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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
67/70

#064 『 計画変更 』

毎週火曜と金曜の15時に投稿します!!( ^ω^ )

「いいですか、アルトス様。スウォジーは港で発展したと思われていますが、実際はそうではなくむしろ、銅などの鉱山冶金業で栄えた歴史を持っとるんです!!」


「何が言いたい?」


「つまりですね。都市の地下には鉱脈が流れていた都市ということです。」


「なるほど。言いたいことがわかった。

 つまり、都市の地下には銅の豊富な鉱脈があるのと同時に地下の坑道があるということだな?」


「ええ。そうです。」


 なるほど。地下に鉱脈があれば、その鉱脈を守るため、そして利用しお金を得るために当然都市を建てるだろう。

 それも、通常の都市のようなやわな城壁ではなく、むしろ必要以上の耐久性と機能性を兼ね備えた城壁を築こうとするはずだ。


 ともなれば、正面戦闘の攻城戦はこちらが不利。

 かといって海からの奇襲も厳しいだろう。

 そもそも、船を回せない他、敵がいるかもしれない海域に中途半端な兵力は送られない。


 であるならば、奇襲を持った戦術で都市を攻め落とすしか手はない。


 幸いにも、スウォジーの地下に広がる銅の鉱脈と坑道の存在はいい知らせだ。

 ましてや鉱脈の存在は非常に大きい。なにせ、隠そうにも隠せないからだ。


 故に、金のなる木である鉱脈は発見され次第、盗賊などの一部や反社会的な組織によって違法に掘り進められることがある。

 そしてそれは、今のこの状況において俺にとっては天啓とも言える物だった。


 兵たちをスウォジー正面に並ばせて、敵の注意を惹きつける一方で違法に掘り当てられた場所から地下の坑道を辿り、都市内部に侵入。

 そうして、城門を目指し味方を誘因させれば、一気に形勢は逆転し容易に勝利を収めることができるようになる。


 そこまで考えて俺は、目の前で不敵な笑みを浮かべるタルボット子爵に告げる。


「情報をありがとう。とはいえだ、未だ解放させることができない。

 しかしそれでは情報をくれた意味がないだろう。依然として拘束させてはもらうが代わりに読書などの一部の娯楽の享受は許可する。」


「は、はい!!」


 タルボット子爵が膝をつき、俺を崇めるような視線と行動を向けてくる中、俺は部屋を後にして、すぐさま聞いた情報を部隊長たちに伝言させた。


 その後、ボンタデュレーの貴族や豪族たちを招待という名目で呼び出すと、決定した内容を次々と発表した。

 その際、ある者はホッと胸を撫で下ろし、逆にある者は密かに憤怒した。


 また、賠償金に関しては都市に課せられるとして、賠償金の総額をその場にいた貴族と豪族が平等に一律した金額を支払う形となったため、ある程度の公平性が保たれた。


 そして、当然のように賠償金だけを課されたものや要求された権利が比較的低かった貴族や豪族たちと賠償金の他、自身の持つ強大な権利を奪われた貴族や豪族たちは互いに反発した。

 前者は比較的に俺に従順に。後者は俺には強情となった。


 何はともあれ、都市の問題は一応の解決がもたらされた。

 そして、少なくとも戦争中にボンタデュレーの都市が反旗を翻すことはなくなる。


 後方の安全も確固のものとした今、俺は次の都市スウォジーの攻略に目を向けていた。


 そんな時だった。


「「戦争反対!!!」」

「「継戦反対!!!!!」」


 そう告げる兵たちを見て俺は頭を抱えた。


◇・◇・◇


 話は少し前に戻る。


 俺がタルボット子爵と話をしていた時のこと。

 兵たちの間でこれ以上の進軍及び兵役を承認するか否かを独自で決めたらしい。

 なお中には軍事会議に参加した部隊長クラスも参加していた。


 将来に向けて、進軍が必要なのも、支配地域を広げることも理解はできる。だが、それで振り回されるのはいつでも自分たちのような兵だ。

 いつ死ぬかもしれない戦場の中で、再び故郷の土地を踏むことなく息絶えるのは感情的に拒否反応を示してしまう。


 例え、将来それが国のためになろうとも明日が完全に保証されないという職業柄故か、今を見ることしかできない自分たちにとって未来か現在かを問われたら、現在をとるとしかいえない。

