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すぐに攻略本を読もうとするのは許されないんDA!

銅貨1枚 100円

銀貨1枚 1000円

金貨1枚 10000円くらい

まあフレーバー要素です。だいたいこんくらいって思っててください




「領収書は『デマンド王国騎士っぽい人』でよろしいですね?」




溜池語呂之介は、細長い領収書に羽ペンを走らせながら、女性騎士のアナにそう伝える。アナは、自分の装備品が恐ろしいほどの安い値段であることに驚き、そしてどこかバカにされている感を覚える




「おいまて!吹っかけられるのは嫌だが安すぎるのも納得がいかない!貴様、小物入れはともかく、この剣と盾は一級品の物だ!かなり希少な鉱石と、埋め込まれた魔石を使われているのが見てわからないのか!」


「またのご来店をお持ちしてます」


「聞け!!どれだけおちょくる気なんだ!!」




そう、王国騎士団の装備は、そんじょそこらの装備店で買える代物ではない。ナマクラの剣とは比べ物にならない。だからこそ、大切に扱うことが義務付けられる。失くしたときには、アナは大変怒られたのだ。装備の目利きを、語呂之介が出来ないのかは知らないが、そんな安い値段を提示されたら、その装備を否定されたような気分になる。




「はあ…はあ…」


「お嬢さん、元気いいですねえ。あの、どっちなんすか?買うんですよね?安いのが良いのが普通だと思うのですが」


「そういうことじゃない!騎士の誇りであるこの装備に似つかわしくない値段を提示したことに怒っているんだ!」


「あー、銅貨4枚くらいですかね?」


「だから!!…くそ!埒が明かない!」




金貨を払ってもおしくない値段のはずである。相場では、そのようになっているのだが、知ってか知らずか、語呂之介は相変わらず安く提示する




「まあ、とにかく手元に戻って良かったですね。別の人に高く売ったり、炉で溶かして触媒にすることも考えたんですけどね」


「…え?」


「預かり代としては、妥当じゃないですか?これで昼飯買えますし」




アナはここで考え直す。冷静に考えたら、3日間も装備を手放していた。普通ならこの店にある確率が低いはず。ここは店で、物を売買する場所なのだから、他の者に渡っていることがあるはずだ。ここに当たり前のように置いてある考えになぜなったのか。振り返ってみると疑問が湧いてくる




「…貴様、これを今まで売ろうと考えなかったのか?棚に保管していたようだが」


「んー、気まぐれですね。お嬢さんは私を殺さなかったもんですから」


「私は例え犯罪者に対してもそのような蛮行はしない。だが、それが理由か?」


「ですから気まぐれですよ」




気まぐれ、便利な言葉である。結局不透明な答えである。詮索をしても進展がなさそうな気がしたアナは、別の疑問を投げかける




「あと、私の顔にポーションをかけたとき、匂いと色がべっとりと残ってたはずだ。鏡を見たら、色がほとんど落ちていた。あれは貴様がやったのか?他の騎士たちは知らないと言っていた」


「まあ、私が落としました」


「…恥をかかせる訳ではないのか?腹が立つが、私が貴様を殴り倒した映像を納めたクリスタルを持っているのだろう?それを王国に知らせようとさっきから言っていたな?そうすれば、私は恥どころか騎士としての実績信頼も失墜することだろう。それを狙っていると思ったが」


「お嬢さんの装備は返しませんでしたけどね。それで何か色々言われたんでしょ?信頼にヒビが入る事はしましたね」


「…貴様は何がしたいんだ?」




語呂之介の行動に、一貫性がないように見える。不可解だ。アナが騎士団として不利益をこうむる様な真似をされたりされなかったり、いよいよ分からない




「掛かってくるならやり返すだけですよ。私は不気味なヤツと王国中に言われています。何がしたいのか分からないと、私に関わろうとしないでしょ?」


「…演じているということか?」


「んなわけないでしょう。3日前、お嬢さんは私のことを頭がおかしいヤツと言ったでしょ。そんなヤツが演じれると?」


「…」




はぐらかされているような気がする。アナは、おちょくられている時と比べて、会話が成立していることに内心、感心というか少し驚いている。今までの語呂之介の振る舞いと、差が大きすぎるのだ




