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第2話 特技

足を踏み出すと、【フィールド: ネスティア草原】というウィンドウが視界の隅に現れる。

眼前に広がるのは、青々とした丈の短い草々。頬を撫でる風が爽やかで気持ちいい。日本で言うところの春らしい季節だ。しかしそれと同時に目の前の光景は幻なんかではなく、本当に異世界に来てしまった事を実感させられる。神殿を出れば夢が覚めて元の世界に帰ることが出来るという都市伝説的期待もあっさり裏切られる事となった。


(はあ。これからどうしようか。処分(デリート)されても困るし。)


処分(デリート)の基準も分からないので何をすれば良いかも分からない。生きていくための術を私は知らなさすぎる。とにかく処分(デリート)の基準から調べないと。住む場所も確保せねば。

そうしてあてもなくさまよっていると、視界の隅の《メニュー》に新着という赤い通知が灯る。この世界では、自分のステータスや情報を、紙に書かずとも可視化できる。どうやら《クエスト》に新しいメッセージが届いたようだ。内容としては、新クエストを選べ。というものだった。


選択肢としては2つ。スライム2体の討伐か神官護衛任務のどちらかを選ばなければならないようだ。どちらかといえばスライム討伐の方が楽で簡単そうだったので、そちらを選択し受注する。


スライムはゲームとか冒険物の漫画で雑魚キャラやモブとして使われることが多いからきっと私でも大丈夫だろう。私だってかつてやっていたゲームでスライムに負けたことなんてない。それに対して神官護衛は報酬は弾みそうだがリスクもそれなりに覚悟しなければいけないような響きだ。しかも神官ってだいたいイヤミな立ち回りが多いし。異世界からきた人間ってバレたら、悪魔だとか災厄だとか言われそうだし。面倒ごとにならないためにもスライム討伐を選んだ方が身のためだろう。多分、どちらも初期の初期に出てきているクエストだからそこまで難しくはないと思うが。神官護衛はまた今度にしよう。


神官さんにはそれまで、ほかの人に守ってもらって死なないでいて欲しいな、と思う。私がほかの人に対して生きてて欲しいなんて思った事はそこまでないのだが、この世界に来て少しではあるが変わってきている気がする。

護衛のクエストを拒否したのは自分で、命が惜しいからと自分のエゴが一番なのは変わりないが。スライム討伐くらいなら私でもきっと達成できるだろう。自分の能力を過信しすぎるのは良くないので護衛はそれから。


しばらく草原を散策していると、フィーナが現れてクエストを受注したかを聞かれた。見栄を張らずスライム討伐を受注したと伝える。

「スライムならリオラちゃんでも大丈夫だね!」とフィーナは言う。

(ん?リオレイルでリオラか。もっとマシなニックネーム無かったのかな。新しい名前になかなか馴染めないんだよなぁ。女だし。)


と考えていると、フィーナが母親の逆鱗に触れた子供のようにビクビクしていた。なぜか分からないので問うと、「怒っちゃった?」とビビりながら言う。全くその気はないので怒ってないよと弁解する。どうやら無意識のうちに眉間にシワが寄っていて、それをマスターではなくニックネームで呼んだから怒っていると勘違いしたらしい。フィーナが安堵の表情を見せる。嫌われてなくてよかった。彼女がいなければ、私はこの世界でおそらく生き残れない。

それにしても、そんなに怖かったのだろうか。たしかにもともとの切れ長の目は健在だけど。



「フィーナ。私のことはリオラと読んでくれて構わないよ。」



罪滅ぼしにそう言うとフィーナは飛び跳ねながら喜んでいた。相当嬉しかったのだろう。地球では友達なんかいなかったので友達との付き合いみたいなのもいいなと思えた。


元気になったフィーナは私にクエストの受注期限とクエスト有効期間は確かめたかを問う。

私は《クエスト》のウィンドウを開く。そこにはさっき受注したスライム討伐の詳細が記されていた。


“スライムの粘液” 0/2

達成条件 スライム2体の討伐

報酬 350シュイル

状態 受注済

クエスト有効期間 1ヶ月間


とあった。1ヶ月にスライム2体ならいけそうだ。受注期限については《ヘルプ》にあるようなので確認する。どうやら受注期限内に受注できなかったり、クエストが30個以上溜まってしまうと貢献していないとみなされて処分(デリート)されてしまうらしい。また、だいたい1ヶ月に1回の頻度でさっきのようにクエストの「選択」を行わなければならないらしい。そのほかにも色々書いてあったので隅々まで確認する。

