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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
53/70

#050 『 出立 』

毎日投稿 20日目!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 ランビターで敵の正規兵と傭兵を分け終わるとすぐさま、ミルフォードへ向かうべく出発した。

 その際オリヴィアは俺に近寄ってきて、なぜ傭兵を雇い直したのかを耳打ちで訊ねてきた。


「傭兵は指揮が難しく、また装備に統一性がないために乱戦状態では敵か味方か一見して見分けがつかない。また、傭兵は命あっての物種だからな。

 金にがめつい上に勝てる戦にしかまともに戦わないとデメリットが多いものだが、代わりに彼らの命は《《安い》》と言える。

 彼らを肉の盾として最前線に配置し、その後方を正規兵で固める。

 傭兵を敵にぶつけ、逃げてくるようであれば敵もろとも殺せばいい。

 そうすることで敵に損害を与えることができるし、例え敵前逃亡しても殺してしまえば、盗賊になって周辺住民の脅威にはならない。」


「そこまでする必要ある?」


 俺の答えに若干オリヴィアは怪訝な顔を浮かべながら再度問う。


「正直ないな。ただ、野放しにして盗賊になられると討伐が面倒になるかな。

 処理は一度にまとめてきれいにしたいし。

 それに何も彼らを見捨てたわけではない。むしろ敵と相対した時に頑張ってくれるのであればその分だけ報酬に上乗せして支払うつもりだし、生かして解放するつもりでもいる。

 ただ、それは今ではない。まずは彼らが証明してくれないと俺も釈放の余地があるかないかなどわからないからな。」


 語る俺にオリヴィアは苦笑する。


 とはいえ、盗賊の類は俺は許さないというふうにしている。

 その理由としては以前、襲われたことがあるからという至極個人的な要素もあるが実の所は、民からの要望で一番多かったのが盗賊関連だったのだ。


 本国のウェストリー王国では、領主たる俺に意見できる制度を仮作りしており、各都市の城には必ず目安箱が存在する。

 これは週に一度回収され、それらをまとめて伝令兵がホーリー城へ集めて俺に渡される仕組みになっている。

 この制度は、前世の知識を持つ俺が前世の倫理観と現世での倫理観に対してどう折り合いをつけていくのかを測るために行ったものであるのと同時に民からは俺がどうあって欲しいのかという意見を求めたから生まれた制度でもある。


 そんな目安箱は当初、必要あるのかないのかで一悶着したが、俺が確固たる意思を持って断行したことで現在では実行されている。

 また、実行する際に全都市に公布したことで文字の読み書きができる多くの商人たちはこぞって目安箱に飛んで意見を書き記したらしい。

 その際にウェストリー王国ではちょっとした目安箱ブームになり、平民から商人、豪族、貴族と言った具合で各々が領主とはどうあるべきなのか、どう統一すべきなのかを討論し、喧嘩騒ぎまで起きたことがあった。


 そんなこんなの目安箱制度だが、やはりというべきか一番多かったものは商人による盗賊の討伐に関してだった。

 商人はこの世界で参政権を持っていない。

 故に、こうした目安箱は唯一と言ってもいいほどに自分の政治的意見が通る場所だ。そこで一番言いたいのは盗賊による被害の補填であったり、盗賊に合いそうな場所への定期的な護衛や盗賊の討伐。

 都市への通行税や入場税などの税に関する物事への不満など様々だが、どれも盗賊が原因となっているがためのものだった。


 そこで俺は新兵を利用し、実践訓練と称した盗賊討伐を行なっていた。

 新兵は新兵たる故に実際の戦場を知らないことが多い。

 故に盗賊討伐を行うその過程で人を殺すという行為に慣れさせるとともに、逆に殺される危険性を知らしめる。加えて、死体に慣れさせることも同時に行なっている。

 こうすれば、いざ戦場に出たとしても迫る敵を前に逃げるようなことはしない。

 当然、盗賊とは違い正規兵は強いために実際にはそうならないかもしれないが、ある程度維持できれば万々歳だ。

 使えない新兵よりかはある程度使える新兵を持つことこそが重要であり、彼らが成長すれば優秀な兵になってくれるそうした希望があるからこそ俺は商人の意見を取り入れ、商人には耳を傾けていることを示し、新兵には実践の場を提供する。

 敵は盗賊という犯罪者であるために切り捨てても問題はなく、むしろ民からは歓迎され、俺の指示は上がり続ける。

 その結果、民は安心して生活を営めるようになるという計算され尽くした出来事がドミノが倒れるように次々と起こる。


 だからこそ、俺が戦争などでお金で困った時は商人達が融資してくれてもいる。なにせ、彼らの不安要因を一つ消すのと同時に本来は聞き入れるはずの無い要望に応えているからだ。

 要望をかさに相手に要求するのはある種の恐喝だと思おうが背に腹は変えられない今、俺は断行していた。


「陛下、そろそろかと。」


 そう告げるベディヴィアに俺は「そうだな。」と軽く返すと兵達に野営の準備させた。


 空はすでに正午を超えたくらいだが、ここで休みを取らなければ連続しての行軍は厳しい上、兵達の士気に関わる。

 そのために、早めに野営の準備を行い、兵達に休憩を長く取らせた。


 兵には事前に野営拠点の築き方を施しているために、ほんの四時間くらいで野営拠点ができた。

 前世の古代ローマ帝国のカステラをイメージしたこの拠点作りは現世におけるウェストリー王国軍の十八番だった。


 敵の領域内で安全地帯を作ることで兵達を安心させると同時に敵の将軍や領主には多大なプレッシャーを与えるこの拠点は、俺がわざわざ導入したものだった。

 とはいえ、未だお粗末なところは多く、そのほとんどは見掛け倒し感がいがめないが敵からすれば十分な脅威だ。俺としてはわざわざ兵達を導入して作るからには安全に作りたいのだが、兵達の多くは戦うことはできてもものづくりのような繊細なことはできないことが多かった。

