縛りプレイ(物理的な意味で)
これは卑猥なものを連想させるため、やめるべきとクレームを出す奴が卑猥よな
頭が金玉で出来てんのか?
「…なあにやってるんだあ?」
ここは盗賊団の『ハイエーサー』の根城。大きな部屋にいたのはワーゴンという名前のボスだ。滋養強壮に効く薬草を、部下達と探す予定だったのだが、部下が戻ってこない。こちらはもう準備を済ませているというのに
「たく、しょうがねえなあ。ちょっと上に戻って、俺の女に声かけてくるかあ」
上の階に拉致しているのは、アオカと呼ばれる少女。姉のリンカが必死になって助けてほしいとギルドで懇願している。解放条件は何十枚かの金貨をもってくること。そして、持ってきたとしても到底解放するつもりはないようだ
「よお?また来てやったぜえ?俺ってやっさしい!」
「うう…」
この男、暇さえあればアオカに声をかけているようだ。一向にアオカは表情を明るくしない
「これから俺らは、お前とのお楽しみのために薬草を見つけてくるからなあ?お前の姉とともに、徹底的に淫らに犯してやるからなあ?ぐふふ」
「ひっ!?や、やだあ!いやだよおそんなの!お姉ちゃんにもひどいことしないで!」
「大丈夫だってえ!嫌なことを考えられないぐらいトばしてやるからよお。だから、逃げんじゃねえぞお?」
「…!」
性欲ガン振りな振る舞いを見せながら、しっかりと釘を刺す。アオカは睨まれて思わず縮こまり、声も出なかった。ワーゴンは、表情を切り替えて立ち上がる
「おっと、いけねえや!俺は女の子には優しくがモットーなんだわあ。まあ、鍵がなきゃ開かねえから大人しくしとけよお?」
「へえ、優しいなら鍵くれません?」
「おう、見張りはどう………おあああ!?」
ワーゴンは、てっきり部下が戻ってきたものかと思っていた。しかし、声が違う、振り向いたらまったく予想外の人物だったことに驚く。ワーゴンはすぐに、機動性の良さそうな短剣を構えた
「だ、誰…?」
「てめえ、『死還者』だなあ!?この女を連れ戻しに来たのかあ!?」
「ん?あー、居ますね」
アオカは、語呂之介が誰だか分からないようだ。しかし、ワーゴンは知っているようだ。警戒を強める中、のんきな声で歩みを進めていく
「そこを動くんじゃねえ!この女がどうなってもいいのかあ!?」
「え?いいですよ」
「はあ!?」
「えええええええ!?ちょ、ちょっと!やだあ!助けてよ!!」
お約束なら、『くっ、卑怯な!』という流れになるのだが、全く意にも介さなかった。アオカは当然驚いたが、ワーゴンも思わず呆気にとられる
「い、今『死還者』って聞こえたの!お姉ちゃんが近づくなって言ってた人!でも、でも!誰でも良いから助けて!」
「そうは行くかあ!お前、どうなってもいいって本気で言ってるのかあ!?」
「私はあなたの首に用があります。明日の昼ご飯代になってください」
「…賞金稼ぎかあ?」
語呂之介はワーゴンを凝視する。ワーゴンは、自分の首を狙っていると知るや否や、アオカに剣を向けるのを止めて、語呂之介を警戒する
「それに、女の子に優しくするのがモットーと言いましたね?即行で脅しの材料にするとか、ダサくないですか?」
「ああ!?んなことどうでもいいだろうがあ!てめえ、俺の同胞はどうしたあ!?」
「さあ。部下にも優しく出来るなら、見に行ってみたらどうです?」
「野郎!仕留めてやるぜえ!!」
ワーゴンは、語呂之介の涼しい感じで淡々と挑発してきたことに怒り、突進して剣を構える。語呂之介は、ただ立っているだけだ。腰に下げている剣っぽい見た目の、孫の手も構えずに
「斬られるのも、楽じゃないんだよなあ…」
自分が斬られ、相手がそのダメージを負う。そのパターンで終わらせよう、いつも通りに。そんな感じで顔は疲れて、手慣れた様子だ。袈裟斬りをしようと、ワーゴンの剣が振り下ろされようとしたとき
「…む!」
直前で斬るのを止めた。それから、後ろにバックステップをして距離を取った
「…あれ?」
これには、語呂之介も少し驚いた。さくっと終わらせてくれると思ったのに
「…てめえ、なんでそんなに余裕なんだあ?剣も抜かねえ、なのに表情は全く焦ってねえ」
「…」
「死んで還ってくるのが『死還者』なんだろお?死ぬことに関係があるのかあ?」
「(うわあ、マジか…。性欲に忠実なヤツって頭悪いはずなのに、なんで妙に冴えてるのこの人)」
怪しいと思ったのか、距離を取って様子をみた。普通なら斬られないために、自分の武器で防御をするなり避けるなりしてもいいはずだが、何もしないことに違和感を覚えたのだ。
「ラチール!」
「ぐえっ!」
ワーゴンが何かを詠唱した。すると、腕と足が急に縛られたような感覚が襲う。緑色の光の縄のようなものが手足にまとわりつき、後ろ手に縛られ語呂之介はバランスを崩してうつ伏せに倒れた
「あ!わ、私がやられたやつ…。ちょ、『死還者』さん!しっかり!」
「黙ってなあ!さて、何を隠してるう?てめえの情報はあまりにも少ないからなあ。魔法か能力かを隠しているのかあ?」
「…(魔法使うべきかな?)」
間の抜けたようしゃべり方とは裏腹に、ワーゴンは意外と慎重なようだ。アオカは、魔法で拘束されたようだ。語呂之介は、ワーゴンを見ながら、黙って考えていた。相手が危害を加えてくるようにするにはどうしたら良いかと
「余裕なのか舐めてるのか知らねえがあ、黙ってんのは感心しねえなあ?」
「…(あー、どうしようか)」
「俺の同胞たちを見てくらあ、少し大人しくしとけよお?逃げようもんなら、その縛ってる光の輪が鋭利なモンになるぞお?手足とおさらばするのはいやだろお?」
「…(お?)」
「同胞次第によっては、死なねえ程度に痛めつけてやるぜえ?そしててめえから情報をいただくぜえ!」
「…(訂正、やっぱバカだこの人)」
そう言って、ワーゴンは急いで階段を降りて行った。ワーゴンの放った魔法は、相手を拘束する効果があるようだ。そして、その拘束した光の輪は攻撃にも転じることが出来るようだ。
「だ、大丈夫!?わ、私もそれで捕まったの!動こうとすると締め付けてきて痛くて動けないの!」
「なるほど。ということは、これはあの盗賊の『意志を持った攻撃』になるんですかね?元があいつの魔法、ということは」
「…え?何を言ってるの?」
「私が勝てるかもしれません」
そう言って、語呂之介は身を揺すって抵抗した。実体がなさそうに見える光なのに、しっかりと縛られている感覚がある。身をよじることで縛りが強くなり痛みが伴ってくる。そして、自身の肉に光が刃のように食い込んでいき、血がにじみ出て
「あああああああ!!」
「…ひっ!!いやあああ!!」
悲痛の叫びと、苦悶の表情を伴いながら、語呂之介の手足が吹き飛んだのだった。アオカは、顔面蒼白となり、彼女もまた叫ぶしかなかった