任意同行?お断りします
理解はしているけど、納得はしていない
遅くなってすみませんでした(こんな小説見てる人いるか知らんけど)
「どけよ騎士!!そいつは『死還者』だぞ!?」
喉を一文字に斬られ、盛大に血をぶちまけ、うつ伏せに喉を抑えながら溜池語呂之介は倒れている。さらに斬り下ろそうとした別の店の男の剣を、アナという名前の王国騎士が受け止めていた
「この間、別の騎士達から注意を受けたはずだ貴様。さらに警告を積み重ねたいか?これは穏やかじゃ無いぞ」
人混みをかき分けて、アナに続いて5人ほどの武装した騎士が現れた
「て、てめえら!そいつを庇うつもりか!?」
「勘違いするな、頭を冷やせ。私もこの『死還者』に対しては非常に思うところもある。だがな、誰が相手でもいたずらに流血沙汰を起こしてはならないはずだ」
「動かねえ騎士の代わりに聞いてやろうと思ったんだが?とっととぶっ殺して牢屋にぶち込めば簡単だろうが!こいつは生き返るんだろう!?」
「それで殺人をして良い理由になんかならない。短絡的なことを言うのはやめろ!今度は口頭の警告では済まさないぞ」
「………ちっっ!!」
別の店の男は、しぶしぶ剣を構えるのをやめた。以前、注意を受けており、騎士はアナの他に5人もいる。多勢に無勢、とりあえずいろいろ不利だと思ったのか
「けっ!騎士サマに刃向かうわけにはいかねえってか!だがな、折角無力化したんだぞ?今のうちに拘束はしろ。俺だって聞きたいことは山ほどあるんだからな」
「私たちだって、貴様に対して聞きたいことは山ほどある。どういう経緯で騒ぎを起こしたかとかな。ロープとかはあるか?」
「ああ。おい、動くなよ?『死還者』と共に来てもらうからな?」
アナが別の男の騎士に指示を出す。デマンド王国のお偉いさんからは常に、語呂之介の情報をもってくることにより、報奨金が出ることとなっている。過去に、力づくで語呂之介を連れてこようとした者もいたが、なぜか失敗に終わっている。騎士が話しかけても、のらりくらりと躱されてはぐらかされるのだ。それらが重なり、語呂之介は不気味な存在とされ、捕獲に対して消極的になった。だが、今回はチャンスだ。すでに倒れて動かない語呂之介がいる。男の騎士が、ロープを取り出して縛りあげようとしたそのとき
「…ごばっ!!」
「うわっ!」
突然アナが血に染まった。さっきまで納得がいかず不機嫌な別の店の男が、突然苦しみだし嗚咽混じりの声を出す。そして、盛大に血を流し、アナを染めた。
「はっ!!?」
「おい!なんだ!?」
別の店の男は、喉を押さえて倒れた。周りの騎士も突然のことに驚き、野次馬の住人たちもパニックとなる
「し、静かに!騒がないでください!」
「アナ!お前斬ったのか!?」
「ち、違う!私はそのようなことはしない!突然あいつの喉が!」
喉から血が突然噴き出したそうだ。難の前触れも無く。だが、何かに斬られた後のようだ。別の店の男は倒れて、うずくまる。
「(…な、なんだ!?何が起こった!!?ち、ちくしょう!!!痛ェ!!喉が!!苦しい!!か、回復薬が…!)」
声帯にまで損傷が及んでいるようだ。さらに自分の血で、呼吸が大変苦しい状態である。動こうにも動けず、喋ることが出来なくなった。脳みその中で、ただただ冷静に焦るだけだ
「(誰かが斬った!?女騎士か!?だが太刀筋が見えねェ!あいつそんな強いのか?聞いたことねえ…あ?し、『死還者』の血が…ない…!?)」
目だけは動いていた別の店の男は、語呂之介を見た。倒れて血だまりを作っていたはずだが、その血が無くなっていた。そのような変化を見つけたとき
「回復薬か治癒魔法いけるか!?」
「ああ!」
「よし、そしたら、ん!?ごほっ!」
「なんだ!?くさいぞ!げほげほ!」
またしても唐突に何かが起こった。別の店の男と語呂之介を囲む中心から、もくもくと煙が発生したのだ。しかも特有の匂いを発し、紫色と黄色の混じった毒々しい色を纏っていた。
「(あ、ああ、あいつ、立ちやがった!やっぱり生き返った!?ぐっ…苦しい…け、煙が!目が痛え!くせえ!血が、血が止まらねえ…)」
煙の中で、わずかに目に映った。別の店の男は、語呂之介の動向を。だが、煙に邪魔され見失ってしまった。目と鼻の機能を奪い、徐々に別の店の男は衰弱していった。立ちこめる煙は、あっという間に騎士をはじめ、倒れている2人を包み込んでいった
「あーあ、まいったなあ。折角賞金首を持ってきたのに…。煙玉まで消費しちゃった」
「(あいつ何言ってんだ?)」
「(興味をもつな。知らん知らん)」
ぶつぶつとつぶやきながら、語呂之介は城門をくぐっていた。門番の2人は、相変わらずひそひそと話していた。門の中は、わーわー騒いでおり、それを尻目に語呂之介はのんびりと歩いて自分の店に帰って行った