現実時間で5か月ぶりにダンジョンの外に出ました
いい年して仕事を上手くこなせず、気づいたらあら不思議!こんなに遅く!
やめたら?この仕事(と執筆)
「おいは恥ずかしか!生きておられんご!!」
「出て早々何してんだあんた!!」
「うわあああああ!!早まらないで!!」
聖跡ヒヨード・リーゴエを長い時間をかけて脱出した一同。外の空気を気持ちよく吸おうとしたら、溜池語呂之介がダンジョン内で手に入れた剣で腹を貫いて倒れた。あまりにも突然なことに、ロエとベケスは後ずさりして驚いていた。
「んぐう、うーん、死なない。あの、どちらかこの剣で私をぶっ殺してくれませんか?」
「あんたイカレてんのか!?そんなことできっかよ!!」
「そうだよ!ゴロノスケのおかげで出れたんだから!」
「わーお、やっさしい」
そして当たり前のように復活した語呂之介は、剣を丁寧に柄を向けて渡した。だが、そんなこと聞き入れるわけがなく、更に後ずさりした
「いやあ、しかしなんだあ!人生ってわからないもんだな!生きた心地がほんとしなかったが!シャバの空気がうまいぜ!」
「本当に良かった、出れて…。でも、仲間のところに行くのやだなあ…。お宝はゴロノスケが手に入れたのなら、それは私が持っていくわけにはいかないし」
「とりあえず、この崖を登りますか。問題はこの魔女も含めてなんですが」
語呂之介は、ダンジョンのお宝や、他にも役に立ちそうなアイテムを回収した。さらに、ベケスを奴隷として利用していた、元主であるルナの遺体を抱えていた
「あんた、重いだけだろうに…。弔うわけでもないんだろ?なんで性悪女の死体なんて持ってきてるんだ」
「この人がもし高名な魔法使いなら、賞金が掛かってるかもしれないじゃないですか。ギルドに渡してきます。あ、ちなみにお金はあげませんよ?私のおやつ代にするんですから」
「いや、いらねえよ。遠慮しておくぜ…。あんた賞金稼ぎもしてるのか?」
「まあ、利用できるものは利用するだけです」
「でもどうやって登るの?私は飛べるから問題ないんだけど」
「こんなこともあろうかと!私はロープを崖の上に固定して持ちながら飛び降りたんです!」
「飛び降りた!?ンなことしたら死んじま…あんた不死だったな…」
ダンジョン探検は家に帰るまでがダンジョン探検である。無事に外に出られたはいいものの、ここは断崖絶壁のようなクレーター状の中央に位置する遺跡だ。語呂之介はキチンと帰路のことまで考えていたのだ
「あそこから飛び降りたんですよ。ほら、ロープが見えるでしょう?あれをよじ登って行きば、崖の上に行けますな」
「なるほど、用意周到なのはさすがだが…」
語呂之介は崖に沿って垂れているロープを指さす。その指すほうを見て、ベケスは希望に満ちた顔をしたがすぐにまた曇った。何故かというと
「長さが足りてねえじゃねえか!!」
「ウーン…あと半分以上足りませんでしたね」
「惜しくもなんともねえぞ!!どうすんだよこれ!!」
崖の上から垂れてはいたのだが、それはあまりにも短い長さだったからだ。風で悲しくひらひらとたなびいていた。
「ちなみにあなたはどうやってここに?地道に降りてきたんですか?」
「その性悪女の半重力魔法で降りたんだ。だが、俺には魔法の心得はないんだ…」
「この杖を使えば行けますかね?確か、『フワワワワワー!(ク○ちゃん風味)』」
ルナから奪取した魔法の杖をかざして詠唱を行ってみた。すると
「お?おおお!?マジか!?浮かび始めたぞ!」
「すごいよ!」
語呂之介が立っている地面から足が離れ、浮遊を始めた。その姿に2人は驚いたのだが
「無限の彼方へ!さあ行くぞお!!」
「…」
声の勢いはよいのだが
「無限のォ!彼方へェ!」
「…」
ある一定の高さで
「さあ行くぞォ!!ふう!ふうううう!!」
「おい、あんた…」
停滞しているのだ
「大丈夫です、気持ちでは勝ってますから」
「結果を伴えよ!!」
「実を言うと、私の魔力ではこれ以上無理でした。な、なんだってー!?」
「一人でツッコまないで!」
半重力や空中浮遊の魔法は、難易度が高いとされる。自然の理である重力に逆らうのは、そう簡単にはできないからだ。語呂之介は、魔法は限定的であるが使用できる。しかし、高度な技術を有してないからか、地面から30センチ浮かんだところで止まってしまったのだ。地面から飛び出そうとする威勢だけは良かったのだった
「なら仕方ありませんな。基本に帰り、ルートを見つけて地道に登りますか」
「おいおいマジかよ…。こんなの登れねえって」
「ね、ねえ、私飛べるんだけど。あなたたちを掴んで崖の上に行けるよ?」
「た、確かにそうだ!魔物ってのが不安だが、大丈夫なんだよな?」
「一緒に脱出できて、なんか放っておけないし。っていうかなんで飛べる私に対して、何も言わないのかなーって思ってたけど」
ロエが自分の能力を活かせると思い、崖の上に運んであげると提案してきた。ベケスはその提案にもちろん乗ろうとしたが