 そのために俺はまず、全ての兵に工兵としての基礎を学んでもらい、幾度となく練習させた。

 特に、今回の防衛戦構築ではそれらが発揮され、最初は二日かけてできたていたのが今では四時間程度で築城できていた。

 しかし、これにはもちろんデメリットもある。

 まず、兵達一人一人に築城するための建材を運んでもらわないといけないために、兵の一人当たりが背負う重量が増加することだった。

 重量の増加は兵の消耗を加速させ、軍としての機動性は低下する事になる。


 そんなデメリットがある中で俺が敵領域内での築城に拘ったのには理由がある。

 まず、精神的なプレッシャーを敵に与えることができるということ。

 次に、兵達に安全地帯を提供できること。

 そして最後に、俺自身が攻撃よりも防衛が得意からだった。


 攻勢によく出る俺だが、俺が知っている攻勢戦術は少ない。

 むしろ、殻にこもって戦う防衛戦の方がよく知っているし、戦える。

 とはいえ、民を率いる王が常に殻に籠るわけにもいかない。

 仮にそのようなことをすれば、民の心は早急に失われ、王国は壊滅する。

 戦に勝ち、民に力をみせることも王に課せられた宿命なのだ。

 故に俺は攻勢に出てはいるが望んで出てはいない。だが、何かしらの勝算がなくては俺も出るようなことはしない。

 

 そういった俺自身の考えがあるからこそ、俺はこのような築城を行わせた。


 また、兵に関しても俺は陸軍を編成し直し、新たに歩兵、槍兵、弓兵、騎兵、砲兵の五科を作った。

 歩兵、槍兵、弓兵はそのまま、騎兵に関しては軽装騎兵と重装騎兵の二種類に分けた。また砲兵という新たな兵科を作った。

 これは前世のナポレオンのような大砲がある時代だからではなく、むしろここでいう砲兵はバリスタや投石機などの攻城兵器をメインに扱う兵科だった。

 だからこそ、俺はこの攻城兵器を扱う兵を大砲を扱うみたいに砲兵とした。

 将来的には大砲なども整備し導入したいという考えがあるが、未だ火薬の量産ができない状況かつその研究に回せるだけの資金も人材もないことから当面の間は断念していた。


 しかし、大砲は必須の技術であるために俺はこの戦争が終わり次第に研究費と人材を集めさせようとしていた。


「陛下、どうぞ。」


 そう言いながら、ベディヴィアは持ってきたエールを俺のカップに注ぐ。


 すでに野営の根本は出来上がり、残すところは各兵達のテントと防衛のための櫓だった。

 空ももう一時間もしないくらいに夕日が見えてくるそんな時間に俺は迎撃軍を砦に引き戻した。


 野営拠点を作るには大きく分けて三つの工程がある。

 一つは整地。次に築城、最後に野営だ。

 整地は地面を平らにするだけでなく、堀を作ったりする。

 築城は堀の内側に壁を築き、櫓を作る。

 野営はテントなどをはり食事の用意や武器の手入れができるようにする。

 という感じで作られていく。

 特に整地から築城の際には注意が必要でその間に攻められないように軍を半分に分けなければならない。


 襲撃に備える軍と築城を始める軍。

 無論、どちらも敵が来れば戦うがそれまでの足止め部隊として襲撃に備える軍が必要なのだ。

 そして、彼らは、築城が完成次第に壁に登り、櫓に籠って警戒を行う。

 そうして、築城が完成次第に野営の準備を行い、食事と休憩を楽しむ。

 とはいえ、敵陣のど真ん中で気軽に休むには警戒を怠らないことが重要だ。


 そのため、兵には各部隊ごとに一定の人数を出すように志願者を募ったり、くじ引きで決めたり、部隊内のルールを設けさせて警備を行う人数を出していた。


 警備を行う人物が何かしらの理由で警戒を怠った場合には、最悪処刑されるため危険ではあるが、その分手当をつけるために決して志願者は少なくない。


 そんなことを考えていると天幕にオリヴィアが入ってくる。


 手には鳩がおり、その鳩の足には筒があった。

 鳩を抑え、ゆっくりと筒を開けて中の手紙を出すと俺は手紙に記された内容を呼び始めた。


 手紙の内容は物資の輸送に関するものと三国同盟に関する情報が盛り込まれていた。

 物資は今まで通りに輸送できるが問題としてはエール島の海軍が海賊に紛れて海路を邪魔していることだった。

 現状、エクトル指揮の元に海軍は動いているが、最悪の場合には物資の輸送が遅れることが記載されていた。

 また、エール島におけるエリンとエルニアの戦いに際して未だ救援要請は来ていないらしく、どうも風向きもおかしなようになっているという情報が出てきていた。

 とはいえ、エール島に関することは今すぐさまどうにかできる内容ではないためにとりあえず情報のみをもらい、保留にしていた。

 そして、三国同盟に関してはヨークがシュルーズに入城を果たし、そのまま占領。その際にアルビオンとの摩擦が起きたが、今現在では特に目立った争い事は起こっていなかった。

 とはいえ、アルビオンはヨークに疑念を募らせており、これを利用して同盟を破綻させることができるのではないかというイザベルからの提案が記されていた。


「なるほど。これは面白くなってきた。」


 そう告げる俺にオリヴィアは苦笑し、ベディヴィアは静かに頷いた。


読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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