#052 『 進路 』
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仮にも国王と王妃である俺とオリヴィアは配下からの不必要な配慮によって同室となった。
確かに国王には次期後継者の選定が必要であるし、王妃には次期国王を産む義務があるのは理解していた。
しかし、それは何も戦争の最中でのほんのひと時の休息時にやるべきことではないと俺は思っていた。
「アルトス……変じゃない?」
そう、目の前の女性を見るまでは……。
十分––––––––それが俺とオリヴィアが静まり返って無言で過ごした時間だった。
結局のところ、オリヴィアは何も理解していなかったというよりも言われるがままの状態だった。
恐らく配下のものが下手に夜這いをかけてはどうですか的なノリで俺に迫るようにいったに違いないが、俺にはそんな気などはさらさらなかった。
というのも、現在は俺は戦争中で明日死ぬかもしれない戦場の中を駆け巡らねばならない。
そんな状況下で子種を作るなど俺にはできなかった。
というよりもその気が起きなかった。なにせ、今は全力で前だけを見ることが重要だったからだ。
故に、俺は薄着のひらひらとしたスリップを身に纏っていたオリヴィアを見ると即座に流れを理解した。
恥ずかしそう顔を赤くして短いスリップの端を可愛らしく掴むその姿を見てドキッと心が一瞬動きかけたが即座に、理性が駆け巡る衝動を抑えて俺を落ち着かせた。
その後、色々と説明すること数分。
内容を理解したオリヴィアはあまりの恥ずかしさ故に顔を手で隠し、ベットへダイブした。
バタバタと足を振る様子に俺は可愛らしいと思いながら寝る準備を始めた。
上着を脱ぎ、中身のシャツとズボンのままベットへ入った。
ズボンを脱がないのは従来の俺のスタイルだからではなく、戦時である現在の状況を鑑みて、伝令兵からの報告一つで飛び起きてすぐにでも指揮できるようにするためだった。
そのため、俺は上着だけを先ほどまで座っていた椅子に掛けてベットへと入った。
この世界でのベットは前世と比べれば硬く寝心地は悪いが、今現在のこのベットはこの世界基準で言うとかなりの高級なベットであり、非常に珍しいものだった。
村人は藁の山に大きめの布を引いただけのザ藁ベット。
平民や商人は敷布団の中身が藁のベットを。そして、大商人や貴族、王族クラスで初めて藁ではなく真にベットと呼ばれる形態と言える羽毛ベットがある。
その他にも様々なベットがあるが基本的にはこの認識で間違いない。
特に、平民と村人が同じ––––––––形態こそ違うが––––––––藁ベットであったことには個人的に驚いた。
とはいえ、羽毛ベットは非常に高く、大商人の中でもごく少数。貴族でも奮発して買える程度の高級品だった。
そんなこの世界の超高級品のベットを俺は硬くて寝心地が悪いベットとして悪く思っていた。
だが、こればっかりは仕方がない。なにせ前世とは違いこの世界ではまず物がないし、職人も少ないからだった。
作りたくても物がなければ作れない上に、それらを扱えるだけの腕を持つ凄腕職人もこの世界では数少ない。
特に、ベット職人なんかは恐らくこのアルビオン島全域を探しても十人いるかどうかの世界だ。
そんな人を探し当てて専属で雇うとなればどれくらいのお金が必要になるのか。想像するだけで嫌になる。
また、前世ではともかく今の俺というのは国王であるためにあまり散財はできない。なにせ、俺の資産の出どころは基本、民からの税が主であるためだ。
自分たちの税が国王の趣味に使われていると思われれば民は一気に俺に詰め寄ることになる。
そうならないためにも俺はできるだけ無駄遣いせずに必要なところにお金を優先的に回していた。
とはいえ、それでも最低限のものは必要なのである程度の品質のものを俺は利用していた。
そんなことをふと頭に俺は隣を見る。
そこには今なおも頭から煙を出しそうなくらいに恥ずかしがっているオリヴィアが枕に顔を埋めていた。
その様子を見てかけるべき言葉がどれなのかをあまり知らない俺はそっとしておくことにすると目を瞑り、僅かな平和な一時を過ごした。
◇・◇・◇
翌日。朝食を終え、身支度を整えている間に報告を受けた。
ケレディジョンから集めた兵や出立準備などは全て完了していた。
一部、部隊長クラスの人たちからケレディジョンからの兵が少ないとして異議申し出があったが俺はそれを却下した。
確かに、ケレディジョンからの兵は総勢八百人ほどの少数ではあるが、それはあくまでもこの都市カーディガンからしか招集していなかったからだった。
その理由もケレディジョンは我が国のように常備軍制度を持っておらず、必要に応じて軍を招集し戦うという制度を取っていたからだった。
ケレディジョンは基本的に都市防衛にしか兵がいないために兵の数は少ない反面、未開拓の地に深く侵攻しようと考える人も少ないために必要最小限の兵力しか持っていなかった。
故にそうした中で八百人も出したことに俺はむしろ驚いた。
カーディガンのような大きな都市では最低でも三百人の兵を常駐させなければいけない。
これは、物資の検査や犯罪が発生した時の動員も含めての数だ。
しかし、この三百人の人数より百人も少ない人数で都市を防衛するということはそれだけ俺たちのことが恐ろしくあるということの裏返しでもあった。
