室から叫びながら飛び出す雪が見えて」


「........殺してください」


「いやいや、可愛かったから大丈夫だって!

 むしろ、雪がこんな人が溢れる場所でそれだけ声が出てることに感心したというか!」


「夏の......夏のせいなんです!」


「そうだよな、夏のせいだよな! 悪い奴だなぁ、夏って野郎は」


 顔から熱を感じてまともに影山さんを見られません。

 まさかあんな場面を見られるとは......くっ、許すまじ夏の陽気!


 気を取り直して私達は砂浜に向かいました。

 そこで影山さんがレジャーシートを引いてパラソルを広げてくれたので、その下で伝説のアイテム「日焼け止め」を取り出します。


 緊張してきました。それを持つ手が震えていきます。

 ま、まさか私が陽キャギャルのようなセリフを吐くような日がやってくるとは!

 力を貸してください莉乃ちゃん!


「か、影山さん......」


「ん? あぁ、その水着似合ってると思うぞ」


「そ、そうではないですが......ありがとうございます」


 なんか水着の姿を褒めてもらうよう催促してしまった感じになりましたが、それはそれとして良しとしましょう。


「こ、これを.......塗ってくれませんか?」


 そう言ってそっと伝説のアイテムを渡します。

 それに対し、影山さんも察したのか聞いてきました。


「しょ、正気ですか、雪さん!?」


「正気も正気。ガチのマジです」


 い、言い切りました~! ハァ、もうこれだけで達成感が凄い。

 でも、影山さんのことなら恐らく断る―――


「わ、わかった。出来る限り頑張る」


「へ!?」


 ひ、日焼け止めイベントのフラグが立ちましたわあああああぁぁぁぁ!?(←混乱)

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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