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第17話 不覚な一日#2

「まあまあ良かったな」


「その割には目元を手で覆ってるけど」


 現在、俺達は映画を見終えてからモールの1階にあるマ〇クにやって来ていた。

 時間も丁度お昼少し過ぎた辺りと言うのもあるが、思ったより映画が泣かせに来てたのが大きい。


 久々にこう......胸に来た感じがする。さすがに泣きはしなかったが、隣にいた姫島が泣いてた時は思わず涙腺にひびが入りかけた。

 しかしまあ、ああいう映画っていうのは見た後も結構印象に残るのよな。


「それにしても、良かったわよね。落ち込んだ主人公に昔にもらったマフラーを見せて、励ましながら最後に『ありがとう』って言うセリフ。あのシーンはやばかった」


「すげーわかる」


 確かにあのシーンは最高だった。そして、そこまで至るに主人公とヒロインの積み重ねてきた苦難の数があったからこそのあの言葉。ほんっと最高でした。


「にしても、意外だわ。あなたがああいう映画でちゃんと心打たれるなんて」


「お前、俺を冷血人だと思ってないか?」


「え、違うの?」


 コイツ.......


「でもまあ、これで少しはスッキリしたんじゃない?」


 姫島は頬杖をついてこちらを覗き見るように上目遣いをしてきた。まるで「そうでしょ」とでも言わんばかりに。


 その知っているような態度は少々癪だが、実際普通にスッキリした。少なからず、悪い方向に考えなくては済みそうだ。


 とはいえ、姫島に対して「はい、そうです」というのはなんかプライド的なやつで言いずらいので、ノーコメントにしておこう。

 まあ、コイツの顔からして言わずとも俺の心意すら見抜かれてそうだが。


「一先ず、食うか。せっかくの出来立てを冷ますのはもったいないしな」


「そうね」


 そして、俺達はそれぞれトレーに置いてあるハンバーガーを手に持ち、包装を開いてかじりつく。うむっ、こういうファストフードって久々に食うから美味いよな。


 相変わらずハンバーグの溢れ出した肉汁にチーズのほんの少しの塩気が絶妙に合うな。昔はピクルス嫌いだったが、改めて他の具と一緒に食うと意外に嫌いになれないじゃない。


「それで、あなたはこれから具体的にどう動いていくつもりなの?」


「どうとは?」


「決まってるじゃない。あの二人のことよ」


 まあ、そりゃそうよな。にしても、まさかコイツからその話題を伝えてくるとは......もしかして、本気で俺の手伝いをするつもりか?


 確かに一緒に考えたら~とか言ってたが、ただの慰めの一環とかじゃなかったとは......少々コイツを侮りすぎていたか?


 まあ、もとよりコイツを協力者として受け入れたのは俺自身であるし、コイツに手伝ってもらうのは本来普通のことなのか。


「まあ、あん時も言った通り、最初は様子見。だがまあ、長くても1週間だ。それ以上は俺達が手を下す」


「といっても、間接的になんでしょ?」


「あくまでそのつもりだが......まあ、俺が現時点で思いついているのは一つだな」


 もっともそのやり方だとやはり俺は悪役的ポジションになってしまうのは否めないが。それに問題は他にもある。


「その作戦には俺が光輝の行動をどれだけ読めているかがカギになってくる。まあ、つまりは博打だな」


「私が関わっても成功率は低そう?」


「まあ、な。お前の行動が原因じゃない。ただ単純に俺達の世界の主人公達の行動次第ってわけだ」


 それがコントロールできることはまずない。それこそそのラブコメの創造主()じゃねぇんだからな。


「そう......でも、私も何かできそうな感じね」


「まあ、その時は追って連絡する。これでこの話は終わりだ。もとより今日はこの話をしないつもりだったからな」


「本気だったのね、その言葉。てっきりヤケになったのかと」


「半分ってところだな。だがもう、今ので今日は十分な話はついた気がするし。後は楽しむだけだ」


 さすがに俺も一度で整理するに今日はいろいろ起き過ぎた。ある程度想定はしていたが、予想外な光輝と結弦の効き目もあり、姫島の登場もあり、映画の内容もありで脳内キャパオーバーだ。


「んじゃ、後半も癒しコースで頼むわ」


「ングフッ」


 え、何コイツ......急にジュース吹いたんだけど。なんも変なこと言ってないよな?


