RPGモノで武器を売るのは慎重にやらねばならない
仕事が忙しくて、なかなか書けなかったという言い訳をここに書かせていただきます。こんなクソつまんない普通のことを書いて申し訳ありません
「腹減ったなあ…」
溜池語呂之介は、デマンド王国の中をのんびりと歩いていた。今回は台車を引いておらず、大きな荷物を背負っていた。その行き先は
「メシは後にして、とりあえず武器屋かなあ…」
語呂之介はそう言って武器屋である『ゴーゴーズ』へと向かった。そこではドワーフの主人が良品質で粋な武器を揃えてくれているのだ。がちゃがちゃと音が鳴るカバンを背負いながら、店内へと入ることにした
「らっしゃい!お、ゴローじゃねえか!もしかして、良い素材を見せてくれるのかい!?」
「どうも主人。相変わらずお元気で、こちらが申し訳なくなりますね」
「何を謝ることがあるってんだ!おかしなやつだな!」
この主人はビグディク豪快という言葉がふさわしいドワーフの屈強な男。忌み嫌われている語呂之介に対して、変わらず接してくれる稀有な存在だ
「(やはりこの主人は私にヘイトを向けない?人それぞれなのかなやっぱり)」
「ん?どうしたんだ!?今日は何の用だ!?」
「あ、そうですね。武器の鑑定をお願いします」
「あいよ!任せときな!」
語呂之介はカバンから、様々な場所や悪党達が『落とした』武器や装飾品をテーブルに並べていった。ナイフや剣、革製品、首飾りや指輪といったアイテムを見て、ビグディクは楽しそうな顔をした
「ほう、なかなかな量だな!」
「多すぎますよね?でも、よろしいですか」
「あったり前よお!このビグディク様に任せな!少し待ってな!」
嫌がりそうなものなのに、快く受け入れてくれた。それから、武器などを一通り手に取り、隅々まで見ていったのだ。その間、語呂之介は店内を歩き武器の類を見て回った。ここには、冒険者が必要とするものが一通りそろっている店だ。武器である剣や弓、魔法使いの杖。身を守る盾や鎧。機動性を守る靴などがある。細かな意匠が施された装飾品まである。冒険者として旅立つなら、ここで十分事足りそうだ。噂では、非常にレアな物もあるそうだが、それは店主のご機嫌次第だそうだ
「(…無いか。呪い関連のは)」
「おう!待たせたな!なら、一通り説明していくぜ!」
「わ、早いですねえ。Amaz〇n Primeより早いですね」
「あまぞ…なんだ?」
「いえ、なにも。では、お願いします」
ビグディクは、語呂之介が持ってきたアイテムを説明していく。知識も相当なもので、この人何が知らないの?というくらい博識であり器用だ。語呂之介は武器や装飾品の、特に『付与効果』に耳を傾けていた。しかし
「以上だな!どれも悪くないが、このビグディク様が作ったほうが遥かに良い代物ができるだろうよ!まあ、持ってれば暖をとれる指輪と、幾分か能力強化をしてくれる剣くらいか?あとは基本に忠実な道具だぜ?」
「そうですか。…呪いに関するのはないですか?」
「いーや、なかったぜ?それに関しては、禍々しい土地や環境が影響することが多いぜ?それか魔族の魔力を凝縮させれば呪いは付与されるな。そんな簡単なものじゃねえけどな!」
「呪いを断ち切るものとかは?」
「おいおい、そいつは伝説級とまではいかないが、かなりのものだぜ?魔を祓うとはまた違ってな、呪いは凝り固まった怨念みたいなものだ。よほど強力な聖魔法くらいでないと解せないな。それを武器に付与するとなると、とてもじゃねえが簡単とは言えねえ!」
語呂之介は、まあ仕方ないかという顔で納得した。呪いに関しては様々な諸説、分析がされていると思うが、少なくとも神からの祝福、という名の呪いである。解呪ができればと思っているのだ
「ありがとうございました。それでは、武器は売らせてください。それと、これを下さい」
「おう!にしてもよお、いらねえのか武器?得物が持たねえなんざ自殺行為だぜ?おまけに、それは刃を潰した剣の形をした鉄だぜ?」
「いいんです。どうせ使えないんですよ武器は」
「どういうことだ?って言っても教えてくれねえんだろ?」
語呂之介は鋭利な剣、鈍器、飛び道具などをすべて売り、手元には残さなかった。代わりに、身に着けれそうなものをいくつか手に入れた。語呂之介は、その理由もしゃべらなかった。が、ビグディクは特に詮索もしないようだ
「申し訳ないです。知ってもロクでもない情報ですから。必ずめんどくさいことになります。特にあなたのような良い人は」
「ガッハッハ!褒めても何も出ないぜ!?」
「すいませんね、私のせいで客足も減ったでしょうに。買えるものは買わせていただきます」
「小せえこと気にしてたらデッかくなれねえぜ!?このビグディク様はそんなことにゃあ屈しねえぜ!」
「はは、敵いませんね。あなたには」
こうして、武器などを資金に変えて店を出ることにした。懐がいくつか温まり、次にメシを食いに行こうとした
「さて、どこで食おうかな。まあ、私に選ぶ権利なんてないけど」
煙たがれるわけだから、店選びも難しい。屋台でさっと買って終わらせるのが定番だろう。そうと決まれば、賑わっていそうな国の中央に向かおうとする。忌み嫌われてるのに、人が多い場所に行くとはおかしいと思う皆さん、正常です。
「あ、あんた!見つけた!」
「………ん?」
その時、ある女性の声が聞こえた。語呂之介は振り返っていないが、それは、少し前まで生きた心地がしなかったリンカの声であった