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アン〇ンマン!新しい奴隷よ!

どんな漫画やアニメでも流行ったとき、それにちなんだフレーズを書いただけで、〇〇キッズって括る必要ある?荒らしコメより全然良いじゃん。寒いとはたまに感じるが






「親方!!空から重石が!!」


「いやあああああ!!避けてえええええ!!」




あれから、厄ネタ吸引機のごとくトラップに引っ掛かりまくる。溜池語呂之介は文字通り、「粉骨砕身」してゴリゴリとダンジョンを踏破していく。そのたびに、付いてくるロエは気が気でない




「…ぶはあ。あー、ところでお嬢さん。よく叫びますね。なんでそんなにうるさいんですか?」


「うるさいで片づけないで!?だっていちいち目の前で死んでたら心臓に悪いよ!なんで避けないの!?痛みがないの!?」


「痛いに決まってるでしょ、人間なんですから。悪口ですか?」


「いや、違うから!この状況でそんなこと言わないよ!じゃあ避けようよ!」




目の前でグロい光景を目の当たりにしたら、誰でも気が滅入る。そんなものに慣れるのは、よほど血生臭い環境で育ってきた者だけだろう。語呂之介は、進んで痛みを求めるドMサイコ野郎ではない




「…めんどくさいんです、もう」


「え?」


「…行きましょう」




一瞬見せた、もう心底めんどくさい、諦めたような表情。何が来ようと避けない語呂之介は歩みを止めない。ロエは少しその表情に驚きながらも付いていく




「ん?」




その時、語呂之介とロエの後ろで、岩がこすれて石が砕けるような音がした。パキパキと音を鳴らし、巨大な何かがゆっくりと動き始めた
























「どこかでトラップが動いているというわけか?誰かがいるのかもしれないね」




女魔法使いと、その奴隷として前を歩かされている男にも、どこかで作動した罠の振動や音が届いているようだ。無機質で開放的ではないこのダンジョンで、それらは不安に感じてしまう




「…気味が悪いな。こんな場所に誰かがいるって?」


「かもしれないって状況だねえ。なら急ぐとするか。あたしが早くお宝を頂かないと来た意味がないからね」


「お、おいおい…!前を歩いてるのは俺だってのに!そんなことしたらあぶねえってのに!」


「だからその為の奴隷だろうが!おらあ!」


「ぐあ!うぎゃああああああ!!」




奴隷の男は、女性魔法使いに蹴り飛ばされて、開けた空間に放り出された。すると、横から鋼鉄製の針が飛び道具のように飛んできて男の体に突き刺さった。




「だからこうやって安全確認をするのさ。あたしが危なくないようにね。ほい回復」


「はあ………はあ………いてえ…」


「なんだい、そんな顔して。あたしの回復は本物なのに疲れた顔して」


「(当たり前だろうが…こいつ…どうにかなんねえか…)」




もう奴隷の男は口に出して抗議をすることもなくなった。言ったところで逆らえない、もっとひどい目に遭うからだ。回復は確かにしているが、精神的な部分までは治らない。あくまで肉体だけだ。疲労もそのままだ




