#063 『 牙を抜かれた者たち 』
投稿が遅れてしまい申し訳ありません!! m(_ _)m
以降はこのようなことがないようにします!!
兵たちを引き連れて俺は戦場を後にしてそのまま、ボンタデュレーの都市へと迫った。
しかし、すでに俺の先程のオーラで戦意消失したのか、俺たちウェストリー王国軍が近づくとそのまま都市の門が開いた。
都市の門を潜り抜け、都市の中に入る。
すると、都市の住民が新たに入る俺たちウェストリー王国軍を悲壮感漂う顔で眺めていた。
不安や恐怖。そういった負の感情を肌で感じながらも俺は統治者として同情するのではなく、むしろ堂々と胸を張って馬を都市住民によって作られた道を歩かせた。
そうして都市の中央広場に入ると目の前に三人の男が立ちはだかった。
貴族風の青年と騎士団長のような風貌の中年男性。そして、お腹をぽよんとさせていた見た目商人の中年男性がいた。
そんな彼らを前に俺は立ち止まって見つめた。
俺が止まったことで、後に続いていた兵たちは無言かつ一斉にピタッと立ち止まった。
その様子はまるで物言わぬ機械のようであり、都市の住民にはより一層の恐怖を与える結果になった。
しかし、それらは全て、目の前の三人の男たちが原因であり、俺は何も意図して命令したわけではなかったため、特段そこに触れることなく俺は静かに口を開き、行軍を止めた張本人である三人に訊ねた。
「何をしているのだ?」
本来であれば、笑顔あふれる都市の中心地であるこの広場の中で、ただ俺だけの声が僅かに響く。
固唾をゴクッと飲み込む音が僅か聞こえたと思ったその瞬間、三人の男の中で貴族風の青年が一歩前へと進み、静かに跪いた。
「ど、どうか、民に慈悲をかけてはもらえないだろうか? アルトス王よ。」
そう告げる声は震えており、男の方も僅かに震えていた。
だが、俺はそのことに触れることなく、男の質問に応えた。
「慈悲……? 何をいっているのかさっぱりだな。」
冷たく、告げる俺に男は咄嗟に顔をあげて訴えようとするがそれを悟っていた俺はすでに、男を見下すように冷たい視線を向けていた。
「!!」
自身の中にある恐怖を必死に抑え込む男はなおも俺に訴えるように言葉を紡ぎ声を発した。
「た、確かに、私たちはあなたに歯向かった!!
だが、ここにいる多くの者は何も関係ない!! 無実の民だ!!
だから、どうか彼らだけでも……。」
「許せと?」
「……そうだ。」
「ハハハハ、面白いな。お前。」
笑う俺に男は驚きながらも俺がなぜ笑うのかを知りたいかのような目線を向けてきた。
「笑ってすまない。だが、元より俺は民には手を出す意思はない。」
その言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした男に俺は話を続けた。
「だが、貴族や豪族はそうはいかない。」
先程の言葉よりも一層低い声で冷たく告げる俺に男は焦りを覚えた。
「当然だろう? 民を率いたのは貴族や豪族などの支配者層だ。
そんな彼らには此度の戦いにおける保証をしてもらねば意味がない。
我らとて少なくない犠牲が出たのだからな。
ああ、それと安心してくれ。決して命を奪うようなことはしない。」
「ぐ、具体的には何を?」
「そうだな。いくつかの権利の譲渡及び賠償金などだな。
まぁ、詳細は後ほど話を詰めた後で再度告げよう。」
そういって俺は再び馬を歩かせ、目的地であった屋敷へと向かった。
◇・◇・◇
「さて、どうするかだが、どうしようか?」
到着した屋敷の中の一室を使って行われている会議で開口一番に告げる俺に、オリヴィアは若干呆れながらも応えてくれた。
「どうもこうも、まずはやはり、賠償金の金額と権利の譲渡内容じゃないかしら?」
「うーん。そうなんだけど……。」
「何か問題でも?」
「いや、権利とはいってもここにいる貴族や豪族たちは権利がほぼないだよな。」
先ほど、ベディヴィアに調べさせた内容を元に俺は会議室の天井を眺めた。
手元にはベディヴィアに調べさせた情報が綺麗にまとめられた羊皮紙が一枚にこの都市の貴族や豪族たちが記された戸籍帳のような資料が一冊。
そして、都市に存在する公共物への権利などがまとめられた資料がさらに一冊の計二冊と一枚があった。
そして権利についてのあれこれが記されている本の中には誰所有の権利かということが記されていたが、貴族や豪族たちの中で欲しいと思えた権利は三つしかなかった。
それが通行に関する権利と市場開催権、そして私兵に関する権利だった。
通行や市場開催については経済的であるが故に俺は欲した。
そして私兵に関する権利も反抗されないために欲した。
だが、それ以上のものは欲しいとは思えなかった。
まず、あったのがパンを焼く窯の独占使用権や税を徴収する回収人を雇う権利などがあったが、俺は使えないものとしてバッサリと捨てていた。
「けど、税の徴収は必要じゃない?