また、常備軍を持たないケレディジョンでは都市民にも逮捕権があり、いざというときは自分の身は自分で守れということになる。
「では、行こうか。」
俺の掛け声に、兵たちは「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」と声を上げる。
やはり、昨日の長めの休息と酒、女性たちが兵たちには十分なストレス発散になったのだろう。
しかし、ここからはそうした休息も取れなくなってくる。
恐らく次取れるとしたら南部ウェールズ連合との戦い前になる。
それまで俺はできるだけ兵力を温存しながら戦うしかない。
そう考えて俺はカーディガンを出発した。
カーディガンを出発し俺はこれから進むルートを確認した。
俺たちが進むルートというのは未開拓の森を突き進むルートで危険は多いがその分、直線的にカーディガンとミルフォードを繋いでいた。
そのため早さを求めている俺はこのルートをとった。
兵たちにも事前に通達済みであり、もし何かあってもパニックにならずに部隊長の命令を聞くように厳命した。
これで森の中から何かが出てきてもある程度は対処できるようになっていた。
とはいえ、安全は必要で俺は軍が森に入るまでに事前に偵察兵を出して周辺の地形を確認させた。
幸い、未だどこからも危険だという報告は上がっていないために俺は軍をゆっくりと進ませていた。
侵攻ルート的に最低でも二日間はこの森で過ごすことになるがその分、隠密性が上がり、敵に悟られないために命を脅かされるような危険は少ないと思えた。
◇・◇・◇
数時間後。
そろそろというところで俺は全軍停止を命じると夜に向けて野営の準備をさせた。
森での野営は平地での野営と違い、完全な砦を築くことはないが最低限に堀と壁を構築させていた。
櫓も通常よりは低めにしか作れず、そこまで遠くを見通せなかったがそれでも築かせたのにはちゃんとした理由があった。
前世では森といえば木が多く存在する場所程度にしか考えていなかったがその実態は少しばかり違う。
なにせ、それで想像できる森というのは皆、人間の手が入った植林の森だったりするのだ。
前世の日本でも木を切りすぎて禿山になり、土砂災害が増えたことが問題となったことがあった。その際の解決策として、早く育つと言われる杉を禿山に植え育てたことで、現状でも美しい自然が保たれていた。
そういう歴史があるからこそ、森というは木が集まった場所と連想され、動物たちも可愛らしいのがおり、獰猛で危険な動物は少ないと思っていた。
しかし、実際の森というのは違う。
獰猛な森の獣たちが存在し、足場が悪く、場所によっては日の光が地面にまで届かない闇の世界そのものだった。
前世でも恐怖のあまり、森の名前自体に“黒い森”があった。
それほどまでに森というものは人々に恐れられた反面資源の源として重宝さてていた。
そんな、森を前に俺は戦後、どのように活用すべきかを考えていた。
デヒューバース地方における森林地帯は多く、およそ地方領域の七割が森林で覆われていた。
そのうち二割型が山で、残り一割が人口が住む都市や周辺の農耕地だった。
正直、未開拓にもほどがあると思うが、今はそういってられるものでもなく俺は必死に考えた。
数分という時間を注ぎ込んで思いついたのが軍艦の建造だった。
現状、軍艦は大型のコブ船を改良したものを使っていた。俺はこれを正式な戦列艦にすべく、今ある船をより大型化して、大砲などを詰められるようにしようと考えていた。
しかし、現状のウェストリー王国の領土内には森が少なく、もし切ってしまえばすぐに森がなくなり土砂災害などが発生しかねなかったため断念していた。
だが、デヒューバースの森林があれば、豊富な木材が取れるだけでなく、今まで森だった場所を切り拓けば、地面には栄養豊富な森の地面があらわとなり、農業、畜産業を行えるようになる。
栄養豊富な土を使い、農業を広めれば食料自給率はさらに上がり国家内での餓死者数は減ることになる。
また、森林の伐採に置いては必要な人材は多くいるために経済的にやむを得ない状態で犯罪者に転落する者も少なくなる。
一次産業が活性化すれば経済が周り税の回収もしやすく、また民の所得の増加によって税収入もその分だけ上がっていくことになる。
加えて、余った木材は海軍の軍艦などで使用することで消費を促し、自国内の造船所を沸かせることができるほか、この際にエネルギー資源を木材から作られる木炭から石炭へと移行することもできるようになる。
木炭ではなく石炭を使えるようになれば、より丈夫な鉄を精錬することができるほか、効率がよくなり、職を提供することができるようになる。
まさに良いこと尽くめの政策ではあるが、問題はそのために必要とされる初期の資金の莫大さと今回の戦争における確固たる勝利が重くのしかかってきた。
また、小言を言われるな。
内心でそう思い、小言を言うエドモンドとロタールのことを想像する。
二人とも、経済や財政に明るいこともありなんとか我が国が財政破綻するようなことはないがそれでも結構な気苦労を掛けていた。
「この戦いが終わったら、あいつらを褒めないとな。」
俺は本国の方角を向いてそっと一人、呟いた。
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