もうちょっとでこのダンジョンから出る、てか早く出したい
あけましておめでとうございます(遅漏)
「………え?」
「お…おい!!首輪が!!」
「外れたぞおおおおお!!!なんでだ!!?」
「きっとあの女が気絶か死んだりしたんだ!!やったぞおおおおお!!」
「長かった………自由に動ける………」
「もう捕まらねえ!この場は協力して脱出だ!」
「異議なし!いくぞ!!」
とあるどこかの建物にて、奴隷となっていた人間たちが解放され一斉に脱出した出来事が発生した。その奴隷主は、そのことを確認することは叶わなかったそうな
「さあて、武装はどんどん解除しちゃおうねえ~」
溜池語呂之介は、魔法使い兼奴隷の主である倒れたルナの、武装解除しちゃうおじさんになっていた。ルナは自分が語呂之介に放ったはずの魔法を自分で喰らい、大量の血を流していた。まだうっすら脈を打っているが、文字通り血の気が引いて意識を失っている。このままいけば失血死するだろう
「お…おおお!!!よっしゃあああ!!隷従の首輪が取れたぞおおお!!はっははは!ざまあみろ!!俺はもう自由だあああ!!!」
「リードが外れた犬の気持ち」
「あんたのおかげなんだろ!?助かったぜ!ずっとこいつの言いなりでもうダメかと思ったよ!」
奴隷の男は大層喜んでいた。いつ死ぬかわからない役目を無理やり負わされていたため、解放されたことに高揚するのは当然のことだ
「なんとか終わったの…?ねえ、ゴロノスケって戦わないの?」
「そ、そうだ!ハーピーがまだいた!お、お前!ようやく俺は解放されたんだ!ここでやられねえ!あんたも協力してくれ!こいつを倒す!」
「ちょ!ちょっと待って!私は襲ったりしないよ!むしろ私だってここから出たいのに!」
そんな2人の間にハーピーのロエがやってきた。様子を見て出てきたのだが、奴隷の男から見たら、新しい魔物がやってきたという認識でしかない。当然警戒して、懐に忍ばせていた短剣を構えた。それを見て、ロエは戦う気は一切ないことを必死でアピールする
「口ではそんなこといくらでも言えるだろうが!襲ってこないモンスターなんているわけねえだろ!」
「ゴロノスケ!この人誤解しているよ!違うって言ってよ!」
「ここで会ったが百年目!男同士、私も協力しますよ旦那!」
「あんたいいやつだな!よおし!」
「なんでそっち側についてるのおおお!?聞いてってばあああああ!!」
「ううう、ひどいよおゴロノスケ…。本当に襲ってないのに…」
「しかしまあ、珍しいこともあるもんだな。モンスターなんざ討伐して当たり前なんだが」
「大体はそうだと思うけど、みんながみんな、襲ってくる訳じゃないよ」
「そうですよ!例えモンスターでもまずは相手の気持ちを汲み、話し合えるのなら友好的に接することが大切なのですよ!力任せに倒すことが必ずしも正しいとは限らないのですよ!(握りこぶし)」
「さっきのノリでこっちは危うく討伐されかけたんだけど!?」
一命を取り留めたロエは少し涙目でツッコミを入れていた。奴隷の男もいまだ信じられない様子なのだが、もう武器となるものはしまっている。ちなみに、首輪をされていたときは武器を取り出したりすることが出来なかったようだ。武器を手に取ろうとしても、首輪がそれを察知し、痛みを与えていたそうだ
「助かったけど、あんた変わってるな…。なあ、あんたはゴロノスケと言うのか?俺はベケスって言うんだ。運悪く、あの性悪女魔法使いに捕まっちまって、コキ使われてたんだ。いつ死ぬか分からない状態で、本当に助かったよ。ありがとうな」
「むしゃむしゃ、それはラッキーでしたね」
「あ!何を食べてるの!?」
