#061 『 ボンタデュレーの戦い 』
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翌日。覚悟を決めて戦いの地となるボンタデュレーへと向かう。
その道の半ばで俺は突如、兵たちに砦を築かせた。
まだ、正午にすらなっていないにも関わらずに砦を築けという命令に兵たちは疑問に思うが、俺が怒気を強めた声で命令すると即座に兵たちは言われたように砦を築き始めた。
兵たちが砦を築きつつあった中で俺は騎兵隊を幾人か選抜し、五人一組の計三組を組織し、ボンタデュレー周辺の地域を偵察させた。
組織した偵察隊をよそに、視力の良い弓兵と一部歩兵による威力偵察など、今まで以上の慎重さで敵の動きや敵将の性格などを把握した。
度重なる偵察によって得られた情報をもとに、兵たちによって完成した王族用の天幕で作戦会議を始めた。
「さて、情報を共有しよう。」
そう告げて俺は軍議を始めた。
騎兵で組織した偵察隊曰く、ボンタデュレー周辺の地理は概ね俺の予想通りの小高い丘に湿地帯を潰したもので間違いなかった。
また、危惧していた敵兵による自然を活用した罠なども見当たらなかったため、不安要素であったものが一つ消えたことに対して俺はほっと胸を撫で下ろした。
加えて、歩兵による威力偵察では、ボンタデュレーの城壁は強固で攻城兵器を使ったところでそう簡単に落とせないことがわかった。
さらに、敵兵を指揮するタルボット子爵も慎重派なようで、威力偵察だと早々に見抜いた攻撃に関してもセオリー通りの防御を見せていた。
弓兵からの報告でも、城壁上には優秀な弓兵がいるそうで普段の倍である百八十メートルほど離れていたとしてもほぼ正確に射抜いてきたという。
敵の弓兵射程が二百メートルと長い中で歩兵や騎兵も情報では精鋭揃いときた。もし敵を敗北させるとすれば、将官を煽り、攻めさせるしかないが敵の将官は慎重派のタルボット子爵であるためにその手も使うことはできなかった。
ここまでの準備をしている以上、敵はまさに強いと言わざる終えなかった。
確実にこちらの手を封じてきていた。
とはいえ、俺もただ手をこまねいているわけではない。
我が国の弓兵は二百前後と僅かに敵よりも射程が上だ。
また、歩兵に関しては厳しい規律を守らせ指示系統を順守させているために組織的な攻勢はできるなどの強みがあり、騎兵に関しても騎士の重騎兵と一般的な騎兵たる軽装騎兵に二分化されて組織していた。
「敵の情報はあらかたわかったわけだが、その上で俺はタブリン戦術をやろうと思う。」
「例の新戦術をここでも?」
訊ねるオリヴィアに俺は静かに頷く。
俺は敵には政治的な理由故に長期的な戦術を取る、いわば籠城戦などをすることはないとすでに判断していた。
民の支持を何よりも大事にするという政治性質上、どうしても短期決戦を挑まなくてはならない。
だが、そうなれば俺はタブリン戦術を使うことは明白だ。
故に、敵はそれを見越した行動を要求されるのだが、戦場は水気が多い元湿地帯。足元を掬われる可能性がある騎兵による大規模突撃は容易ではない。
また、俺たちの方でも問題はあった。タブリン戦術は強大な力を発揮する一方で亀の甲羅のように身動きが取れない戦術でもあった。
故に俺は敵が攻勢を仕掛けてこない場合のために逆に攻める方法を模索する必要があった。
そのことを伝えた上で何か案がないかを軍議に参加している皆に問いたものの、オリヴィア含めた皆は「うーん」と声にならない声を発して頭を抱えた。
そんな時だった。
ふと、天幕に入る前に見た攻城兵器のことを思い出す。
岩を飛ばす攻城兵器、投石器を代用して使える戦術があることを思い出す。
それはタブリン戦術と組み合わせることができる他、被害を最小限に抑えることができる他、完膚なきまでに敵を叩きのめせる方法でもあった。
幸いに、騎兵で組織した偵察隊には敵の罠がないことは織り込み済み。
であれば、今思いついた戦術を敵が防ぐことはできない。
とは言え、ギャンブル性の高い戦術であるために勝てるかどうかは実際にやっみないとわからなかった。
「皆、今。妙案を思いついた。」
そう告げて、俺は笑みを浮かべると思い付いた戦術を告げた。
説明すること三十分。ようやくして説明終えた俺にオリヴィアや他の皆はポカンと口を開けたまま呆れ返っていた。
「どうした?」
訊ねる俺にオリヴィアは驚きながらも応えた。
「どうしたも何も! そんなことを思いつくはずがない!!」
「そうか?」
「「そうですよ!!」」
皆から一斉にツッコミを入れられながら、俺はまぁまぁと軽く流すとそのまま軍の指揮をどうするのかという話題に持っていった。
そして、互いに決まった配置と指揮系統、作戦目標を確認した後、軍議を解散させた。
まだ、正午を少し過ぎた頃であるにも関わらず、威力偵察の一つもしてこない中で夜襲を疑った俺はもしもの時を考え、夜間の警備を増やし対策するように兵達に通達を出した。
そして、ゆっくりと天幕ないでくつろぐ中で俺は思い付いた戦術の成功を願いながら疲れた体を癒そうと少しの間、居眠りをした。
◇・◇・◇
そして夜。
そのまま、完全に寝てしまったらしい俺は目を覚ますと外では兵たちが今宵が最後と言わんばかりに騒いでいた。