 だが、表立っての反対は先の戦場での出来事もあり、できない。

 そんな時に、ふと一人の兵士が、直訴してはどうかという提案がなされた。



 そして、現在。

 都市の城壁に沿って作らせた砦の中心広場で進軍を開始しようとする俺の前に今現在主犯格とも言える五人が膝をまげて頭を垂れる。

 俺に対して最大限の敬意を込めて、これ以上の進軍はできないこと、故郷へ帰りたいことを死罪を覚悟で告げてきた。


 それらを聞き、兵たちの疲労や精神的な限界を感じた俺は、今まで半ば強引にも導いてきた手前もあったため、兵たちからの直訴を無下にできなかった。

 しかしながら、本国の民を国王として守る義務がある以上、そう易々と受け入れるわけにはいかなかった。


「お前たちの意見ももっともだ。

 長らく故郷の土地を踏んでいない以上不安があろう。

 事実、お前たちの頑張りによってウェストリー王国はその版図を大きく広げることに成功した。

 よって、お前たちの頑張りに私は答えよう。

 これより帰還を望む兵たちに帰還を許す。」


 そう告げる俺に兵たちや直訴してきた五人の主犯格も含めて驚いた表情を見せていた。

 しかし、そのような表情も俺は華麗にスルーすると、帰還を受け入れる対価として条件を出した。


「だが、我々は戦争途中だ。

 皆一斉に返すことはできない。

 よってまずは軍を二分し、先発隊と後発隊に分けさせてもらう。

 その上で、援軍を要請し援軍が到着次第、先発隊と交代。同じく、後発隊も援軍が到着次第に帰還を許す。

 それまでは、規律正しく命令を遵守せよ!!」


「「「ハッ!!!!!!!!!」」」


 数千人もの兵が一斉に応える中で、俺は内心本国への連絡として兵たちの帰還とともに援軍の要請を早急に頼むことをメモした。


 そうして、半ば強引に味方によって計画変更を余儀なくされたものの砦を後にするように出ていこうとする中で兵たちがまるで感謝かの意を示すかのように俺に向けて、膝をつき頭を垂れた。


 その様子を傍目に俺は笑みを浮かべるとそのまま砦を出て、ボンタデュレーの中にある屋敷へと戻った。


 その際に、オリヴィアからはなぜ兵たちの帰還を許した真意を訊ねられたが、特段真意があったわけでもなかったため、素直に答えた。

 だが、当のオリヴィアは俺の回答に満足しなかったためか、頬をプクッと膨らませて「ムゥ〜」と可愛らしい声を発しながらそっぽを向いて機嫌を悪くした。


 再び、屋敷に戻りことの顛末を再度屋敷のメイドたちに簡潔に伝えた。

 そして、俺は再度一人で自室へと籠ると本国へ伝えるべき内容を記した手紙を書いた。


 本来であれば、伝書鳩によって送らせたいものの、文量が多い今回では鳩は使えなかった。

 そこで、代わりの手段として都市にいる通信を商いにしている通信商に頼んで鷹を使って本国へ手紙を送った。



 翌日。

 本国からの回答を記した手紙が通信商経由で屋敷へと届けられ、即座に俺は内容を確認した。

 内容は簡潔にいえばすでに援軍の手配はしており、あと数日でボンタデュレーへと到着することが記されていた。

 また、援軍の数も三千と非常に多く、その指揮をベイロンが担っていた。


 手紙の内容を知り、一人笑みを浮かべて「やった!!」とガッツポーズをしながら喜んでいると背後から優しい女性の声が聞こえてきた。


「嬉しそうですね、アルトス様。」


 そう告げる声の主はベディヴィアだった。

 仮にも王の寝室に王本人にすら気づかないうちに入ってきたことに驚きながらも俺は彼女の言葉に応えた。


「まぁな。兵はもうじき来る他その数は最初に連れてきた数よりも僅かに多い三千人。それに新たに支配したデヒューバースの兵たちを加えたら、大体六千人くらいになる。

 加えて、この後の戦闘に必要な物資や攻城兵器も持ってきているらしい。

 それを喜ばすにはいられると思うか?」


「確かに、めでたい情報です。」


「そうだな。しかし、問題点もある。兵たちによる反戦運動で侵攻計画に大幅な遅れが出た。

 それによってもうすぐ三ヶ月目だ。そのうち継戦できる日数は十五日程度。

 それだけの日数でカーディフを占領しなくてはならない。」


 ここまできての減速に俺は内心頭を悩ませていた。

 とはいえ、あのまま兵たちに鞭を打って戦場に立たせれば勝てる戦にも負けてしまう可能性が高い。

 そうなっては今までの全てが水の泡になってしまう。

 そうならないように、最低限の条件をつけて軍を維持しているが、中にはすでに浮かれているのか、問題行動を起こす輩が増えつつあった。

 特に、途中で雇った傭兵たちと正規兵たちの間には亀裂が入っていおり、何回か喧嘩が起きていた。


 その都度対策をしているとはいえ、もはや限界。

 ここで心機一転、兵の入れ替えを行い、兵力の補充ができたのは幸いだが、時間のロスが未だネックだった。

 三ヶ月という非常に短期間に加えて、戦略地域が広すぎかつ起伏に飛んだ地形でもあるため、一つ一つの攻略にはどうしても時間がかかってしまう。

 それに付随して要求される軍費も増大していく。


 例え、この戦争を勝利で終わらせることができても、その後に待つ財政問題の解消には今からもで頭が痛くなる。


「ともかくだ、まずは兵力の入れ替えだ。軍の侵攻計画などはとりあえず後回しだ。」


「畏まりました。

 では、援軍のベイロン軍が到着次第、再度ご連絡を入れます。」


「ああ、そうしてくれ。

 俺はそれまでに侵攻計画を練っておく。

 それと……。」


 そう告げて、俺は少し照れ臭そうにベディヴィアに訊ねた。


「彼女の様子はどうだ?」


 数秒の沈黙の後、ベディヴィアはわざとらしく気付くとそのまま俺の質問に応えた。


「はい。まだ、怒っておられるようです。」


「そうか。」とだけ短く返すとベディヴィアを部屋の外まで見送り、再度一人になった自室で俺は深呼吸して、テーブルに広がる軍事資料に目を通した。


◇・◇・◇


 アルトスの部屋を出たベディヴィアは少し微笑むと廊下の角からひょっこりと顔を覗かせるオリヴィアにそっと気づかれないように近づいた。


 そして、廊下の角で顔を引っ込めたオリヴィアはボソボソと小さな声で「べ、別にあいつに会いたいわけじゃなくて……。」と言い訳がましく独り言を呟いた。

 その様子を背後から見守るように知ったベディヴィアは声をかけた。


「何をしているのです? オリヴィア様。」

 

読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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