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終わりの炎と抗う者達  作者: しやぶ
第一章:逃避行編
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間話:少年と少女 それぞれの内面

 ──母さんに、聞かなければいけないことができた。

 アルテミシアの様子は明らかに異常だ。早急に、原因を突き止める必要がある。


 普通、『何故そこで母を引き合いに出すのか』と思われるだろうが、()()()()()()()、同時期におかしな行動を取り始めたらまず『繋がっている』と見ていい。


 コレには、アルテミシアの才能──『特化属性』が関係している。


 特化属性『共鳴』

 他人と波長を合わせて感情を読み解いたり、動きを真似て技能を盗むことが得意になる才能だ。


 ──ぶっちゃけ、これは()()()()()()となる才能である。


 俺は『死者』から『一生の記憶』を受け取ることで、その経験を疑似体験するが……これだと余計な情報が多過ぎて精神汚染が発生する。

 対し彼女は『生者』から特定の感覚だけを抜き取れるから、俺が正気を削って体得した技能を、気軽にホイホイ習得してしまう。おまけに剣技で抜かれた時は、本気で発狂するかと思った。


 ……しまった、話が逸れている。今は俺のことなんてどうでもいいのだ。


 ともかく、アルテミシアには『対象と感覚を共有する』力がある。経験則だが、彼女はその能力で、母さんの未来予知染みた〝勘〟と共鳴した可能性が高い。そこで、母から話を聞こうとなる訳だ。


 ──加えて、少し保険もかけておく。


 密着している彼女に気付かれないよう、極小規模の黒魔法でアルテミシアの髪を数本切り落とし、袖口に仕込んだ。

 魔力は生命力。全身のどの部分であろうと、少量は含まれている。宮廷魔導士くらいの腕があれば、この髪数本分の魔力で縁を作り、彼女の居場所を把握できるようになる。ちなみに俺の場合、加えて精神状態すらもある程度読み取ることができる。

 これで、遠くで彼女の身に何か起きてもすぐに対応できるようになった。


 ──しかし、運命とはわからないものだ。

 ()()()()()()()()()()()()己の技が、今はこうして守るために使われている。



『ずっと一緒に居てくれる?』


『それがお前の望みなら』



 ……本当に、わからないものだ。

 彼女が近くに居てくれるだけで、何度も狂って歪んだ筈の心が、こんなにも暖かい。きっと彼女が俺を必要とする以上に、この心は彼女を必要としている。


 ──だからこそ、自戒しよう。

 アルテミシアは、世界中の狂気を観たこの俺とすら『共鳴』し、最大の理解者となってくれた。誰にも理解されなかった苦しみを共有してくれた。それがどれほどの救いになったのか、彼女は知らない。

 彼女はきっとこれからも無自覚に、多くの孤独を取り払い、人を救うだろう。その時隣に居るのが、俺のような殺人鬼であってはならない。


 ──だからこの想いは、墓場まで持っていく。


 高鳴ろうとする心臓を魔術で押さえつけながら、そう誓った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い中二感です! 独特の世界観で、ハマる人はハマるタイプの小説ですね! 文章も読みやすく、すっと頭に入ってくるのも良い点です。 [一言] 執筆頑張ってください!
[良い点] まだ本格的な戦闘描写はないので、それ以外で感想を書きます! まず、キャラクターの設定が凝られているのが良いと思います! 毎話キャラクター設定を書いていて、設定好きの僕からするとかなり楽しめ…
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