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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
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#065 『 天の時 』

投稿が遅れてしまい申し訳ありません!! m(_ _)m


 正午になると一人の伝令兵が慌てて、俺の元へと駆け寄ってくる。


「陛下。ベイロン殿が兵を連れて現れました!」


 ベイロン到着の報告を聞いて俺は反射的に告げた。


「わかった。では迎えに行こう。」



 屋敷を出発して、早々ベイロンが兵を待機させるであろう砦へと向かった。


「陛下。遅くなって申しわけありません。」


「いや、いいさ。それより兵の様子はどうだ?」


「陛下の連戦連勝によって皆、士気が高まっています。」


 そう告げるベイロンを横目に俺は笑みを浮かべる。

 新たに合流した士気の高い三千の兵士に新たに支配した地域からの募集兵が同じく三千の合計六千人。


 兵科としても四千の歩兵に一千二百の弓兵、八百の騎兵となかなかのバランスだった。


「なるほど。して準備の方はどうだ?」


「ええ、そちらの方も準備万端です。」


 そう言って俺とベイロンは二頭の馬に牽引された五台の木材の山を眺める。


 一見してはただの木材の山。だが、一度ひとたび大地の上に下す(おろす)と瞬く間に、人の半分くらいある岩を遥か遠くに飛ばす。

 そんな、この時代における常識はずれの兵器、投石器を無理を承知で五台作らせたのには訳があった。


 近年のカーナヴォン城増築と改装によって、ウェールズ一の堅牢城塞を誇る城の中で惜しくも二番目となってしまったカーディフ城があったためだった。


 約二十年間という長い月日の中でウェールズ一の堅牢さを誇った最高の防御力を持つカーディフ城。

 そんな城を落とすためにはこの世界の常識ではほぼ不可能に近い。

 無論、兵糧攻めなどは可能ではあるが敵に籠城でもされたら、それこそこちらが敗北してしまう。


 加えて、こちらは残すところ十五日しかない。

 時間は敵に味方している以上、これ以上の遅れは許されない。

 

 詰まることろ今現在、必要なのは速さだった。


 そうした点で見れば、スウォジーの攻略方法はありがたかった。


「して、どうしましょう。陛下。」


「近いうちに兵を動かし、スウォジーを占領。その後、敵に反撃の隙を与えずにカーディフ城へと攻め上がる。

 敵はなんとしても阻止しようとしたり、足止めしようと粘ってくるがそれらを振り払っていくしかあるまい。

 もはや、俺たちには時間が残されていないからな。」


「畏まりました。

 では、私は明日にでも兵たちが出立できるようにいたします。」


「ああ、そうしてくれ。」


 そう言って俺はベイロンと別れ、屋敷へと戻った。

 屋敷へと戻る際、僅かに空いた移動時間で俺は脳を働かせて今後のことを考えた。


 わずか十五日しかないタイムリミットの中で最大の戦果を残さなければならない。


 兵の士気は上々。されど、移動速度が攻城兵器によって低下している現状。

 そうした中で、スウォジーへと進軍すれば敵はそれそこ是が非でも止めるために一気に戦法を変えてくるかもしれない。

 今までは、少数精鋭の軍を組織して、迎え撃った。

 だが、余裕のなくなったネズミが猫を噛むことがあるように、追い詰められれば、誰もが危険を承知で強引な策に転じることがる。

 例えば、経済的被害を無視して、川を渡るために使う橋を自らの手で破壊して進軍を遅らせたりと、この世界の時代でもできることはある。


 だがそうしたことを考慮すると一気に難しくなってくる。

 残る三人の統治者のうち一人はスウォジーにいることは確認済み。


 その他の二人も一人はアルビオンとの国の国境近くにある自領に篭っており、もう一人はカーディフの城の中で指揮をとっているという。

 故に、必要なのはこの三人を捕縛するか、始末する他ない。


 とはいえ、俺の手元にはそうした暗殺が得意な者はいない。

 無論、将来的には必要であるために前世の戦国時代に存在したと言われる日本の忍者みたいな人たちを一箇所に集めて、組織した上で俺専用の諜報機関としては欲しいところではあるが、未だそこまで手が伸ばせていないのが現状だ。


「陛下。つきました。」


 御者の声で俺は先ほどまで考えていたことを一旦、脳の片隅におくと返事をして馬車を降りた。


 屋敷へと戻るといつものようにメイドや執事たち、そして騎士たちもが出迎えてくれた。

 そんな中で、モジモジとする女性が一人。こちらをチラチラと見ながら話かけようとする人物がいた。


「お、おかえり。」


 恥ずかしそうに告げるオリヴィアに俺は、軽く鼻で笑うと笑みを浮かべて返事をした。


「ただいま。」


 そうして二人してまた屋敷へと入った。


◇・◇・◇


 翌日。

 俺は後発組の兵たちを砦に残した上で、新たに派遣された軍を指揮していた。


「最小限の被害で敵の注意を引き付けろ!!」


 スウォジーの北門。敵味方乱れる中の攻城戦で馬上から一人、俺は叫んだ。


 矢の雨が止まることなく降り続ける中で俺は手持ちの小さな盾をかざして矢を防ぐ。

 眼下には、スウォジーの都市城壁へと攻め上げようとする兵たちが叫びながら敵の注意を引きつけていた。



 昨夜。屋敷へと戻った俺は、早急にベイロンを呼び寄せてスウォジーの攻略について話し合った。

 その際に、ベイロン率いる精鋭班が違法坑道から都市内部へと侵入。

 そして、太陽が丁度真上に来るまでに門を開く予定だった。


 だが、太陽が丁度真上に来た今でも門は開かずに俺たちの侵攻を阻んでいた。


 一瞬、ベイロンたちがしくじったと思ったが、早急にあれほどの手だれであるはずの者たちが早々にやられるはずがない。と考えを改めて、俺は何かが起きて遅れているのだと思った。


