幽霊の子
書きな!って言われた気がしたから書いた
今は使われていない工場の中に、捨てられた犬が1匹いた。
元々は人間に愛玩用に飼われていたが、主人に飽きられた為に捨てられた。
身体中にある傷痕が、虐待を受けたという事実を生々しく物語っていた。
飼育されて育った為、狩りの仕方も分からず、捨てられたというショックで生きる気力すら失っていた。
しかもその工場は、人間から心霊スポットとして恐れられており、1年に1組人間が来るかどうかの隔離された地であった。
犬が意識を朦朧とさせていると、そばに誰かが立っている気配がした。
散々人間に虐待されていたので、人間の気配には敏感なハズだったが、何故か近くに立っていると気付くのに時間がかかった。
そのまま無視しようかと思ったが、犬は自分以上の悲しみを感じ取り、ゆっくりと顔をあげた。
目がぼやけて全体像はハッキリと見えなかったが、悲しそうな顔をした"男"が立っていた。
"男"は、着いてこいと言わんばかりに工場の裏手へと歩き始めた。
裏手には、草や木が生い茂っており、けもの道が1本中へと伸びていた。
けもの道を進むと、月明かりに照らされた小川があった。
それほど深くない川で水を飲み、幾分か余裕の出た犬は、周りを見渡した。
そこには、様々な生物が生きていた。
虫や小魚、小動物まで多種多様な生物が生活していた。
気付けば、"男"の気配は無かった。
犬の中には、最早気怠い感情は無かった。
ただ、ここで生きていくのだという強い決意が漲っていた。