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終わりの炎と抗う者達  作者: しやぶ
第一章:逃避行編
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第6話:髪と瞳


 生き残りだった『三番』は今や亡く 『六番』に覚醒の兆しは無い。


 ──残るは『番外』ただ一人。


「──なるほど。それがアルの様子がおかしかった原因ってワケか……」


 両親の助けによって逃げることに成功した俺とアルは、教会に留まっていたユダと合流し、事情を説明して協力を仰ぐことにした。


「正直、話が大きすぎて実感が湧かないんだけど──いいよ。手を貸そう」

「ありがてぇ。お前が居てくれるなら心強い」


 ほっと一息吐く。ユダなら付いて来てくれると信じていたが、今回は状況が状況だ。断られても仕方ないと考えていただけに、ありがたい。


「ふふふ、嬉しいこと言われちゃったし? 早速仕事しちゃいますか!」


 そう言ったユダは、懐から携帯用の杖を取り出した。父さん特製の超小型──性能の劣化を最小限に、筆程度の大きさまで縮められた逸品だ。


「アル、抵抗しないでね?」

「うん。いいけど、何をするの?」

「それは結果が出てからのお楽しみ」


 ユダがアルに杖を向けると、彼女の魔力が励起した。対象の魔力を利用した魔術行使……相手の同意があって尚、成功させられる者は少ない高等技術だ。


「──うん、手ごたえは完璧。エンデ、千里眼で確認お願い」

「……これは、凄いな」

「え、何? 私、何されたの?」


「アル、お前──()()()()()()()()()()()ぞ」


 特徴的な白い髪は金髪に。血色の瞳は碧眼に。

 これならば、少なくとも一般人には彼女が『炎の依代(レーヴァテイン)』だと判断する術はないだろう。


「えっ、えええええぇぇぇ!?」


 驚くのも無理はない。髪や瞳の色には、種族固有のものもある。だからこそこれらは、種族──ひいては国の象徴にもなり得るものなのだ。

 そこにこんな魔法の存在が知れたら、国家規模の面倒事が……


 ……いや、今はアルテミシアの命が最優先だ。この魔法について考えるのは、この件が片付いた後でいい。


「うんうん。最高の反応をありがとう。

 さて、次はエンデだよ。じっとしててね?」

「俺は別に──」

「いやいや。君の髪と瞳だって、アル程じゃあないにせよ、珍しいことに変わりはないんだよ? ささ、大人しく首を出してくださいな」

「……分かった。やってくれ」


 そうして頭を差し出すと、ほどなくして体内の魔力が弄られる感覚。


「よし、成功だよ!」

「ふむ。どれどれ?」


 氷の魔法で鏡を作って確認してみると、俺もアルと同様金髪碧眼の、一般的な原人種の見た目になっていた。


「エンデと、お揃い……」


 アルは自分の髪をいじりながら、頬を朱に染めていた。

 俺は黒髪に愛着があったし、白い髪のアルも好きだったが……そう言われて悪い気はしない。



「──コホン。二人共、仲が良いのは結構だけど、時間が無いこと分かってるよね?

 特にエンデ。今後の計画、どこまで決まってるの? 君が指示を出さないと、僕達動けないんですけど」

「あぁ、スマンスマン。まずは北──ブーゲンビリアに向かうぞ。詳しい話は移動しながらだ」



 *



 実のところ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 では何故、それをしないのかと言えば……端的に言って、無駄だからである。


 終わりの炎は加護として与えられた。なら、それを生み出した神がいる筈だ。

 その神を殺さない限り、何度でもアルテミシアに炎は宿るだろう。だから今は、放置するしかない。


 故に俺達はまず、誰が炎を生み出したのかを知る必要がある。

 しかし、現状の手掛かりは相手が『世界を滅ぼす力を持つ神』というだけ。

 まぁそれだけでもとびきり上位の神であることは確定するため、敵の本拠地はほぼ確実に『神界』ということになるが……俺達は、神界に行く術を持たない。


 だから第一目標は、『神界の存在と協力関係を作ること』

 幸い、その方法には一つ当てがある。

 知り合いに、()()()()()()()()()()()()女性がいるのだ。


 ──神界序列第六位『裁決神』リブラ。

 秩序と公平性を司る神霊。


 理不尽を嫌う彼女と、彼女に力を与えた、かの神霊ならば。アルの味方になってくれる筈だ。


 ……ということで、彼女が居る教会に直接行ければいいのだが。徒歩ではどれだけ急いでも、あそこまで着くのに三日はかかる。馬車は契約にかける時間も金も無いから論外。転移魔法は、俺とユダの魔力量だと距離があり過ぎて不可能だ。

 アルテミシアならできないこともないが……心が落ち着いてない、今の彼女にそれをさせるのは危険過ぎる。


 ブーゲンビリアは今日中に歩いていける距離で、治安がいいため中間地点として利用するだけだ。


「なるほどねぇ……じゃあ勝負は、僕達がその人に協力を取り付けるまで、生き残れるかってところだね」

「そうだ、俺達は戦わない。ただ生き残ればいいんだ。しかもお前のおかげで、想定以上に身を隠しやすくなってる。意外となんとかなりそうだろ?」

「……うん。だといいんだけど」

「大丈夫だ。ブーゲンビリアはもうすぐそこ──」



 ── ほら、二人共無事だろう? アンタの弟子も居るみたいだし、なんとかなりそうさね


 ── ……うむ、安心したわい。では逝くか、エリザよ



「……エンデ?」

「何かあった?」


「……いや、なんでもねぇよ。早く宿とって休もうぜ?」


 早歩きで、先陣を切る。今、二人に顔は見せられない。



(あぁ、なんとかするさ。安心しろよ。何があっても、アルテミシアは俺が守るから)



 万感の思いを込めて、誓いを此処に────



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― 新着の感想 ―
[良い点] 死者の記憶が閲覧できる能力の設定がこんなところで活きるとは……。間話のラストで、二人が亡くなった後に情報が開示されるのも切なくていいですね。 [一言] かなり周到に設定を練られたのではない…
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