「しかしまあ、もっと人数を連れてくれば良かったな。それか屈強な奴だな。もうこいつ、表情は曇ってるし、なんか消極的だし」


「(当たり前だろうが…!!)」


「はあ、いっそのことゴーレムとかを使役したいけど、生物ではない無機質な奴だからなあ。トラップを探知できないしねえ」




この女魔法使いは、まだ奴隷なる者が何人かいるようだ。使いつぶしては補充しての繰り返しで、さまざまなダンジョンなどに赴いている。そこにはまったく罪悪感も何もない




「(くそ!もう嫌だ!早く宝見つかれ!それか誰か来い!)」


「…んん?なんだこの音は?それに地鳴りもしているね」


「!?」




2人は何か大きな音と、ダンジョンを揺らす振動に気が付いた。怪しい音と振動に足を止め、注意深く観察する。すると




「うわ!?」




目の前から、大きなゴーレムが床を踏みしめながらゆっくりと着実に歩み寄ってきた。さらに、宙には放物線を描いて人が飛んでいる




「おっと、こいつは…」




それは、ズタボロになった男、語呂之介の死体が2人の目の前に吹っ飛んで、地面に勢いよく落ちて転がってきた。




「ゴロノスケ!!もう見てられないよ!」


「うわ!?なんだこの男!?死んでやがる!?それになんだ!ゴーレムにハーピー!?」


「おそらく、ゴーレムに殴られてぶっ飛ばされたってところか?にしても、ハーピーはともかく、本当にゴーレムが来ちまったねえ。厄介な」




ダンジョンを構成する無機質な白い石で構成されたゴーレムは、語呂之介を殴った際の右腕が血に染まっていた。ロエは殴り殺された語呂之介を悲痛な表情で見ていた




「お前、ゴーレムを倒せるかい?」


「無理に決まってるだろ!!?」


「ちっ、今回ばかりはお前をぶつけるわけにはいかないね。仕方ない、魔法で仕留めよう」




ゴーレムは生物ではない。魔力を動力にして動いている。石の鎧の中心に存在する、魔力で出来た心臓のようなものを壊さなければいけない。女魔法使いは、仕方なく奴隷を温存して攻撃魔法を唱える




「『ゴウ・ガンフーソン』!」




矢のように鋭く飛んでいく緑色の光の魔法。まっすぐにゴーレムの中心をとらえて衝突する。しかし、その魔法は弾かれて四方に飛び散った。まるで撥水性物質が水をはじくように。




「なに!?弾いた!?このあたしの魔法が!?」




ゴーレムの倒し方は、石を砕くほどの強力な魔法を唱えなければならない。しかし、このダンジョンの石が特別なのか、魔法が流れるように霧散した




「お!おいおい!明らかに傷がついてないぞ!」


「ちィっ!黙ってな!ゴーレムごときに遅れをとるあたしじゃ




魔法面が素人な奴隷の男が見ても、ゴーレムに目立った損傷が見られない。魔法に自信があったような女は、少々苛立っていた。もう一度魔法を打ち込もうとしたとき




「!?」


「うお!なんだ!?」


「きゃっ!?危な!!」




ゴーレムが急に崩壊をはじめ、それから宙を飛び始めた。少し後ろを飛んでいるロエに迫ったので、驚きつつも避けた。放物線を描こうとしたのだが、巨体ゆえに天井にぶつかり、やがて原形を留めずに機能を停止した。ただの無機質の石の山となった




「き、急にぶっ飛んだぞ…どうなってやがる…。しかも、動かねえ…」


「く、くく!はっはっはっはっは!」


「な、なんだいきなり…」


「どうだい!見たか、あたしの魔法は!あたしの魔力にはゴーレムも形無しだねえ!」


「いや、明らかに手ごたえが無さそうだったのだが…」


「まあまあ、本人が気持ち良ければいいでしょ。適当に褒めておきましょうよ」


「そ、そうだな…。あんたの言うとおりだな。余計な事言うよか…




女魔法使いは、自身の魔法でゴーレムを打ち砕いたと信じてやまない。タイミング的にはそのように見える。それと同時期に、蘇った語呂之介もいるのだが




「うおおおおお!!?あ、あんた!?なんで立ってるんだ!?」


「なんだいお前、うるさいねえ。って…」


「なーに驚いてるんですか。さあ、私は奥に用がありますのでこれで」


「…ちょい待ち」




語呂之介は非常に軽いノリで挨拶をして、それから再びダンジョンの奥地へと歩みを進めようとした。それを見て、魔法使いの女は声は静かだが明らかに驚いていた




「はい?どうしました?」


「…お前さん、もしかして不死身か?明らかに死んでいたね?」


「いえ、んなわけないでしょ、ハハッ。そんなファンタジーじゃあるまいに。それでは」


「『コウ・ソック』!!」




語呂之介がそそくさと適当にはぐらかして再び歩こうとしたが、やや興奮気味に呪文を唱えた。伸びた光が、語呂之介の首に蛇のように纏わりついた




「あ!ゴ、ゴロノスケが!」


「あー…あんた気の毒に…。俺と同じ呪文を…」




咄嗟に隠れたロエは、その様子を遠巻きに見るしかなかった。奴隷の男は、同情の目を向ける。魔法使いの女は、ハーピーのことなど頭から抜け落ちているようだ。そして、実に楽しそうな顔で語呂之介に告げる




「とうとう見つけたよ!!理想的な人材が!!お前、あたしの奴隷になれ!!」


「…まだ猗○座殿の勧誘のほうが可愛げがあった」




語呂之介の首には、奴隷の男と同じ首輪がいつのまにか付いていたのだ





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