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第98話 そんなまさか......ね?

 俺の脳裏にBLという単語が妙に離れない中で、昂と一緒に引き続き買い物をしていた。


 といっても、俺が買い物する時って特に他に補充するものがなければ買ったらそのまま直帰するタイプだから、本当に昂にはただ無駄な時間を過ごさせているという。


 さすがにそれだと味気ないよな......いや、味気なっていうか元より昴が付いてくる自体想定外だったからな。

 とはいえ、普段花市にお疲れ気味であろう昂にはリフレッシュしてもらうというのもアリかもしれない。


 そんなことを考えながら現在百均のペン売り場。

 似た様なボールペンやシャープペンが数多く並んでおり、もう既に手に入れた入れ替えインクとは別に少し眺めていた。

 すると別の売り場を見てた昴が帰ってきて声をかけてくる。


「買いたいものは見つかった?」


「あぁ、それはすぐに。にしても、ほんと種類あるよな。ぶっちゃけこんなに要らんだろ」


「まぁでも、ほら書き心地とかよく聞くじゃん?」


「書き心地ってそんなに変わるもんなのか?

 正直、インクの量が通常よりも多めに入ってますとかの方が購買意欲湧くんだけど」


「でもさ、シャープペンでも持つところにクッションみたいなブニブニがあった方が書きやす人がいたり、その逆でない方が書きやすいとかいるからさ。

 例えるなら本であれば同人誌という大きなくくりがあっても、その中は多くの好み(ジャンル)でわかれてるでしょってこと」


「なるほど、実にヲタクにもわかりやすい納得のいく説明だな」


「そう言ってもらえるなら嬉しいよ」


 ま、意見なんて十人十色なんだし、しかもその人にとっての好きを否定するのは良くないか。たとえただの意見だとしても。


 とはいえ、同人誌なら未だしもボールペンに対してそう考えるのは些か考えすぎではと思うが。これも昂の意見ってことか。


 そんなこんなでちゃちゃっと会計を済ませるとやっぱり早々に買い物は終わってしまった。

 時間にして花市の帰りを見届けてからだと恐らく10分も経っていない。

 ここはやはり久々の再会を祝してパーッと遊びますか。

 昂は花市の影響で自分の時間ってのは作りずらそうだからな。


「なぁ、まだ時間って空いてるか?」


「空いてるよ。むしろ早々に帰ったらお嬢様に怒られそうだし」


「早く帰ったら帰ったで怒られるってお前らどういう関係性なんだよ。

 ま、時間があるんだったらちょっくらゲーセン行こうぜ」


 昂を誘うと俺は歩き出した。その隣に昂は少し駆け足で追いつくと歩調を合わせて歩いていく。

 両端にはいろいろな店が視界の横に流れていく。

 靴屋だったり、雑貨屋だったり、本だったり、靴屋だったり、百均だったり、服屋だったり。


 正直、こういうモールを歩くと大抵靴屋と服やって一つじゃないよな。必ず複数ある気がする。

 ま、そういう類ってブランドや流行を常に先取りしていて、しかも一つの店舗でいくつものブランド品や流行品を扱えるわけじゃないから複数あるって感じかもしれないがな。


 そんなどうでもいい考察をしているとふと昂が無言なのが気になった。

 別に俺は積極的に話しかけるわけでもないし、無言であっても全然気にしないタイプだが、昂はどちらかというとそういう無言タイムに気を遣うタイプだと思われる。


 そして昂を見てみると昂はお店の方を眺めていた。

 見ていたのは服やでオシャレなマネキンがモデルのようなポーズをしているのにぼんやりと視線を送っているのだ。


 しかも見ているのは俺の勘違いでなければ女性ものだ。

 丁度視線の先にそこらにぶつかるからという理由なだけだが......まさかな。


「ねぇ、ゲーセンに行く前に少し本屋に寄っていいかな?」


「本屋か。そう言えば前に俺がダル絡みしに行った時も小説読んでたな。カバーしてあってどんなものか知らんけど」


「最近その小説の新作が出たみたいなんだ。

 がっくんは今もラノベ読んでるみたいだし僕が買い物してる間に見てきていいよ」


「俺が今もラノベ読んでること平然と知ってないでほしい」


 花市が来てからはアイツが爆弾を落とすような行為にでないか気を張ってるせいでラノベが読めていない。


 だから、花市と昂には俺が学校でもラノベ読んでることは知らないはずなんだが......やはりこいつらの情報力は侮れんな。


 とはいえ、お言葉には甘えさせてもらおう。

 俺は月に数冊と決めて漫画やらラノベやらを買っているのだが、最近まで集めていた漫画は夏休みの時点で最新刊まで追い付いちゃったしここは新しい(しま)を開拓するとしますか。