戦争中で軍費が足りない今なら特に。」
「まぁそうなんだけども……。回収人は結構嫌われるんだよね。」
そう告げながら俺はオリヴィアに向かって説明を始めた。
税の回収人は、昔からよくある汚れ仕事の一つとして認識されている。
その理由としては、住民の家々を一軒一軒と周り、税を徴収するからだ。
特に彼らは徴収した税の数パーセントを自身の懐に入れられる権利があるから余計に皆から税として取ったはずのお金を奪っていく悪いやつとして認識されていた。
故にそんな人物たちを雇う権利などは正直いらなかった。
下手にその権利を所有して住民の感情を悪くすれば、その分だけ俺の支持は下がる。
そうならないためにも俺はあえてその権利は選ばなかった。
「でも、戦費の確保はどうするの?
まだ足りないはずじゃなかった?」
「ああ、それは問題ないよ。通行に関する権利と市場開催権があれば回収はできる。」
通行に関する権利はその言葉通りに都市の中に入ってくる物や人物に対して主張する権利だ。
わかりやすく言うと通行税などがそれだ。
何々にはいくらの税が、誰々にはこれぐらいの税が、と言う感じで通行に関する税を導入することもできれば外すこともできる。
特に市場開催権との連携は絶大で、市場開催時には商品の通行税は免税でも発信すれば、市場開催時に多くの商人たちが足を運び、これ一番に商品をあちこちから持ってくるようになる。
そうなれば、都市住民は消費行動を行うようになり、経済が回る。
また、市場開催権には市場で売り買いされている物や出店など出店をしようとする商人に対して幾らかのロイヤリティを得られる権利でもある。
だからこそ、俺は都市住民の税をこの二つで賄おうとしていた。
ついでに、人頭税などの本来の税を安くするのも目的の一つだったりする。
税の安さで寝返りを防ぎ、民の心をガッツリと掴んで離さない。
そうすることで、民は支配されていると言う感情を受けることなく、従うようになる。
その行動はまさに統治者としての手本の如くと言いたい俺だったのだが、問題は俺がタルボット子爵を捉える際に解き放ったオーラだった。
都市に入ってから未だ悲壮感漂う空気に都市住民たちは家に篭り、できるだけ外には出ないようにしていた。
これでは、いくら市場開催権を持ったとしてもメインの住民たちが動いてくれない可能性が高かったが、こればっかりは時が解決してくれる打てる手はなかった。
それに会議前に届いた伝令兵の知らせでは南部ウェールズ連合は軍を再編していると言う情報もあった。
これから先、俺はボンタデュレーからスウォジーへと向かい、これを攻略。
そして、そのまま海岸線に沿って南下し南部ウェールズ連合の首都であるカーディフへと攻め込もうと考えていた。
故に俺はできるだけ端的に物事を決めて、早くも次の都市スウォジーへと駒を進めたかった。
下手に時間がかかり敵軍が集結してしまえば、戦意が低くなりつつある我が軍では立ち向かうことは難しくなってくる。
そうなれば、全てが無駄になってしまう。
そうならないために俺はこの会議で軽く内容等は決めつつも、必要最低限の牙を抜くことを徹底させていた。
反抗の芽を潰し、支配を確立させる。
そうして、再度前を向いて敵を粉砕。
これを繰り返していくことで国力が乏しい我が国ウェストリー王国でもウェールズと言う大規模な土地を統治することが可能となる。
「なら……」と未だ会議を続けるオリヴィアに俺は軽く賠償金の金額を決めると、兵たちに物資の補給と僅かな休息を与える命令を下し、半ば強引に会議を終わらせた。
オリヴィアもこの後の展開を読めているようで会議は特段話し合うことなく、終わってしまい、部隊長たちはキョトンとした顔のまま終わる結果になってしまった。
そうして訪れた寝室で俺は鎧などを外すとそのままベットへダイブした。
前世と比べて硬いベットだったが、どこの世界でも疲れた時はベットへダイブすると言う俺の習慣じみた行動は変わらないようで、俺は疲れを癒した。
そうして、数十分ほど疲れを癒しているとコンコンと扉がノックされる。
「アルトス様。タルボット子爵が話があると。」
そう告げるベディヴィアの声に俺はすぐさま飛び起きると支度をして部屋を後にした。
ベディヴィアとともに廊下を突き進み、捕らえたタルボット子爵を監禁している場所へと赴く。
するとそこには、上半身裸で地べたに這いつくばるタルボット子爵がいた。
依然として震えるタルボット子爵に俺は静かに語りかけた。
「俺を呼んだようだが、話とはなんだ?」
「アルトス様!! ぜひ聞いてもらいたい話が!!」
「だからなんだ? その話というのは。」
戦った時とは違う様子のタルボット子爵に驚きながらも俺は催促するように訊ねた。
「スウォジーのことです!! 私はあの都市の全てを知っている!!
だからその攻略法も!!」
スウォジーの攻略法を知っている。
その言葉に俺は先ほどまでの冗談めいた態度からスイッチを入れたように集中して話を聞くことにした。
次に攻め入る都市の情報は今の俺にとって喉から手が出るほど欲しているものだ。
それをわかっててタルボット子爵は俺に話があると言って俺の興味を誘った。
その対価はまだ分からなかったが、少なくとも兵の消耗が抑えられ勝利が手に入るのであれば俺は聞くに値する情報として幾らかの褒美を考えていた。
「……教えろ。」
静かに告げる俺に、タルボット子爵はビクつくと不敵な笑みを浮かべて話し始めた。
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