「このおばさん、もとい魔女を抱えるとなると中々しんどいですな」
語呂之介は一切聞かずに自分で崖を登ろうとしていた
「ちょ、ちょっと?私が運んであげるよ?」
「お気になさらず。そこのお兄さんと一緒によろしくしちゃってください」
「別によろしくはしねえよ!なああんた、ここで一緒に出れたのも縁だ。それにあんたは変わってるが、助けてくれたんだ。ここはひとつ、こいつの提案に甘えようぜ?」
「そうだよ。食料も食べれたし、人ひとり余裕で抱えて飛べるよ」
「…お嬢さんにメリットがありません」
語呂之介はロエの提案には一切聞く耳を持たない。腕を崖の突起部分にかけながら、地道に登っていく
「メリットって…。ゴロノスケが来て一緒にダンジョンから出れたんだもん!私も助かったんだからお礼がしたいんだよ」
「…あまり私に関わらないほうがいいです。…これ以上関わっていくと私は、お嬢さんとお兄さんを殺さないようにしないといけないって考えてしまいますから」
「な、何言ってんだあんた…?死にたいとか殺してくれとか殺さないようにとか、言ってることが滅茶苦茶じゃないか?」
「…意味が分からないけど、とにかくそっちから掴むよ?」
「うお!」
ロエは言ってることを理解する前に、ベケスの両腕を自分の足で掴んで崖の上に飛んで行った。魔物だからか、軽々と持ち上げていった。語呂之介は、少しだけその様子を見てまた崖を登り始めた。しかし、ダンジョンで手に入ったアイテムや、ルナの遺体を抱えて登るのは困難を極める
「いざとなったら突風の魔法を地面に向けて、その反動で崖に吹っ飛べるか試してみるか。人に当てないのなら、私は魔法を使えるし」
語呂之介は、死を伴うリスクをものともしない方法で崖を登ろうとも考えていた。他にも爆薬で吹き飛んで、崖の上に到達してみようかとも考えていた。地道なペースで登って行ったら、1日はかかってしまいそうだ
「はあ…本当に死ぬのも大変だなあ…。呪いかもしれないっていう状況しかわからず、人に不死の呪いですか!?って馬鹿正直に聞けないし…」
しかし、これまでも1人で大体のことはやってきた。いや、やらざるを得なくなった。ある時から、語呂之介は他人と関わることを極力避けるようになった。ほぼ無関心で、相手がどうなろうと知ったことではない。それが現段階で一番楽な生き方なようだ
「ジジイになって不死のままは、絶対に人体実験として利用されて逃げられなくなる。寿命以外で死なねば(風○ちぬ風味)」
自分の不死の呪いを利用する輩が増えないように、能力をペラペラと喋らないように生きてきた。世の中にはうまく利用する人物が必ず存在してしまう。また、語呂之介もむやみやたらに無差別にすべての存在に死んでほしいと思わない。死ぬ必要もない相手なら、こちらが関わらなければいい。だが
「よいしょ!」
「!」
この日はダンジョンで出会った、こちらに敵愾心のない存在がいた。その存在が、語呂之介の両腕をつかむ
「お嬢さん…私に関わるのは」
「何か事情があるんだろうけど、それは置いといて。私に任せればあっという間だよー?荷物と、気が進まないけどその魔女も運んであげるね?」
「(ここで暴れて落ちたら、このお嬢さんが死ぬ可能性もあるかもしれない…。はあ、助けさせてしまった)」
語呂之介は少し残念な顔をして、されるがまま崖の上に運ばれていった。荷物と魔女の遺体も無事に運ばれたところで、崖を上った先の広い景色が目の前に広がった
「ようあんた、運んでもらったんだな!さて、ここからどうするかだ。なあ、あんたはどこの国から来たんだ?俺は奴隷として引っ張り出されて、住んでた国を思う暇なんてなかったもんだから未練がねえ」
「…私は住んでないですが、デマンド王国が近いと思います」
「聞いたことあるかもな。せっかくだ、一緒に連れてってくれ!旅は道連れだ、新しくそこに住めたらラッキーだな!」
「なんかどんどん話が進んでいってますね…」
「頼むぜ!個人で行動するよりかは気が楽だし心強いんだからさ」
ベケスは、語呂之介とともに新たな地へと行動を共にするようだ。
「私もついて行っていい?」
「お嬢さんも?」
「戻ってもいいことないもん…。ハブられて、ダンジョンに行けって言われて…」
「人間以外にも集団内での闘争や格差みたいなやつがあるんだな」
「…お2人の境遇は別に興味はありませんが、助けてもらった分、返しましょう。肉壁くらいにはなりますよ」
「そんなことは別にしなくてもいいよ!?自分を大切にしよ!?」
「とりあえず、あっち方向へ」
「おう!頼むぜゴロノスケ!」
ロエも同じく、語呂之介に付いていくことを決めた。ダンジョン内で、そしてついさっき崖を登るのを助けてもらったため、何かしらの形で恩を返そうと語呂之介は思った。深く入り込まないように、関心は極めて薄かったが、一時的に、とても久しぶりに他者との行動をすることになった
ひどい不定期パターンに入りました
でもやめるときはやめるって言います