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知らない人には付いて行っちゃダメってパパが言ってた

くしゃみした後に、「あら、誰かが私の噂してる?」って言う人見たことねえ



「あ、もう喋っていい感じですか?」


「…貴様あああああ!!」




店内にて溜池語呂之介は、胸倉を掴まれ強制的に立たされていた。女性の騎士の歯軋りが聞こえてきそうなほどの怒りを顔に表し、睨みを利かせていた




「あーあー聞こえますって、うるさいですって。人の話を聞きなさいって」


「ぐぐ………いや…耐えろ…」


「えっと、知らないおじさんに付いて行っちゃダメってパパが言ってました。だから付いて行く訳ないでしょう」


「誰がおじさんだ!私は女だ!!」


「いや、見れば分かりますよ」


「ぬぐぐぐぐぐ………!!いや…ダメだ…耐えろ…耐えるんだ…」




煽り検定準2級クラスの言葉が、騎士に浴びせられる。実力行使に及びそうな衝動に駆られそうだが、耐える。自分に言い聞かせるように




「えー冗談は置いといて、お嬢さん。本当に王国の騎士なんですか?」


「はああ!!?そこからか!!?」


「いや、自分を王国の騎士と思い込んでいる一般人という線もあるでしょうし」


「この剣と盾に刻まれている紋章を見ろ!デマンド王国を現す紋章だ!」




そう言って、語呂之介に対して見せ付けてくる。騎士は確かな実力を持つ証として、その国を守るため、忠誠を誓ったものとして、国を背負う意味合いで紋章が持たされる。それは名誉なことである




「あー、借り物という可能性もありそうですが」


「あ゛あ゛!!?」


「…話進めましょうか。えっと、お嬢さんの名前はなんですか?」


「貴様に名乗る筋合いはない!」


「こちらは名前を教えたのに、自分は言わないんですか。そんな礼儀知らずな人に付いて行くのはイヤですねえ」


「貴様が勝手に名乗っただけだろう!容疑者には名乗らん!そんなヤツが礼儀を口にするな!」


「えっと、じゃあゲロマミーレ姫かビチグソ子のどっちかで呼んでもい」


「アナだ!!私はアナ・クッコ・ローセだ!私に対してふざけた呼び方をしようとするな!!」


「…ンフ」




騎士であることは間違いない。後は名前が分からないため、適当な呼び方をしようとしたら遮られた。彼女の名前は、アナと言うらしい。フルネームまで教えられ、そのときに語呂之介は歯を食いしばり思わず顔を背けた。きっと、尊厳溢れる名前に恐れを抱いたのだろう




「なんだ?」


「い…いや何も…」


「もういい!とにかく来い!今すぐ来い!!」


「あの…あのジャスコにバッグを…!」


「踏ん張るなあああ!!」


「ああもうしつこいチ○ポ!」




アナは、もうとにかく語呂之介の胸倉を掴み引っ張ろうとする。早く事を済ませたいからだ。だが、語呂之介も引き下がらない。体重をかけて、店内に留まろうとする




「このおおお!!」


「助けてえ!犯されるう!!逆レ○プされるううう!!同人誌では好きなほうだけどおおお!!」


「だ、誰が襲うか貴様なぞ!!さっきから品性の欠片もない!!」


「えい」


「ぶわっ!?臭っ!げほげほ!」




隙を見て、語呂之介は懐から瓶を取り出して中の青い液体をアナの顔にかけた。これに驚き、思わず手を離して顔を拭った。だが、残るのは形容しがたい独特な匂いと、着色料も真っ青の青色が顔に残っている。




「貴様何をした!?毒か!?けほ!」


「防犯用カラーボールならぬ、調合に失敗した粗悪ポーションです。大丈夫、微量ながら体力回復しますので」


「こんな色と匂いを残しておいて何が大丈夫だ!!くそっ!取れない!」


「うわっ!くっっっさ!!くっっっっっっっっっっっっさ!!!」


「…」




アナから距離を取っていた語呂之介は、ものすごく強調しながら盛大に臭がるアクションをした。この言葉を受け、アナの目は完全に据わり、爪が食い込みそうなほど右の拳を握り締め




「………だあああああ!!!」


「…あら?斬らな」




そんなに広くない店内、テーブルなどを隔てて距離を取っていた語呂之介の元へあっという間に跳んでいった。騎士として鍛えられたアナは、一般人とは明らかに違う身体能力を持って、振りかぶった腕で語呂之介の顎を力いっぱい殴りつけ昏倒させたのだ




