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第135話 勉強会は9割8分の確率で成功しない#1

 本日は気持ちのよい快晴。

 そして、俺に恵みの癒しを与えてくれる休日......となるはずだったのだが――――


「来ちゃった☆」


「......」


「ちょっと! 無言でドア閉めないでよ! お願いだから!」


 なんでコイツが家に来てるんだ......。

 これまで追い回された二週間の中でも休日の時には来なかったのに、今回は一体何用で俺の家に?


「......なんだ?」


「やっと開けてくれたわね。でも、しっかりとチェーンしてある......ま、いいわ。今日はお願いがあって来たの」


「お願い? スイーツ店へのお誘いだったらお前の顔見てそんな気分じゃなくなったから行かないぞ」


「あんた、相当私のこと警戒してるわね......さすがにそう言われると傷つくわよ。

  でも、残念! 今日のお願いはそういうことじゃないわ。

 勉強を教えて欲しいのよ」


「勉強?」


「ほら、近々定期試験が近づいているでしょ?

あたし、成績は微妙でここ最近若干右肩下がりでさ。

 お小遣い減らされそうなんだよね。

あ、『それは自業自得だろ。俺は知らん。じゃあな』とか思ったでしょ?」


「別にそこまでは思ってねぇよ」


 めんどくせぇとは思ったけど。


「でも、思ったことは認めるのね。

 けど、そこで引き下がる私でなくなった! 教えて! 学!」


 生野は両手を合わせ頭を下げてのお願いポーズしてきた。

 さすがの俺でもここまで真っ直ぐお願いされたら断るほどの鬼では――――


「だが、断る」


「え!? なんで!?」


「お前の俺に対する行動を考えろ。俺はどれだけの疲労を背負ったか」


「え、役得でしょ? なんせあたしってヲタクに優しいギャルみたいで普通にモテるしさ~」


 それって自分で言うことじゃないだろ。

 っていうか、そのせいで俺は学校で同類(ヲタク)から針のむしろのような視線が来るんだけど!?


 しかし、たとえそんなことを言った所で今の生野に通じるとは思えない。

 それにここで俺が意地でもドアを閉めて接触を絶てばこの話はそこで終わるだろうが――――


『私としては少しだけ応援したい気持ちもあるのよ。

 負けたくないのは当然だけど、でもそれは相手も同じで、その気持ちが痛いほどわかるからこそ、頑張って気持ちを伝えようとしている姿勢は不思議と、ね』


 不意に姫島の言葉が蘇った。なぜ思い出したのかはわからない。


 そして、思い出した姫島の言葉をそのまま受け取るならば、生野の気持ちは姫島をそう行動させるほどには本気で、俺が姫島の気持ちに対して答えようと考えている以上同程度かそれ以上の気持ちを持つ生野に対して向き合わないというのもおかしな話だろう。


 つまり生野に対する行動は俺が姫島に対して疲れたからということで正面から向き合わないのと同じと言えよう。


「はぁ、わかった」


「ほんと!? やった!」


 生野は子供のようにはしゃぎガッツポーズしている。

 ま、それに生野の気がかりなほどの行動の変化に妙な裏を感じて仕方ないしな。

 それを調べるためにも付き合ってやろう。

 虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだ。


――――十数分後


「――――で、なんで俺はお前の家にいるんだ?」


 押しかけて来た生野が「さ、移動しよう」と言ったからてっきりどっかのファミレスで勉強会するかと思いきやまさかのマンション。

 しかも、割にリッチなタイプの。


「そりゃ、勉強に決まってるでしょ?」


「そんな“何おかしなこと言ってんの?”みたいな目で見るな。ファミレスかと思ったぞ。

 っていうか、お前んちまで来てやるぐらいなら俺ん家で良かったじゃん」


「ダメよ、妹さんいるでしょ」


「なんで妹いるとダメなんだ?」


「そ、それは......ほ、ほら、妹さんって受験シーズンでしょ?

 だから、邪魔しちゃ悪いかなーっと思って。

 それに家で兄があたしとい、イチャイチャしてたら集中できないだろうし」


 ただの勉強会に一体いつどのタイミングで俺はお前とイチャイチャする予定があるんですかねぇ?