その様子を見ようと天幕を出た瞬間、そこには食事を持ってきたらしいベディヴィアが佇んでいた。
「どうしました? アルトス様。」
そう告げるベディヴィアに俺は「特に……。」と応えた。
「では、食事の用意ができましたので、こちらへ。」
ベディヴィアに手を握られ再度天幕へと引っ張られた俺は言われるがままにテーブルに座り、出された食事を食べるように言われた。
「そういえば、オリヴィアはどうした。」
訊ねる俺にベディヴィアは短く「水浴びをしに行きました。」とだけ応えた。
数十分後、食事を終え、もはや定番のお口直しのエールを軽く飲んでいた時だった。オリヴィアが天幕内に入ってくる。
「ようやく、起きたのね。」
まるで呆れ果てるように告げるオリヴィアに俺はキョトンとすると、俺が寝ている間のことを教えてくれた。
「アルトス。あなたね、一度寝るとほぼ何をやっても起きないのよ。
水をかけても、ほぼ無反応。揺らそうが、叩こうがうんともすんとも反応しない。まるで死体よ。し・た・い!」
寝ている人のことを死体呼ばわりするのはいかがなものかと思ったが、そこまで無反応であったことに俺は驚いた。
前世では俺は結構、敏感で学校で昼寝している時でさえ、近づいてくる人がいれば即座に目を覚ましていた。
そのため、寝ている俺に悪戯をし変えようとする同じクラスメイトからは隙がないと言われていたこともあった。
それなのに、オリヴィアの話では全くの正反対だったという。
反応がないほどに熟睡したつもりはないが、仮にそうだとしても、少なくとも水をかけた場合には起きて然るべきだと俺は思った。
なにせ、寝ている人に水をかけた場合には生命本能が刺激され、脳が直後に目を覚ますように命令を下すはずなのだ。
にもかからずに起きないのは余程の馬鹿なのか、図太い神経を持っただけなのか。
どちらにせよ、俺は不思議と何かが引っかかる感じがした。
◇・◇・◇
翌朝、我が軍と敵軍の両軍ともが睨み合う中でボンタデュレー周辺で陣形を構築する。
我が軍は中央にタブリン戦術を利用した堀と柵、そして歩兵の殆どと弓兵を配置し、俺から見て左側––––––––戦場からすれば北側に騎兵を集中させた。
対する敵は前方を騎兵などの部隊が後方を歩兵や弓兵などに任せた突撃陣形を組んでいた。
戦場の南側、俺から見て右側にはボンタデュレーの都市が硬く城門を閉ざしており、戦場となる平地の中央にはいくつかの川が流れていた。
そして、交戦前の儀式たる降伏勧告を互いに済ませて戦いに備えた。
太陽が丁度、正午の位置にくるとタルボット子爵は動いた。
前方の騎兵達が全速力で平地を駆けめぐり、突撃してくる中で俺は左翼に居た騎兵隊に攻勢に出るように号令を出す。
また、中央の軍には十分な距離まで敵を射掛けることなく待機するように命令を下した。
ゴゴオオオォォォォと地響きをならせながら突撃してくる敵に俺は右手を下ろして「撃て」と命令を下す。
刹那、放たれる矢が雨のように敵に降り注ぎ、敵は一気に数を減らす。
だが、それでも突撃してくるのをやめない敵に俺は第二射、第三射を射掛けるように命令を下し、敵の突撃を防いだ。
一方で左翼では、敵騎兵の一部と我が軍がぶつかっていた。
とは言え、数で勝る我が軍が敵騎兵を圧倒し、即座に左翼での優位を確立する。
そしてそのまま、敵の左側面を攻撃するように襲いかかったその時、俺はタイミングよく例の戦術を始めた。
ヒュンと音を鳴らしながら放たれる岩は戦場を横断し、敵の後方。歩兵のいる場所まで届き、壮大な音と衝撃をもたらした。
バコン
敵の歩兵が薙ぎ倒され、歩兵達は一気に恐怖へと包まれる。
突如として降ってくる岩の恐怖に兵達は慌てふためき一気にパニックに陥り、指揮系統が麻痺する。
そのタイミングを見計らって、左翼での優位を確立した我が軍の騎兵達が一気に押し寄せ、突撃する。
まともな判断を奪われた中での騎兵突撃に敵歩兵達は慌てふためき右往左往とするがそこを容赦無く我が軍が叩きのめす。
歩兵に押され、弓兵たちは構えることなく騎兵に蹂躙され、敵騎兵達は目の前の主力から狙われていて動けなかった。
仮に、一度撤退して、我が軍の騎兵に目標を変えても、その瞬間に俺は攻勢に出てきてしまい、総攻撃が始まることになる。
常識破りの攻勢に敵は混乱を極めた。
その時だった。何もかもうまくいっていたその瞬間俺は背後からの殺意に気がつき、振り返った。
刹那、どこからともなく現れた騎兵に兵達がやられ、俺は即座に腰にかけた剣を抜いた。
「ここで終わりだ!! アルトス王よ!!!」
そう告げる一際豪華な鎧を身に纏った将兵は、俺に向けて剣を振りかざした。
振り下ろされた剣を俺が間一髪で剣で受け止めると同時に兵達が異変に気がついて、一気に俺を守ろうと剣を抜いて応戦する。
「まさか、ご本人登場とはな! 驚いたぜ!! タルボット子爵!!!!!」
「貴様のような若造に殺されるほど落ちぶれちゃいない!!」
剣を弾き、俺は馬上にいるタルボットを引き摺り下ろそうとする。
だが、タルボット子爵は馬の扱いに慣れているのか落ちる気配などはなく容赦ない一撃を喰らわせようと再度、剣を振りかざした。
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