#051 『 ケレディジョン 』
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ランビターを出立してから三日。
ようやく俺たちはカーディガンへとたどり着いた。
聳える城壁を前に、俺は兵を展開し旗を掲げる。
その様子に城壁上の兵達は慌てふためき、数十分で《《青旗》》をあげた。
「降伏か……。」
一人、ボソッと呟くように告げる。そして一呼吸を置いて俺は兵達に命令を下し、そのままカーディガンへと入城した。
その際には、城壁上の兵達は勢いよく青旗をふり続けた。
青旗はこの世界において降伏を示す旗とされている。
その理由としては様々あるだろうが、主に青色が与える清潔、爽やかなイメージからきているのだと推測している。
元々、前世の知識を持つ俺からすれば不自然極まりないが他の兵達はなんら疑うことなくその意味を理解しているために問題はなかった。
ちなみに、青旗の他にも黄旗、赤旗、緑旗が存在する。黄旗は交渉を。赤旗は継戦を。緑旗は休戦を意味しているらしい。
俺からすれば、どれも違和感丸出しだが、旗の色でもわかるその意味は非常に便利だった。
なにせ直接、敵に兵を送り込むことなく相手の意思を理解することができるからだった。この世界には国際法というものはなく、国を縛る国際的な条約などはない。
それがどういうことを意味するか。
それは捕虜を面白半分に拷問しようが人体実験に使おうが何ら問題はないということになる。
とはいえだ、俺はそのようなことはしない。
国際法がなければ、守る必要性はないかもしれないが、その分だけ自国のメリットが増える。
例えば、敵国と戦争中に敵国の兵が捕虜となれば、容易に敵軍の情報を聞き出しやすくなるほか、待遇のよさを理由に降伏する者も増加する。
そうなれば、戦わずして敵に勝ることができる。
さて、そんなことを考えていると俺は城門を兵と共にくぐり抜けて都市へと入城を果たす。
城門から都市の深くまで通っている中央道りをゆっくりと歩き、俺が新しい支配者だということを都市に住む民の脳裏に植え付ける。
しかし、都市内の民はあまりにも若すぎる俺を見て不安そうな視線を向けてくる。
当然だ。なにせ、若干十五歳の下に付き従えと言われているのだから。
だが、例え見た目は十五歳だろうとも転生前の年齢を重ねれば、すでに三十七歳だ。
そんなことだから俺に不安の眼差しを向けるのは間違っている。
とはいえ、そのようなことを告げることはできない。
なにせ、ここは中世だ。下手なことを告げれば宗教裁判などに持ち込まれてしまう。
そうなれば、例えどのように反論しようとも有罪は確定する。
そうならないように俺は、この秘密を隠し通す一方で人類の発展には大いに活用させようと思っていた。
魔法というチートがある世界で唯一人類はそのチートを使うことができない。
そんな明らかに不利なゲームをほぼ何もない最初からの状態で俺はどうにかして安全を確保しなければならなかった。
この世界は前世とは明らかに違い、過酷だ。
食事は味付けの薄い簡単なものばかりで基本的に肉がメインだが臭みがすごい。
今でこそ、だいぶなれてきて一般的に食べられるようにはなったが最初の頃は食べ物を見るたびに嘔吐を催したものだ。
それにこの世界では衛生概念がない。風呂もなければ、シャワーなどもない。
せいぜい、体の汚れを拭き落とすくらいだが、それでは元日本人の俺は満足できない。
とはいえ、そんな風呂系で驚いたのはサウナがあることだった。
個人的にあまり、サウナは好きではなかったが中世にサウナがあるのは驚いた。だが、サウナがあるとはいえあくまでも水蒸気で体を綺麗にするという考えしかないために、もはやサウナは蒸気風呂のようになっていた。
また、休みたいが故に風邪など引こうものなら即荒治療が始まる。
最初は気合と根性でその後は水銀などの毒物を混ぜた薬物を飲まされる。
それでも治らなければ血を抜き、最後に司祭に祈りを捧げてもらう。
もはやどこの世界の拷問だとでもいえそうな流れに俺は心底、呆れ果てた。
中世が暗黒時代と呼ばれた理由の一片を垣間見えたのはまさに、この世界の医者が自信満々にそう告げた時だった。
今現在では無駄な患者の犠牲者を増やさまいと俺が知り得る限りの衛生学や医学に関する情報をまとめて本にしており、ホーリー城の書庫に大切に保管させていた。
元々、医学生を目指して頑張ったが結果的に挫折することになった俺が今になって、そのような知識が役立つとは思いもしなかった。
ただ、それでもこの世界は平和ボケしすぎた前世とは違い、活気に溢れている。だからこそ、俺は前世より現世の方がいくらかマシだと思えた。
「アルトス王よ。」
跪く老いた男に俺は馬上から降りて顔をあげさせる。
「そう畏るでない。それよりも詳細を詰めようではないか。」
そう告げながら俺は城の案内を急かす。
城へと入り、会議室を案内されながら俺は事前にまとめた条件を思い出す。
「ここです。」
扉を開けるとそこはいかにもな会議室があった。
特に目立った装飾品はなく、むしろ質素という方がまだ美徳ある言い方だなとさえ思えてくるほど最低限なものしかなった。
互いが対面になるように席に座ると俺は話始めた。
「さて、降伏における我が軍の要求は三つある。
一に、ケレディジョン領は全て併合する。これはそこに住む民も含むということだ。