奴隷だった男は名を明かした。彼の名前はベケスという名前で、彼以外にもルナの奴隷として捕まっていた人たちは他にもいるそうだ。とても軽い様子で聞いている語呂之介は、何かを食べながらあぐらをかいていた
「この女性が持っている荷物の中に食い物がありましたわ。いやあ、奴隷に任せて自分はぬくぬくしていたとは。とりあえず食べます?人間、食わなきゃやってられないですよ」
「そうだな!祝い事としてありがたく頂くぜ!」
「わ、私も!お腹空いててもう限界なの!」
「…うーん、タダであげるのは、そうですねえ、えっとお、何をしてもら
「もう!イジワルイジワル!!さっきまで私追いかけまわされたのに!!」
「アッハイ、どうぞ」
ルナから頂いたのは装備、装飾品、武器になり得そうなもの、その他にもまさに自分のためだけと思われる食糧もあった。パンや果物をかじりながら、ベケスとそろそろ泣きそうなロエにも食料を渡した
「おーーーいしーーーーー!!」
「しかしあんた、不死って言ってたが、回復もできるのか?明らかに切り刻まれてたのに、もう治ってやがる。それに、どうやってあの女を倒したんだ?反撃した素振りなんて無かったよな?」
「まあ、向こうさんのプライドが高く自信に溢れててよかったって話ですよ」
「どういうことだ?」
「どうもこうも、そういうことです」
「…言いたくねえってことか」
「んぐ、ずっと喋らないよね?なんで?もぐもぐ」
「ケチだからですね」
腰を落として、3人は食糧を口にはこぶ。特にロエは、久しぶりの食事に感動し夢中でがっついていた。ベケスは、これ以上聞いても話してくれないのかと察したのか、詮索はしなかった
「なあゴロノスケ、あんたこれからどうするんだ?」
「ダンジョンの奥のお宝を探します」
「俺としては非常に帰りたいとこだぜ。ここはトラップが多すぎる」
「むぐぐ、わ、私も!食べ物も食べれたし、力も出せる!あとは慎重に帰って戻ろうよ!ごほっごほっ!」
「とりあえず落ち着いて食いましょう。まあ、お2人で戻って下さい。この魔法使いは、やはり用意がいいですね。地図もしっかりもってますし、これを使わせてもらいましょう」
ちなみに語呂之介も地図をギルドからもらっていたのだが、ダンジョンのトラップにより紛失してしまった。地図は、100%すべてを記しているわけではない。まだ未知の道や、発覚していないことだってあるため、新しい情報は常に募集されている
「なあ、助けてくれて本当にありがたく思ってるんだが、悪いことは言わねえ。戻ろうぜ。お宝があるかどうかも怪しいんだぞ」
「そうだよ!いつ死ぬかわからない場所なんだから、戻ろうよ!」
「そんなことわかってますよ。それに、死ぬんじゃなくて『ちゃんと』死にたいんです」
「お、おいおい…不死なんだろ?求めて死にたいのはおかしいだろう?」
「何を言われても行きます。食い物はどうぞ差し上げます。これ以上食っても、死んで中身をぶちまけることになりそうですし」
「食欲なくなる発言!!」
「なんでそんなに躊躇しないんだ…行っちまった…」
語呂之介は、2人を置いてダンジョンの奥へと再び進んでいった。取り残された2人は、お互いに顔を合わせて、それから瓦礫の山と化したゴーレムの残骸と、倒れているルナを見た
「なあハーピー。お前、ゴーレム倒せるか…?」
「無理!」
「俺も無理だ。これ、俺らだけで帰れると思うか…?」
「自信ない!」
「俺もない」
「…」
「追うぞ!」
「同じこと考えてた!」
戦力分析、ダンジョン内の脅威、それらを考え、遅れて立ち上がって語呂之介を追うことにした。よく考えたら、地図を持って行ってることにも気が付いた。強敵に対して一番可能性のある語呂之介と再び行動を共にするのであった