あれ?…痛みが…遅れて…やってくるよ?
寒いのう、ヤス
ジャンルに限らずマジレスコメを打つ人って、シラけることを分かってるんやろか
あれ、ぜんっっっっっっっぜんおもんないやん!!
「おい!お前、腹立つのはわかるが、こいつが生き返るのを待たなきゃいけねえじゃねえか」
「あ!?いいだろうが!徹底的に精神を折らせりゃ、情報も吐くだろうが。ついでにナメたことを後悔させなきゃな」
「なにがついでだよ、後者の方だろうが強いのは。俺も魔法を試させろよ?」
「やれやれ」
右足と頭部を矢で貫通し、木に縛られた溜池語呂之介の死体を前に男たちは目的から若干離れつつある。ナメられることを極端に嫌う人間というものは一定数存在する。そのことが今回の結果を生んだ。争いは起こさず、穏便に済ませるのが賢い方法だ。だが、語呂之介が選んだのは遠回りな方法だ
「ぐううう!?ぐううえええあああ!?」
「あ!?」
「なんだ!?」
突然、縄使いの男が苦しみ始めた。まるで首を縄で絞められたような苦しみが襲う。縄使いの男は自分の首を触れて、苦しみの元を除こうとするも何も存在しないため無意味な動きだ。すると今度は
「ぐぎゃあああ!!?」
今度は、弓使いの男が急に倒れた。右足の大腿部を押さえて悶え苦しむ。ズボンは破れていないが、そこからは血が溢れ赤く染めていく
「はあ…はあ…おい!どうした!?」
「いでえええ!!」
「なんだ!?狙撃か!?どこにもいねえぞ!?」
唯一ダメージを受けていないのは魔法使いの男。縄使いの男は、首の締め付けの苦しみが収まったのか、呼吸を整える。足を撃たれた弓使いの男は未だに苦しんでいる。ここで、縄使いの男が
「おい!『死還者』を殺した矢がねえぞ!」
「あ!?どうなってる?」
右足と頭を貫通していた矢が、いつの間にかなくなっていた。男たちは見ていなかったが、矢はぼろぼろと霧散して消失していたのだ
「…野郎、魔法か?吊してやるよ」
未知数の力があるのかと思い、縄使いの男は、語呂之介の胴体の紐を切り首元に縄を絞めて木に吊るした。足と腕は人形のように力なく、だらんとしている
「これで下手なことは出来ねえだろ」
「それより大丈夫か!?しっかりしろ!」
「くっそおおお!!いでえ!!誰だ撃ちやがったのは!!」
何かに撃たれた箇所を両手で押さえるが、出血は止まらない。不可解な攻撃に困惑し、苛立ちを覚える
「ポーションがあったはずだ!」
「待ってろ!後は傷薬と消毒薬が」
「生き戻ったら覚悟しろよ『死還者』!!俺をナメたことを後悔させ」
倒れながら、弓使いの男はぶらさがっている語呂之介を見て叫ぶ。原理は分からないが、恐らく語呂之介がやったのであろうという観測。というか、怒りをぶつけれる相手がもう語呂之介しかいないからだろう。そのすべての言葉があと少しで届きそうなところで突然
「てが!」
首をガクッと震わせて黙ってしまった。弓使いの男の額に突然穴が開き、血液をだらだらと流し、あっという間に絶命してしまった
「………は?」
「…おい………おい!!!」
唐突に弓矢の男が、目の前で沈黙してしまったことに唖然とする2人。急すぎる場面に間抜けな声を出し、それから何がどうなったかを考えようとする
「…死んだのか?…おい!起きろ!!なんだ!?」
「…なんてこった、死んでやがる…。何が起きた!?」
頭は混乱を極める。人間、突発的なことに対して冷静に対処できたら苦労しない。ありえないと思っていることを受け入れるのに時間がかかるのだから。ここで、縄使いの男はぶら下がっている語呂之介を見る
「…こいつしかいねえな。こいつのカラクリを暴くぞ!てめえ、生き返れや!!」