二に、今戦争における賠償金の請求だ。だが、開拓資金もない領にお金をせびるなどおかしいだろう。よって賠償金が支払えないのであれば兵力の無償提供をすること。
三に、現領主の妻子を我が本国のホーリーヘッドへと移住させること。
以上だこれらを全て受け入れれば我々はお前達を受け入れよう。」
優しい笑みを浮かべて告げる俺に長年支えてきたであろう男達はヒソヒソと話し合う。
この条件は俺が以前より決めていたことのほかにケレディジョンの現状をこの目で見て、他の者と相談した結果のものだった。
そもそも領内全ての領土の併合は王国の発展のためには必要不可欠だった。
なにせ、封建主義的な政治体制である現状を打破するには中央集権化が必要になってくる。
とはいえ、それをしようにも貴族は自分の収入が減ることへの疑念があるために簡単には首を縦には振らない。であれば、振らせるほど負かせるしかない。
無論、戦わずして領土の献上をさせることはできる。しかし、それでは時間がかかってしまう上に労力が結構かかる。
だからこそ、今回は例え少し無理をしても武力による併合を認めさせるしかなかった。
また、第二の条件も同じだ。
今回の三国同盟とのの戦争は正直予想外すぎて俺も焦った。
いつかは戦うことにはなるという俺の希望的観測が状況を見誤り、現在の問題を起こしたのは言うまでもない。
だからといってはいそうです。というわけにはいかない。
なにせ、俺の肩には本国の皆の命がかかっているからだ。
故に、少しでも兵力を賄うためにもこの第二条件の受け入れは必要だった。
そして第三の条件。これは一言で言ってしまえば人質だった。
妻と息子や娘を俺の手元に起き、変な行動をとれば即座に彼らの首を取る。
まさに、前世での江戸時代の徳川が行った政策だった。
これで反乱の芽を抑えると同時に、参勤交代制度による経済の活性化が少なからず図ることができるようになる。
それに付随して、時期当主となる息子や娘たちには最新の俺の持つ前世の知識を交えた教育を施すことで将来、優秀な人材となって活躍できるようになる。
そういったことを踏まえて俺は第三の条件にこのようなものを付け加えた。
そんな条件を男達は考えること十分。
あきらめるように俺の提案した条件を全て受け入れた。
これで兵力の増強とケレディジョンの併合はある意味終わった。
残るは先はペンブルックとカーマゼンだけだった。とはいえだ、ペンブルックは問題なく降伏すると考えていた。
なにせ、こちらにはペンブルック伯爵が捕虜としているのだから。
ただ、問題があるとすればカーマゼンだった。
カーマゼン侯は先の戦いには参加していなかった。
兵達によれば、後日遅れて参加するとのことだったが依然として姿が見えていなかった。防衛拠点からの定期報告においてもカーマゼン軍が攻めてきたなんて情報は入っていなかった。
ということは、カーマゼン軍は自領に籠っていることになる。
そう考えた俺は持ってきた伝書鳩を通じてイザベルへカーマゼン含む南部ウェールズ連合について調べるように記し伝書鳩を飛ばした。
これでペンブルックを支配している途中で俺はカーマゼン軍の動向とこれから先の戦いの対局を見ることができるようになる。
下手をすれば命取りになりかねないこの状況の中で俺は考えを振り絞った。
「会議は終わった?」
城から出て今晩泊まる館に移動する際に、訊ねてくるオリヴィアに俺は「ああ。」とだけ返す。
まだ、正午と以前休むには早い時間帯だが俺は長めの休息を得るにはこのあいミングしかないと考えて、兵に必要な食料と水、物資などの準備をケレディジョン側に任せると兵達には休息を与えた。
酒や食事が必要なものには提供し、欲を満たしたいものには先程の会議で決め、用意させた娼館を利用するように通達した。
また兵力の提供においても都市防衛が可能な程度を残す以外の正規兵のみの全兵力をよこすように伝えたため、ケレディジョン側の兵達は慌ただしく動いていた。
これで少なくとも兵達のストレスは発散されることになったが問題は時間だった。
◇・◇・◇
「もうすぐ一ヶ月か……。」
同室のオリヴィアが着替えている中で俺は窓の向こう側を眺めながら考えた。
作戦可能な時期は二、三ヶ月と予想される上ですでに約一ヶ月、正確には三週間が過ぎようとしていた。このままでは南部ウェールズ連合とことを構えると同時にタイムリミットが来てしまい、敗北が濃厚となる。
それを防ぐためには今以上に早く移動して敵を降伏させるしかないが、そのようなことはすぐにはできない。
ましてやここは未開拓の地が多い。そんな道もない場所で軍を早く動かすなど難しい。
どうすれば……。
脳内でただそれだけを繰り返し、呟きながらさまざまな可能性をシュミレートする。
しかし、依然として解決策が浮かばない中で俺は思考を止めるとベディヴィアに注がせていたエールを口に含ませた。
右手はあれ以来、特に光るようなことはなかった。
だが、俺は薄々何かを感じていた。
あの瞬間、光が照らし出された瞬間に朧げながら見えた美しい西洋人の女性に俺は一瞬ときめかされた。
美しいという言葉だけでは表現のしようがないその女性を見て俺はどこか懐かしく感じた。
誰からわからず、顔も見えなかったがどこかであったようなことがあるその女性に俺はふと思い出すように考えた。
だが答えなど出るはずもなく、俺は早々に諦め脳を休ませた。
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