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終わりの炎と抗う者達  作者: しやぶ
第一章:逃避行編
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第4話:少年は不可能に抗う

 不可能を可能にする存在が『主人公』であるのなら、彼はきっと──『主人公』ではないのだろう。


「──ッッ!?」


「……アル、どうした?」


 アルテミシアは加護を貰った直後、突然目を見開いて震え始めた。



 そして次の瞬間、()()()()()()()()



(────は?)



 あまりの衝撃に一瞬思考が停止するが、すぐに()()()()()()()()()()ことに気付いた。

 これは──『未来視』だ。

 しかし、これはおかしい。千里眼は自動で効力を発揮する加護ではない筈だが……


「……エンデ」

「なんだ?」


 声をかけられ、思考を一旦打ち切る。今は何より、アルのことだ。


「朝のお願いのこと。アレ、やっぱり忘れて」

「……どうして」

「実はずっと、アナタのことが嫌いだったの。もう加護は貰ったし、これでやっとアナタとお別れできる。もう顔も見なくて済むから清々するわ」


 そして言いたいことだけ言った彼女は、出口の方向へ歩き出した。


「……おい、待てよアル」

「嫌よ。急用を思い出したから、急いでるの」

「そうか。でもこれだけは聞いていけ」

「……」


 彼女が立ち止まった。幸いなことに、一言二言くらいは聞いてくれるらしい。



「この程度で認識を変えるほど、浅い付き合いじゃあないだろこのバカがッ! そんなに俺は頼りないか!?」



 それに対し、アルは。



「──じゃあエンデは、私のために()()()()()()()()()()()()()?」



 振り返ったことで見えるようになった彼女の顔は、滂沱の涙でグチャグチャになっていた。


 体感時間で何万年と生きているくせに、俺はこの時、彼女の感情を正確に推し量れなかった。

 ただ、その発言が先のものとは違い、本気であることだけは理解できた。できてしまった。


 ──俺は、十二神に勝てるのか?


 考えるまでもない。不可能だ。一柱に対し俺が百人いても、手傷を負わせることすらできないだろう。

 単体でそれだけ差がある奴等を、十二柱も相手にする? そんなこと、無理に決まっている。


 この場面はきっと、嘘でも『できる』と答えるのが正解なのだろう。

 だが俺は──彼女に嘘を吐けなかった。



「……さよなら」



 沈黙という名の返答を受け取った彼女は、俺達の前から姿を消した。




 *




「────ほぉ? それで自ら我のところまで来るとは……殊勝なことだな」


 教会を出た私は、近くに住んでいる山の神──『狼神』ヴォルグの元へ転移していた。


 この身に宿る『もう一つの加護』の影響で、私は()()()()()()()

 故に、知り得る限り最強の神である彼に事情を説明し、殺して貰おうと考えたのだ。


「一思いに、お願いします」

「うむ。最後に確認だが、やり残したこと、言い残したいことはあるか?」

「…………いいえ、何も」

「……そうか。では、さらばだ」


 狼神様が爪を振り上げたのを見て、ゆっくりと目を閉じる。


(……ごめんね、エンデ)


 心の中で、彼に謝罪した。

 炎の発動は、私の意思とは関係なかった。

 私さえ世界の焼滅を望まなければ、大丈夫だと思っていたのだ。


 ──認識が、甘過ぎた。


 既に一柱の神霊を焼いてしまった。私はもっと、早く死ぬべきだったのだ。


 ……だけど本当はもっと、貴方と一緒に────



「──っせるかぁぁああああ!!!」



 黒髪の少年が、私の前に躍り出る。

 命を刈り取る凶爪に、少年は土の剣を叩き付けた。

 剣は砕けたが、狼神は止まった。


 ────神の一撃を、只人が防いだのだ。


 いや、それだけではない。

 少年は地面から無数の土の槍を発生させ、ヴォルグを後退させた。


「……貴様、何者だ?」


 この偉業を成した、彼の名は────



「──エンデュミオン・クロッカス」



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