「…『死還者』、貴様は何者だ。我々が分かっているのは、貴様が死んでも蘇る事だ。だが、どのように殺しているのか。そして、私をどう気絶させたのか。魔法なのか、それとも、十数年に一人訪れる異世界なる者達の独特な能力なのか不透明だ」


「…」


「私は貴様を調査し、王国へと伝えることが目的だ。一向に進展しない調査のためにな。貴様はなんだ?中身はなんだ、この場で吐け」


「週刊少年しゃがみその場ジャンプの主人公じゃあるまいに」


「は?なんだ、その何とかジャンプと言うのは」


「そんなご丁寧にホイホイと手の内を明かすと思ってるんですか?」




語呂之介は、単純に言いたくない理由を告げる。馬鹿正直に自分の事をオープンに話して、不利になる真似などしたくないのだ。若干、語気が強い感じがしたが、言うことは尤もだ。アナは、自分もそうするだろうなという感じで心の中で納得する




「…珍しく正論を言ったな。やはり今までの態度は演じていたのだな?言う気はないんだな?」


「お嬢さんも金目当てですか?国のお偉いさんに報告したら報酬が貰えるんですよね」


「な!?違う!そんな俗な考えではない!私は民が平穏に暮らすために、騎士としての使命を全うするためだ!」


「ご立派じゃないですか。なら、仕事するために王国に戻って従事したほうが良くないですか?こんな辺鄙なところで油を売らないで」


「く…」




語呂之介はそう言って、椅子に座った。なんだか疲れたような顔をしながら、テーブルの上のお茶を飲む




「私を金目当てのヤツと思っているな!?断じて違う!貴様の調査も、民の安寧に繋がるんだ!その為に私はここに来たんだ!」


「…銅貨3枚は置いていってくださいね?お嬢さんの職場環境のお給金なら、安いもんでしょ?」


「聞き流すな!金は払う!だが、私が騎士として誇りをもち、国に属していることを忘れてもらっては」


「知ったことか」


「…!」




常に敬語の語呂之介の言葉が崩れた。放たれた冷たい言葉に、アナは思わず黙る




「…失礼しました。心配せずとも、おいそれと国の人に危害を加えることはしません。ってかめんどくさいので関わりたくないです。私が関わってしまうのは、自業自得な人だけです」


「…自業自得な人?…関わってしまう?」


「先ほども言いましたが、手の内をさらすほど私は自信家ではありません。どうしても知りたければ、私をぶっ殺して連行して拷問とかしたらどうです?私が生き返ることはバレてますし」


「…バカにするな。こちらもさっき言ったが、そのような蛮行はしない。貴様はそんな簡単に殺されたいのか?」


「嫌に決まってるでしょ。私は被虐体質じゃないんです」


「…」




自殺願望があるのかと思ったら、それは違うようだ。アナはもうこの会話の流れには慣れてきたようだ。というか、慣れないとやってられない




「…言う気はやはりないんだな。先ほど私に対して、お嬢さん『も』金目当て、と言ったな。過去に何人か、貴様に素性を聞きに来たというわけか」


「まあ、みんな私をぶっ殺してますね多分。頼み方があると思うんですよねえ」


「…貴様はここを動かないな?納得は到底できないが、今は貴様の言うことで判断するしかない。だが、少しでも善良な市民に対して危害を及ぼすものなら、私は貴様を捕まえる」


「はい」


「本当は連行したいが、どんな隠し玉を持っているかわからない以上、下手なことは出来ない。だが、貴様を見逃したわけではないぞ。それだけは忘れるな」


「はいはい、銅貨をどうか(ここダジャレ)忘れないでください」


「…ふん!」




語呂之介にそう言われ、アナは乱暴にテーブルの上に手を叩きつけた。そこにはきっちり銅貨が3枚置いてあった。いい加減であまりにもバカバカしい値段設定だと思う。安く済んだ、とお気楽な気持ちではいられない。そして、早足で何も言わず、ドアを開けて店から出て行った。




「…久々に人と長く話したなあ。さて、昼飯何喰おうかな」




耳に指を突っ込み、ほじりながら欠伸を一つ。やはり、顔はくたびれていた



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