「ともかく! そういうことだから! わかった!」


 生野はやや鼻息を荒くして人差し指を向けて来た。

 その顔は少し興奮したようにほんのり赤くなっている。


 そんな生野に一抹の不安を感じながらも、確かに沙夜に妙な集中力を削ぐ要因を与えてはいけない、と感じて諦めたように生野の家へ。


 「おじゃまします」と家に入るとリビングに案内される。

 そこは清潔感があるような整った場所で、「少し待ってて」と言われて緑色のソファに座っていく。


 そう言えば、なんだかんだで花市の家を除けば女子の家に招かれたのは二回目だな。


 前が姫島で、二人目が生野か。なんか途端にプレイボーイな感じがしてきた。

 まぁ、現状間違っちゃいねぇんだけど。


「おまたせ。こっち来て」


 部屋着に着替えたであろう生野の恰好は妙に大人っぽかった。

 一言で言えば部屋着とは思えない。

 過剰な言葉を付け足すならあえて色気を出している。


 しかし、さすがに邪推であろう。

 普段生野がどんな部屋着を着ているかなんて知らんしな。

 俺は生野に呼ばれるがままに立ち上がると歩き出した。


「にしても、親御さんがいないなら別にリビングで良かったんじゃ?」


「そ、それだと雰囲気出ないじゃない?」


 雰囲気? まぁ、確かに勉強会というと友達の部屋でこじんまりとした机で一緒に勉強するというイメージがあるが......もしかして、雰囲気を大事にする派か? 別にどっちでやろうと大して変わりゃしないけど。


 にしても、後ろから見る生野の耳は見事に紅いな。

 まぁ、ギャルとはいえ純情似非ビッチであるし、

 今まで家に男を招いた数なんてゼロに等しいのかもな。

 故に、緊張していると。


「あんたは緊張しないのね......」


 どうやら図星みたいだな。


「まぁ、これが初めてってわけじゃなしな。

 姫島の家に二回ほど行ったことあるし。

 女子の家がどんな感じかって分かれば別に緊張するほどでもないだろ」


「......へぇ、まるで慣れた男みたいなセリフね」


 生野は小声でそう呟く。すまんな難聴系じゃなくて。バッチリ聞こえてる。

 それに慣れたというか、未知に踏み出すのは勇気いるけど一度経験すれば後はすんなりと出来るみたいな? そんな感じなだけだよ。


 ......あれ? 俺ってば今の状況的にスゲークズっぽい発言してね?

 前からとっくにクズだけどさ。

 生野が自身の部屋のドアノブに手をかけたタイミングでピタッと止まる。

 その行動を怪訝に思っていると告げてきた。


「それから女の子が一緒の時に別の女の子の話を持ち出すのは実にナンセンスよ。結構ムカついたわ」


『誰だって気になってるひとや好意を持っている人が他の女子と話していればモヤッとするものよ』


 またもや姫島の言葉とリンクした。なるほど、これは俺に非があるようだ。

 生野の気持ちは姫島と同じなのだ。

 熱量に差異はあれど、少なからずここまで行動的になるほどには。


 それに対して、俺が気持ちに向き合う姿勢を取るならば、その相手のことをしっかりと見なければいけない。

 言い方を変えれば、相手にしている人がいればその人だけに向き合う。


 そして、生野に向き合ってる以上今は生野の気持ちに正面から向き合うのが惚れられてる者の筋ってものだろう。


「悪い。他意があったわけじゃない」


「わかってるわよ。けど、頭の片隅にでも別の女の子の存在がチラついているならやっぱムカつくわ」


「それに関しては勘弁してくれ。

 簡単に向き合っていい議題じゃないから、考えなきゃいけないから忘れることは出来ない」


「ほんとにハッキリ言ってくれるところはあんたの美徳よね。

 結局はぐらかすあんたの主人公よりはこっちの方があたしの性に合ってる」


「確かにこの現状(けっか)から見ればそうかもな」


「......それにそれを忘れさせるのは私の仕事だし」


 またもやボソッと呟く生野。

 しかし、先程よりも小さい声のせいか聞き取れなかった。

 そして、ガチャッとドアを開けると生野は招いた。


「さ、()()()()()()()()()

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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