 そして俺と昂は各々の目的のために一時解散した。

 一か月前に訪れたのだがやはり多少は品ぞろえが変わっているな。

 俺はバトルもラブコメもファンタジーもギャグもロボも戦国ものも好きという雑食ヲタなので基本何でもイケる。


 故に、それはそれで目移りが激しくて大変なのだがそんなひと時が実に幸せであったりもするわけで......っとこれはあま男ではないか!


 あま男とは自称男の娘である高校生が学園生活の中で男っぽいふるまいをしながらも、恰好が明らかに女の子で周囲の男女及び読者すら惑わしていくという最近一推しの男の娘系漫画である。


 これは確か漫画アプリで初回数話試し読みだったから読んだが、割に苦手な部類に入る男の娘系漫画で十分に楽しめた作品だ。

 そしてこれの新刊が出てる。冊数は8巻ぐらいか。俺の預金残高は......イケる!


 買うと決めたなら即実行! 目にも止まらぬ速さでその漫画の全8巻をかき集めていくとホクホク顔でレジに向かっていく。


 すると丁度本棚と間から出た所で昂が眺めてたところからレジに向かう姿が見えた。

 そう言えばアイツって何読むんだろ。少し気になるな。


 ま、アイツのことだから普通に推理小説とかか? それかちょっと風変わりなストーリーものとか。

 まぁ、アイツはラノベを読むタイプっていうか純文学寄り――――


「......まさかな」


 ふらっと立ち寄って昂が立ち去った場所に向かってそこの近くの本を眺めているとそれはそれは「あまーーーーーーーーい!」と叫びたくなるような女性向け寄りの恋愛小説であった。


 しかし、こればっかりだったらまだいい。

 正直アイツが女性向けの小説を読むのだったらまだ許容できる。


 だが問題は見ていた位置がその本に並べられるようにあった―――――男が男の胸元をまさぐってる表紙絵の本がある場所だったからだ。


 これって......ボーイズ&ラブですよね? 略してBLですよね? え、まさかホントにそっちの気が!? 俺はノンケだぞ!?


 いやいや待て待て、落ち着け俺。取り乱すな。十分なほどに心のざわつきが大きいが冷静になれ。

 普通に考えてみろ。この本を興味本位で眺めただけであってこの本を手に取ったという証明にはならない。


 それだったら俺だって百合カップリングのラノベの裏表紙のあらすじみたいなのを呼んだことある。つまりはそういうことだ。


 アイツはすでに買いたい本を手にしていて、でもすぐにはレジには行かずに少しだけ探索してたとかそんなところだろ。な、そうだ。絶対にそうだ。


 それに仮に本当に好きだとすればそれを否定してはならない。

 ヲタクである俺だって好きは否定されたくないからな。

 これが事実であるなら受け止めるだけだ。事実ならな!


 よ、よし! さっさと俺も買い物を済ませよう。レジは空いてるか......丁度昂が会計中だ。

 ど、どうする俺? 特に気にしてない素振りで何買ったか覗いてみるか?


 覗いてみる、か。だって別に昂は悪いことしてるわけでもないし、俺も困ることは何もない。

 ただ可能性として友人の特殊な性癖を垣間見るだけだ......それは十分大きいけどな!


 しかし、本当に悪いことではない。俺は昂の好きを否定しない。

 その領域がたとえ俺のまだ知らぬ未知の世界だとしても―――――はっ!

 昂が持つ袋の中にはしっかりとBLとしか思えない本が入っていた。


「す、昂......それは?」


「あーこれね、お嬢様に頼まれてた本でね。本屋見かけた時に買ってくるよう頼まれてて。

 すぐにじゃなくていいって話だったけど本屋があったからついでにね」


「そ、そうか......お前のは?」


「僕は普通に恋愛小説だよ」


「だ、だよな!」


 俺は今深い後悔のどん底に立たされていた。どうして俺はもうそう思ってしまうのか!

 正直、花市が腐っていたことに関しても驚きは隠せないがそんなことは今更どうでもいい!


 会計を済ませるとそっと昂の肩に手を置いて告げる。


「ごめん、お前を信じれなくて......」


「え、何が?」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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