お偉いさんの会話なんて知るわけないだろ
あけましておめでとうございます(遅漏)。長いこと空いてしまいました。申し訳ありません。これはもう物書きとして失格なのでは?
時は少々さかのぼる。溜池語呂之介が盗賊団『ハイエーサー』のボス、ワーゴンをギルドに引き渡し、そのワーゴンから情報を得た。その2日後
「騎士団からは以上であります。これが新しく判明した『死還者』についての情報です」
「なるほど。わかった」
デマンド王国の騎士団長が、政府の役人に対して報告をしていた。ここは城の内部のとある一室。ギルドや騎士団などの『長』たちが集まっている。『死還者』についての新たな情報を皆は聞いていた
「これが本当ならば、この『死還者』に対して武力行使を行わない限り、我々には被害は及ばないということになる」
「どこまで本当かはわからないが、その線でよさそうですね」
「しかし、それだとこれは厄介なものだ。本人は攻撃されても、攻撃したほうに被害が返ってくる。しかも本人は死なない。おまけに『死還者』自身が戦闘を仕掛けるとなると手が付けられない。きわめてタチが悪い」
「だが、今のところその特性か能力か、それを活かして犯罪行為をしたことはないそうだ。本人はなぜか消極的な動きをしている」
「幽閉すべきか、国外追放をすべきか…」
「いや、逆に利用できそうな部分はある。今まで通り犯罪者を死滅させている点は評価できる。それを利用すれば、死刑囚をこちらはリスクなしで処刑することができる」
「『死還者』に勝てば死刑は免れる、とチラつかせてか?」
「悪趣味な…。だが、闘技場みたいなシステムでは客を湧かせそうだな。倒したと思ったら逆転した、ということも出来る」
「利用価値はありそうだな…。確実な情報を増やしていきたいところだ」
それぞれが、『死還者』である語呂之介をどう利用するかという会議をしている。厄ネタである存在を、どう扱えばよいか、その議題は尽きない。だが、今回はワーゴンが辛うじて喋った情報は有用なもののようだ
「…騎士団長」
「はい!」
「君の部下の中に、なかなか元気な者がいるそうだね。確か『死還者』に接触し、剣を紛失したと聞く」
「そ、その節は大変申し訳ございませんでした!」
「いや、責めてるわけではない。どうだろう、その者に調査を任せてみてもらえないか?」
「アナにですか?」
「ああ。最初は無鉄砲なことをしたと思ったが、今も健在であり、剣も戻ってきたのだろう?しかも剣は『死還者』が持っていたと聞く。売るとか素材にするとかもせずだ。話がわかるかもしれん。こちらから危害を加えず、襲ってきたとしてもアナとやらも腕が立つだろう。要は過度に干渉しなければいい。さらなる情報を持ち帰ってくれ」
「わかりました。話を伝えておきます」
「…ちょっと何言ってるかわからないですね」
現在、語呂之介は頭にハテナマークを浮かべていた。突然アナから、あなたを監視します宣言が飛び出したからだ
「分かれ!貴様はこの間も商人と一悶着あったろう。上からの指示で、貴様の動向を監視しなければならない。不本意だがな」
「やらなきゃいいのでは?」
「そんなことできるか!私は国のために、騎士として任務を全うする」
アナが言ってるのは建前だ。もっともらしいことを言い、目的は別にある。
「(さすがに能力を探るためとかは言えないな)」
「(おそらく私の呪い目当てなんだろうな)」
お互いに思っていることもある。口には出さないが、アナは語呂之介の更なる実態調査。当の本人の語呂之介は、その目的を勘づいていた
「…(私の身体能力では騎士には勝てない。撒けそうもないか)」
「それで、貴様はこれから何をするつもりだ。さっきから黙っているが」
「まず、あなたはどこまで監視するんですか?」
「まあ、このデマンド王国内なら警備も兼ねて付いていくつもりだ。それに、何か依頼の際には私も同伴すれば効率も上がるだろう(戦闘を見させてもらうのが目的だが)
「…(呪いを見るためか)。私の店にも来るんですか?」
「足繁く通うのは困難だ。それは余裕があればだな」
「…」
アナにはアナの生活があるため、国外まで出て活動はさすがに支障が出る。過度な干渉も控えるために、そのような行動を取るようだ
「さて、話は変わるがこの間のリンカとアオカだったか。あの2人にはあれから会ったのか?どうも貴様に聞きたいことがあるらしいし、私も聞きたいことがある」
「ああ、先ほどお姉さんには会いましたね。ビンタされましたので逃げましたけど」
「は!?なんだと!?貴様、避けたりとかしなかったのか!それになぜ逃げるんだ!」
「え?普通逃げません?だって暴力振るわれたらそうでしょ。なぜ逃げるってなんですか?」
「あ…いや…」
「それに避けなかったんじゃなくて、避けきれなかったんですよ。あなたが殴ってきたときみたいに早くて。うわあ、やっぱ暴力振るう人って考え方がおかしいんですね。こわ!こっっっっっわ!!」
「そこまで言うか!!大体そうやって煽るから貴様は!」
前にアナと語呂之介は一悶着あった。結果的には何も失ったりしてはないのだが、語呂之介が煽ってアナが殴ったということがあった。語呂之介がまた煽っていたのだが、ここで誰かが2人の元に走ってくる
「あ!いた!はあ…はあ…」
それは、先ほど話に上がっていたリンカだった。一度逃がした語呂之介に再び出会ったのであった(ここダジャレ)