これは生死に関わる事なので抜かりなく読む事に没頭する。するとリン。という鈴のような音と同時に新しく『熟読』のスキルを習得した。スキルについても《ヘルプ》で確認する。


この世界にはありとあらゆる行動に対してスキルがある。スキルはある一定の行動を規定値まで行うと習得、レベルアップできるらしい。料理の腕前、文学の才能などはスキルのレベルアップによって磨かれていくようだ。しかしスキルの有無に関わらず、それなりの行動や生活はしていけるらしい。要するに極めるか否かという事だ。


ちなみに『熟読』のスキルはレベルに応じて書物の意図を汲んだりできるようになるらしい。こんな使えるか使えないのか分からないようなスキルも生き残るためには必要だそうだ。

どんどん行動しスキルを習得していこう。


調べる事は調べ終えたので、また草原を散策する。見渡す限りどこまでも緑色をしていて、本当は世界中が草だらけなのではないかと疑いたくなる。この世界には砂漠や海も存在しているらしいが今の段階では考えられない。どこを見ても緑、緑、緑。

ただ歩くだけなのも退屈なので落ちているキノコを採集しながら歩いて行く。赤いキノコ、水玉模様のキノコとどう見ても毒キノコみたいな見た目のものしか生えていない。ていうか草原にキノコって生えなくない?この世界はどこか変わっている。地球の常識は通用し無さそうだなぁ。キノコを片手に持ちきれない程集めると、リン。という鈴のような音と共に『採集』のスキルを獲得した。これは採集にかかる時間を短縮してくれるスキルだそうだ。これでもっと採集が捗る。片手は開けておいた方が安全だし、バッグがないのでこれ以上は持てないが。


前世での記憶を頼りに見た目でキノコや薬草の様なものをギリギリまで集めつつ歩いていると、フィーナが出てきて


「ところでリオラの永遠の技(エターナルスキル)って何?」と問う。


「えたーなるすきる?」

初めて耳にする単語だ。永遠の技(エターナルスキル)ってどんなものだろう。


永遠の技(エターナルスキル)はその個体が生まれつき持つ特技のことだよ。内容は十人十色でこの世には誰一人として同じスキルを持った人はいないんだ。」

ちなみにスキルには、CからSSSまでの6段階あって、私は「伝道−導く者−」ていうAランクのスキルを持っているんだよ。と誇らしげに言い、私のスキルを教えるよう催促する。顔から察するに自分のスキルより私のスキルの方が劣っていると思っているのだろう。Aランク以上のスキルなんてなかなか無さそうなので負け決定なのだけれどなんか悔しい。


分からないから今は言えない。と私が言うと、フィーナは聞きたい聞きたいと駄々をこねる。このままじゃ埒があかないのでもう教えてしまう事にした。

ウィンドウをいちいち開いていくのもめんどくさい。そのくらいバカにされたことが悔しかった。そんな事で怒っている自分に半ば呆れながら操作した。案の定選択をミスったり、途中で消してしまったりとうまくいかない。すると何かを察したのかウィンドウの設定がオート解析モードの選択を促した。これで思念するだけで解析しウィンドウが開くらしい。どこかの誰かさんとは違ってウィンドウは親切だなと思う。

その誰かさんには口が裂けても言えないけど。


永遠の技(エターナルスキル)を思念しウィンドウを開く。そこを見て私は愕然とした。

片手一杯に持っていたキノコがボロボロと落ち、結晶のようなものになって砕ける。

見間違いかと思い瞬きを数度繰り返すも結果は変わらず、あってはならないスキルにしか視認できない。


そのスキルとは……

さてさてリオラのスキルとは何なんでしょうか?

所々フィーナがうざくなっているような…。

フィーナごめんね(^_^;)

次回から本格的に冒険させてみます!


誤字等ありましたらご報告下さい。


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