 姫路は急いでハンカチで口元を吹きながら尋ねてくる。


「え、午後もいてくれるの?」


「今日は遊ぶって言ったじゃねぇか」


「いやでも、あなたのことだからてっきり.......いいえ、なんでもないわ」


 なんだろうか、姫島の様子がおかしい。口元を手で覆い隠し、予想外のことが起きたと言わんばかりの深刻そうな目をして虚空を見つめながらぶつぶつ呟いている。


 なんつーか、また良からぬことを考えてるような。あれだ、前のエロ写真事件みたいな空気感。

 そして、姫島は碇ゲ〇ドウばりの姿勢と威圧感で告げる。


「どうしましょう......下着がエロくないわ」


「なにがどうしましょうと?」


 コイツはまた突然何を言い出すんだ? つーか、それって普通口に出す言葉じゃ無くね?


「いや、お前が別にどんなの履いていようと気にしないんだが」


 特に興味もねぇし。


「いや、私のプライドの問題よ。だって、今日は二番目にエロい奴だもの」


「おい、結局二番目じゃねぇか」


 何コイツ、今日だけでいくつ階段すっ飛ばす気でいたんだ? つーか、さっきの反応だと俺がお前に午後まで付き合うこと自体想定外って感じだったよな?


「いやまあ、お前が無理ならこっちも無理にとは言わないし、このまま解散でいいけど」


「待って! それだけは! それだけは~~~~~~!」


「必死さが凄くてむさ苦しい」


 前にも恋愛下手と思っていたが......あれだな。低次元も低次元だわ。俺がギャルゲーを基本軸にしてるのもあるからだけど、コイツは素直に酷い。


「お前はもう少し好意を隠す努力をしろよ。オープンにもほどがあるぞ」


「むしろ、オープンじゃないと反応してくれないあなたが悪いと思うんだけど?

 そうよ、さっきのチケットもそう! こっちが上手く主導権握れてると思ったら急に上手く握り返されて、そしてさっきの発言だって!

 そういう強引さ......ほんと嫌いじゃない」


「あ、どうも......じゃねぇよ。怒るかかデレるかどっちかにしろよ」


「じゃあ、デレるわよ」


「結局そっちなのな」


「ちなみに、私のデレるはスキンシップ多めになって最終的にモザイクエンドになるけどいいかしら?」


「それを聞かされてる俺の気持ちにもなってほしいかしら?」


「そうよね、気持ちの準備って必要よね.......」


「いや、ちげぇし。なんでお前の中で俺はそれに肯定したことになってるし。つーか、お前の好意って完全に性欲じゃねぇか」


「そうよ、結局好意の深層は性欲よ。人を好きになるのは種の繁栄という行為につながるための心情原理。つまりは好意=性欲ということよ! 証明終了(Q.E.D.)


「嫌だわ、そんなQ.E.D.」


 はあ、やっぱりコイツとの会話は疲れるなぁ。何が疲れるって、今の発言を割に真面目に言ってる所なんだよなぁ。ほら、目つきが無駄に良い。


 しかも、人目を憚らずに言うあたり。おかしいよなぁ、俺が言ってるわけでもないのに俺が悪いみたいな視線が送られてくるんだもの。


 傍から見れば彼氏彼女に見えて、その彼女に彼氏が変なこと言わせてるみたいな。羞恥プレイを楽しんでるみたいな。むしろ、羞恥受けてるの俺なんですけどね。


 あーなんか、イライラしてきた。まさかさっきの真面目雰囲気がこいつの変態性によってこうもぶっ壊されるとは不覚だった。やっぱり精神的に来てんだなぁ。


 俺は軽く手を合わせて食事を終えると姫島に提案する。


「よし、このまま午後に付き合ってやる代わりに、俺が良いというまで俺の半径5メートルに近づくな」


「なら、いいわ。やめましょう」


「即答......」


 そして、俺達はお昼を食った後に解散した。とはいえ、途中まで帰り道が一緒だったので、結局そこまでは一緒に帰ることになってしまったが。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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