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開店前の徹夜並びはご遠慮願えますか?(徹夜じゃないけど)

さん付けなんていいよ、呼び捨てにしていいからね!とか敬語はいいよ!って言って

すぐに呼び捨てにしてタメ口に切り替わるのも、それはそれでどうなん





「………怨念がおんねん」




いつものように、自分の雑貨屋の椅子にだらけて座っている溜池語呂之介。今日もまた無気力かつ、くたびれた表情をしている。朝の早い時間、まだ店が開店していないとき




「…ん?」




ドンドンドンドンと、やや強いノックの音が聞こえる。鍵が開いていないと分かるや否や、断続的にノックをする。さらに




「おい!開けろ!開けろお!いるんだろう『死還者』!」




ノックをしながら大きな声が、外から店内に聞こえてくる。この声は、以前この雑貨屋に訪れて、語呂之介を王国に連行しようとしたアナという女性騎士のものである。しかし、アナは急に気絶をしてしまい、いつの間にか王国に戻っていた。あれから3日後、再びこの店に現れた




「…あーどうしよ」




語呂之介はとりあえず立ち上がる。まだ開店していないため、気だるさは抜けきらない。だが、いつまでも大きな音でノックと呼びかけが続くとなるとたまらない。何かを手に持って、語呂之介は扉を開ける




「よいしょっと」


「む、遅いぞ!呼びかけたのなら早く出て来い!『死還者』、貴様にいくつか」


「こうしてと、ほな」




かと思ったら、扉の前に何かをぶらさげて、また素早く扉を閉めた。女性騎士のアナが何かを語呂之介に言い切る前に、置いてけぼりにした。




「ちょっ、こらあ!なぜまた閉める!」




当然、ドアノブをひねって開けようとしても開かない。再び内側から鍵を掛けられたのだ。語呂之介が店の戸に掛けたのは、文字が書いてあるプレートだった




「…『ただいま準備中、開店は9:30から』っておい!何を店らしいことしてるんだ!今出て来ただろう!もう一回出てこい!」




店らしいというか、ここは一応立派な雑貨屋なのである。ただ、明らかに緊急事態っぽいのにいつもどおりな感じであしらわれた事に納得がいかない。ちなみに現在朝の8時である。この看板どおりに行くと、後1時間30分も待たなくてはいけない




「こらあああああ!いい加減にしろ!私の剣と盾!後は小物が入った袋を持ってるだろ!」




アナは未だに店のドアノブをひねり回しまくっている。アナは、どうやら自分の所持していた剣と盾、エトセトラをご所望のようだ。どうやらここで無くしたらしい




「私が気絶した際に奪ったのだろう!?おかげで隊長にも怒鳴られた!すぐにここに行きたいのに3日間の謹慎を食らった!分かるか!?だから一刻も早く返せ!」




アナは3日前、この雑貨屋で気絶をして目覚めたら騎士団の本部の医療部屋だった。語呂之介は、気絶したアナを、アナが所持している馬に乗せて帰らせたのだ。目が覚めた際、自分の剣と盾がないことに気づき、更に『死還者』への無闇な接触を行ったことにより、大目玉を食らった。降格などには至らなかったが、自分の装備品の管理の甘さと無鉄砲さのイメージが強くなってしまった




「おい!早く開けろ!開けないとドアを壊すぞ!」


「壊したら弁償してもらいますよ?」


「それが嫌なら開けろ!」


「表の看板の開店時間を見てください。なあに、後1時間28分待てば良いのですから」


「だから!私は急いでるんだ!いまさら店らしくするんじゃない!」




ドア越しにアナと語呂之介の大きな声での会話。さすがにドアを壊されるのはたまらないからか、応じることにした。だが、面倒なことになる前に普通はドアを開ける。のだが、語呂之介は普通じゃない




「いや、店ですよここは立派な。私はね、多めに働きたくないんです」


「働くとかそういうことじゃない!奪ったやつが何を言ってるんだ!」


「私は奪ったことは一度もないですよ?落ちたものだけ拾っているのです」


「話にならん!今からドアを壊す!」




話が進まないことにイラついたアナは、剣を取り出しドアの破壊を試みる。ちなみに今持っている剣は、紋章は入ってなく代わりに持たされたものである。代替機ならぬ、代替剣である。普段持っていたはずの剣と比べれば威力は劣る。だが、騎士として鍛えているため武器としては十分な威力を発揮してくれる。剣を持ち、振りかぶろうとしたその時




「お嬢さん」


「なんだ!?ようやく開ける気になったか!」


「壊そうものなら、お嬢さんの所持している剣と盾と小物入れに私の唾液や糞尿その他もろもろをぶちまけて、お嬢さんの悪評をある事ない事デマンド王国にぶちまけて来ますね?」


「………は!!?」




開けてくれると思っていたら、予期せぬ言葉が淡々と返ってきた。その言葉に、思わずドアを破壊する手が止まり困惑する




「ま、待て!後者は貴様の言うことなぞ国は信用しそうにないが、前者はやめてくれ!」


「映像を記録するクリスタルってご存知です?ドアを破壊したら、その映像を納めたクリスタルを国に持って行って見せてもいいんですよ。3日前の私をぶん殴った映像でもいいですし」


「う…」


「防犯対策をしていないと思っていたのですか?編集して鮮明に顔が分かるようにもしてます。私からクリスタルを奪う手もありますが、それでも構いません。それをしようものなら、私も黙っていません。お嬢さんが気絶したあのとき、何もしませんでしたが、今度は何かしてさしあげましょうか?」


「…(なんだこいつ、急に不気味なことを)」




アナは振りかぶった剣を降ろした。実力行使をすれば、難なく事は終わる。相手は一般人だから。だが、騎士団やギルドなどの国の大部分の住人は『死還者』と呼ぶ語呂之介を気味が悪いと、得体が知れないと思っている。アナはなかなか調査などをしない騎士団やギルドの者達に多少の苛立ちを覚え、調査に及んだのだ。今更ながら、語呂之介の淡々とした声に不気味さを覚え、冷や汗を流した




「…貴様はここを開ける気はないのだな?」


「表の看板読めないんですか?開店時間があるんですって。仮に騎士として、ルールも守れないんです?」


「ぐぎぎぎぎ…こいつ…」


「まあお待ちください、隠れはしますが逃げはしませんって。時間が来たら開けるんですから」


「…貴様のその言葉を信じると思うか?その通りにする保障もないだろう」


「信じぬ者は馬鹿を見ればよいZOY!」


「ぬぎぎぎぎぎぎぎぎ…!!」




隙あらば煽り、おちょくるのである。前回と同じように、歯軋りをしてあふれ出そうとする怒りをどうにかこらえる




「信じる心って大事ですよねえ。まあ私は騎士と思い込んでいるお嬢さんと違ってルールは守りますし」


「…なんだと!?言わせておけば!それに私は騎士と言っているだろう!貴様の言うことに合わせるのは癪だが、騎士として馬鹿にされるのはもっと許せん!!待ってやろうじゃないか!!」


「騎士としてでなく、人間としてルールは守りますよね普通は?常識的に考えて」


「貴様はいちいち一言多くないといけないのか!!?」




店側の言うことに従う道理はないと思いながらも、非常に納得はいかないが不本意ながら結局は待つことにしたのだ。何かうまく乗せられた感じはするが。後1時間23分、雑貨屋の前にドカッと座り、不条理さを感じイライラを抑えながら待つことにしたのだった




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