見たまえ、これが有無を言わせぬ取引だ
無断転載じゃないんですか?っていうコメントほど知らんがなってものはない
個別にメールして、どうぞ
「アオカ、どうか無事でいて…。お願い、騎士さん…」
盗賊団『ハイエーサー』に拉致されたアオカの姉のリンカは、自分の家で手を組んで祈っていた。家はお世辞にも綺麗とはいえず、狭苦しそうだ。どうやら王国騎士団の誰かが、報酬を満足に払えないと分かっていながら救出に向かったそうだ。物好きか、お人好しか、そんな人物がいたことに心から救われた気持ちになった
「…」
リンカは同行しなかった。いや、出来なかった。武器を使って戦うことが出来るようだが、騎士には敵わない。少しでも危険な目に遭わないように、自宅で待つように言われたのだ。当然一緒に行きたかったのだが、はやる気持ちを抑えて仕方なく待つことにした。後は、早く妹の姿を見たい。ただそれだけだった
「オオカミさん、いらっしゃ~い!(桂〇枝風味)」
「いやいやいや!呼んじゃダメでしょ!?静かにしてください!」
『ハイエーサー』のボス、ワーゴンを乗せた台車を引く溜池語呂之介と、その後ろを必死についてくるアオカが森を歩いていた。ワーゴンは、原因不明 (?)の攻撃により、手首と足首から上を失い、さらに腹部を何度も猛烈に踏みつけられたような衝撃を食らい、ぼろぼろの姿になっていた
「お嬢ちゃん、まだついて来るんですか?アジトにいなさいって」
「ひ、一人は怖いんです!誰かと居たほうがまだいいんです!」
「不用心ですね。お嬢ちゃん、先ほどまで、このおっさんに何をされかけたか覚えてません?」
「え、そ、それは、その、あの…」
アオカは、自分がされたかもしれない痴態は頭に浮かんでいた。だが、いきなりこんなことを聞かれたら言葉に困る。少し困惑して、頬を赤らめる
「そう!強姦、レ〇プ!すなわち不合意のもと行うS〇Xですね!」
「きゃあ!なんではっきり言うの!?」
「具体的にどんな行為かと言うと、まず服を」
「聞きたくないですから!!」
しかし、頭に思い浮かんでいたことを、語呂之介は大変涼しい顔でそう言った。何も悪びれることもなく。アオカはさらに顔を赤くして大慌てだ。まだ喋ろうとする語呂之介の言葉に自分の耳をふさいだ
「もう!何言ってるんですか!」
「私が安全という保証はないんですよ?お姉さんからロクなやつじゃないと聞かされてるでしょう?」
「…それは、今はそれどころじゃないし。え?私にお姉ちゃんがいることを何で知っているんですか?」
「ほら、引きましたね?それじゃあ!」
「いやいやだから待って!」
こんな調子である。隙あらば、アオカを置いて早足で行こうとする。アオカはもう選べる相手も余裕もないため、誰であろうとついて行く選択肢しかないようだ。語呂之介は、後ろをちらっと見て、また前を向いて歩く
「(やはりあのオレンジ髪のお嬢さんが言っていた妹とはこの子か)」
「わ!き、きた!オオカミ!」
「ん?あー…めんどくさ…」
アオカが遠くからオオカミがやってくることに気がついた。この森のみならず、広く分布しているオークリーオオカミである。機動性は言わずもがな、凶暴な牙が目立つ。アオカは非常に怖がり慌てているが、語呂之介はめんどくさそうな顔をした
「んー、お嬢ちゃん戦えないんでしたっけ?」
「無理です!!」
「んー、どうしたいですか?」
「『死還者』さん、強いんでしょ!?助けて下さい!」
「強くないです。ですが、それは依頼ですか?もし生き残れたら何かくれます?確実性はないですが」
「え?え、え!?こんな時に何かってそんなの!」
アオカは当然助けてほしいと言った主張をする。だが、語呂之介は関係ないと言った様子で、知らんがなと言った態度で接した。
「私はどっちでも良いんです。お嬢ちゃんを助ける義理もないです。ほら、どうするんですか?はよ考えて自分の口で言いなさいな」
「わ、わかった!わかったから!!お金は稼ぎます!!」
「うい。ヘイトマシマシ」
それから、もう考えている暇も無いからか、アオカはやけくそ気味で語呂之介に助けてもらうことを見返りつきでお願いした。それを聞いて、語呂之介は謎の言葉を発し、台車とアオカを置いて前に歩いて行った。
「えええ!?ちょっと!どこ行くの!?」
「気休めですが、台車に入ってて下さい。あと、こいつをどうぞ」
溜池語呂之介は歩きながら後ろを見て、アオカに何かが入った袋を投げた。それをアオカは慌ててキャッチする
「こ、これは?」
「オオカミが嫌う煙玉です。嫌な臭いを発します。我慢して下さいね?死ぬよりは良いでしょ?」
「は、はい!」
「3匹か…。近づいてきたら足下に投げて下さい。あと、私の方に纏わり付いたらこちらにもお願いします」
アオカには、オオカミ以外にも人間にとっても嫌な臭いを発する煙玉を3つほど渡した。アオカは言われたとおりに台車に入り、煙玉をいつでも投げれるようにした。ぼろぼろのワーゴンがすぐ隣にいる形になるが、お構いなしだ
「んー、私、今までオオカミ含めて生物に噛まれた回数を覚えているのかな。痛みは忘れたいのに」
オークリーオオカミは、3匹が連携してこちらに向かって走ってきた。語呂之介はポケットに手を突っ込んで、いつも通りくたびれた顔をしていた。