「はあ…はあ…。ああしまった!手を出さないと決めたのにっ!ったく!」




床に倒れ、意識を失いノックダウンした。握った右腕がぷるぷると痛みと怒りで震えていた。騎士として、またはアナ個人の信条かは知らないが、無闇に手を出さないようにと決めていたそうだ。




「だが…これは仕方ない気がする…煽ったこいつが悪い…はあ…。気絶してしまったか…馬で運ぶか」




だが、ここまでおちょくられ、ここまで話を逸らされ引き伸ばされてきたのなら自業自得だろう。アナは自分にそう言い聞かせ、仕方ないねの気持ちで片付けることにした。アナは気絶してしまった語呂之介を抱え、店の前に待機させている馬の元へと向かった




「うつぶせで馬に乗せるか。起きてくれるなよ?絶対にめんどくさいからな」




王国の紋章が施された鞍を身に着けた、立派な馬だ。馬術もお手の物なのだろうか。アナが座る後ろに語呂之介を乗せるスペースは十分にある。馬も軽々乗せることが出来る。さて、いくら体を鍛えた騎士とはいえ、大の男を馬に乗せるのは少々力が入る。一度、馬の横に来て、掛け声を発して気合を入れる




「よし、乗せるか。気絶してるから重いな…。せーのっ!」




ひざを少し曲げ、抱きかかえている両腕に力を込めて語呂之介を乗せようとしたその時




「がっっ!!………!!?」




突然、顎に痛烈な衝撃が走った。何も考えることが出来ず、アナは何者かに殴られたように地面に倒れてしまった。受身を取ることも出来ず、意識を失い気絶してしまった。主であるアナが倒れてしまった事を、目の当たりにした馬はヒヒーン!と困惑して鳴いているようだ
















「…頭いてえ」




支えがなくなり、ドサッと地面に倒れた語呂之介は、いつの間にか覚醒して呟いていた。頭を抑えながらゆっくりと立ち上がり、困惑している馬をなだめる




「よーしよしよしよしよしよしよしよし!よーしよしよしよし!キミ、自分の主人を連れて帰れるかい?準備が出来たら、乗せて帰ってあげなよ」




そう言って、一度倒れているアナを見る




「珍しい、私を殺さなかったとは。ゲーッスッスッスッスッス!さあてどうしてくれようかあ!」




























「うーん…うっ!いたた!」




アナは騎士団の医務室のベッドの上で目が覚めた。痛みが走る頭を抑えながら、キョロキョロと辺りを見回す。何がどうなっているのか分からないという表情をしている




「………?あれ?私は?………あ!『死還者』は!?」




気絶をしてから覚醒後は、自身の前後の記憶がぼやけている。だが、徐々に思い出したのか語呂之介の所で意識を失ったことを思い出した




「ここは…騎士団のベッドか…。なぜ気絶したんだ私は…。え、どうやって戻ってきた………?」




だが、その後が不可解だ。なんせ、気絶していたときのことは思い出しようがない。とりあえず立ち上がり、部屋を後にする




「あ、アナさん!気が付いたんですね!」


「あ…ああ…すまんな」


「ああ、よかったです。隊長が気にかけていましたよ。報告した方が良いんじゃないですか?」


「隊長が?ああ分かった、すぐに行く」




部屋から出たところで、後輩に当たる若い青年の騎士に声を掛けられた。彼は、アナが気絶していたことを知っているようだ。それと、もう一言




「あの、ところどころ前のほうの髪の毛が青くないですか?」


「え?………あ!!」


「え!?ど、どうしました?」


「み、見るな!くそっ!!忘れてた!」


「ええー…」




青年の騎士はそれが気になり、アナに尋ねた。何のことか分からないといった様子だったが、すぐに心当たりに気が付いた。語呂之介により、粗悪ポーションで青くなった顔のまま歩き回るわけには行かない。アナはまず医務室に引き返して、壁にかけてある鏡を急いで確認することにした




「あいつ!恥をかかせる気か!青く………青く…ない?あっ!臭く………ない?」




しかし、青くなっているのは前髪などほんの少しの部分だけだった。顔は全く汚れていなかった。そういえば、独特な匂いを発していたポーションだった。それも思い出したのだが、匂いもしていなかった




「………どうなっている?」




アナは何がなんだか分からないという顔をしていた






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