 とはいえ、兵たちの中には動揺が伝染しつつあった。

 一向に開かぬ門に、都市内へと潜入したはずの味方。

 これが意味するところは見捨てられたか、寝返ったかの選択だ。


 俺自身は信じたくはないが、もし仮にそうであるのであればそれは許せなかった。

 まず第一に見捨てられた可能性は低かった。

 なにせ、少数で多数を見捨てる行為というのはあまりメリットがない。

 特に今のこの状況ではなおさらだ。


 また、仮に寝返った場合はこちらが一気に不利になる。

 兵力の差、士気、平坦状況、その全てが敵に知られるのだから無理もない。

 しかし、仮にそうであるのであれば何かしらのなぜか策を敵が展開してきてもいいはず。

 それなのにそうしないのはやらないのではなく、できない理由があるということ。

 つまり、ベイロンたちは都市の中で今尚暴れ回り、門を開こうとしているからだと容易に想像できる。


 だが、こちらもそろそろ限界。

 兵たちの消耗を考えるに残り一時間の攻勢が限度。

 それまでにベイロンたちが門を開けなければ俺は逆にベイロンたちを見捨てなくてはならない。


「陛下!! あれを!!!!」


 そう告げる兵の声に俺は兵の指さす方向へと視線を移す。


 そこには、門がギイィと音を立てて開く光景があった。


 刹那、俺を含めて戦場で命のやりとりを行う全兵士は思った。


 門が開いたと––––––––。


 敵は予想しない現象に呆気に取られ、俺や味方の兵士はやったと歓喜の声を心の中で上げた。


 瞬間、俺は叫んだ。


「門へと雪崩こめ!!!」


 戦場に木霊する俺の声に、兵たちは再度自分たちの目的を再認識して、体を動かして門へと雪崩れ込む。


 防波堤が崩れた川のように一気に都市内へと雪崩れ込む兵に敵は驚き、意識が分散し始めた。

 すでに組織的な抵抗力を失った敵に対して俺は適時その場その場で兵たちに命令を下した。


 その結果、門が明けてから早一時間半でスウォジーの都市は陥落。

 敵の大将もベイロンが一騎打ちの後、捕縛に成功して捕虜にした。


 久々の戦いと勝利に兵たちは浮き足立ち、皆俺の名前を叫びながら剣を掲げた。


 スウォジーの都市の南側にある領主館で一際はためく金の竜に兵たちは胸をはり、都市民は恐怖した。


 そうしてそのまま、俺は新たに捉えた兵たちを半ば強制的に招集すると新たな統治者としての威厳を見せつけた。


「諸君らよ。お前たちの家族は我が手中にある。

 だが、安心して欲しい。我が命令に忠実に従えれば何も恐れることはない。」


 そう告げて俺は敵だった兵たちを懐柔し自軍の兵士として新たに雇い入れた。


 命令を無視すれば、即座に家族が愛する者たちの命が奪われる状況の中で兵たちは皆俺の戦力になることに同意した。


 そうして新たに集めた兵力とともに砦へと残った後発組を帰還させて、一通の手紙を本国へと送った。


 そうして、新たに合流した兵とデヒューバースの兵たちと本国の援軍を合わせて、合計五千人。

 その兵力を持って俺は再度侵攻を開始した。


 ブリストル海道を進みながら周辺都市を次々と陥落させる騎行に敵は次第に戦う前に降伏するようになり、遂には敵の最大都市であるカーディフの目前までわずか四日という速さで到着した。



 だが、ここで予想外の出来事が起こった。

 この年の冬は従来の冬と比べて十日も早く到来したのだった。


 攻略すべき最後の都市が目と鼻の先にあるにもかかわらず、兵たちは砦から出ることはおろか、自身のテントの中にある小さベットからも出ようとしなくなるほど空気が冷えていた。


「ここまできて、これかよ。」


 拳を強く握りしめて嘆く俺に背後から近づいてきたベディヴィアは告げる。


「陛下。これ以上はお体に触ります。早くテントへ。」


 そう告げるベディヴィアに俺は歯を食いしばった。


 兵たちは寒さで動けず、敵は堅牢な城に守られた都市に籠城する。

 冬備えのためにあらかじめ都市内には豊富な食料の備蓄がある。

 故に兵糧攻めは意味をなさず、むしろこちらの方が不利になる。


 攻める手立てが失われていく中で時間だけが無為に流れていく。

 そんな中で俺は一キロ先に見えるカーディフの都市を歯痒く眺める。


 ここまできてのこの状況に俺は頭を悩ませた。

 どうすれば、勝てるのか。

 もしくは、いっそのこと諦める他ないのか。

 そういった決断を迫られる中で一人の伝令兵が防寒具を身に纏いながら俺に近付き馬を降りる。


「陛下。カーディフからの使者が参りました。」


 そう告げる伝令兵に俺は少し怒気を強めた声で告げる。


「わかった。我のテントまで通せ。直接話す。」


 敵の思惑を知るチャンスであるこの機会に俺は使者との会談を受け入れた。



 そうして俺はカーディフの都市を背後に砦へと戻り、カーディフからの使者を砦の中へと招き入れた。

読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

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( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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