そう言って、語呂之介の元へズカズカと歩み寄る。仲間が殺されたことの怒りもあるが、得体の知れない者にいい様にされていることに対しても怒りがある。だが、その究明をする直前に
「んぐ!?またか!?げあああああ!!」
「あ!?おい!」
またしても縄使いの男が苦しみ始めた。首元を押さえているが、何かで縛られているわけではない。目に見えない何かが苦しめているとでも言うのか。先ほどは苦しみから解放はされたのだが、今度は適わず
「げ」
糸が切れたかのように倒れてしまった。苦しみからは死ぬ形で解放された。大地に2人の死体が転がっていた。取り残された魔法使いの男は目を丸くして驚いた
「…お…おい…冗談だろ…」
転がる縄使いの男の元に近づき、首元などを触る。脈などが機能していなく、死体であるということを理解させられた。何が起きたかわからない、そう呆然としている男の耳に、言葉が飛び込んでくる
「ぐえ!きっつい!首がきつい!嵌頓○茎の痛みってこんな感じ!?」
「…は!お前!!」
「ちょ!縄ほどいてくれません!?さすがに何回も絞殺はいやなんですよ!」
語呂之介は自分の首にかかっている縄を両手でつかんで支え、魔法使いの男にそう言う。いつの間にか生き返っていた語呂之介の声が耳に届き、魔法使いの男は我に帰る。
「…てめえ。やったな?俺の仲間を。お前が人に頼める立場か!?いい加減吐きやがれ!!」
「あなた魔法使いでしょ!?蘇生させたらよろしいですやんか!それとも30まで童貞を守り抜いた名ばかりの魔法使いですか!?もうしょーもないわあ、早く降ろしてくださいって!」
「…」
魔法使いの男は、どう見ても生殺与奪の権はこちらが握っているのにも関わらず、余裕綽々、いや、本当に命の危機が分かっているかさえ怪しさを感じる語呂之介に絶句する。それから、無言で杖を構えて、睨む
「…どういう死に方が好みだ?何度も生き返るなら何度でも殺してやるよ。いや、死ぬと楽になるか?だったら瀕死に追いやろうか?」
「いやあ、拷問は自分がつらいだけですよ!?やめましょうって!それに魔力なさそうな顔してそうですし、無理でしょ!連続で魔法使うなんて!なんでもいいからとっとと」
「…燃えろおおおおお!!!」
態度を崩さなかった語呂之介に対し、魔法使いの男は切れた。ここまで恐怖を覚えないことへの苛立ちと気味悪さ。魔力を込め、周りの草木さえ塵に返しそうな炎の塊を飛ばしたのだった
「あー、せめて上手に焼いて欲しいなあ…」
迫りくる炎の塊を見て、語呂之介はくたびれた顔をしていた
「うわー、えっぐいな。ベスト5位くらいのキツさだったなあ」
全身火傷による皮膚組織の裂傷が激しい、魔法使いの男の死体が大地に転がっている。語呂之介は、首を吊られていたロープも木も全て燃え、地面に立っていた
「よかった、銀貨は何とか無事だった。後は、服をこの人らから頂こう。サイズ合うかなあ」
全て燃えたと言うことは、語呂之介の服も全て焼失してしまったのだ。体には傷のひとつも見受けられない。全裸で男たちの死体を漁り、もらえるものはもらう事にした。
「台車が燃えなくて良かった。さて、この人たちを王国に持っていくとなると、どうだろう。めんどうやな、物理的にも状況的にも」
3人の男の死体は放置することにした。比較的きれいそうな服を新しく身にまとい、台車に男たちの武装などを載せて家路につくことになった。表情は、いつものくたびれた表情に戻り、力を込めて台車を引き始めた。
「…頭のいい人たちじゃなくて良かった。はあ…後何十年生きなきゃいけないのかねえ」