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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
51/70

#048 『 決戦前夜 』

毎日投稿 18日目!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

「まずいな……。」


 イザベルの報告をオリヴィアから受けた俺は頭を抱えた。


 イザベルからの報告では、アルビオン島の隣にある島エール島の北部を支配する現同盟国のエルニア王国が三国同盟加盟国のエール島南部を支配するエリン王国に攻められたということのほかに救援を求めているということだった


 現状、我が国はこれ以上に戦線を広げないための餌、または盾として俺はエルニア聖国との同盟を説いてきた。

 エリン王国の求めるものは昔から変わらず、エール島の統一だ。


 幾多の年月と犠牲を払い続けようやく手に入れたチャンスをエリンは逃すことなく掴み取ろうとしていた。

 エルニア聖国は昔から宗教の力を借りて信者を伸ばし、その支配領域を増加させていった。

 同時にエリンは力によってその支配領域を増やしていった。

 信じる者とねじ伏せる者。両者相入れない中で、エール島という土地をめぐり争いあった。


 しかし、それも今までの話。

 この戦いで勝てばエリン王国は名実ともにエール島を支配することになる。

 そうなることを防ぐためにはやはりウェストリー王国から援軍を出すしかあるまい。

 ただ、問題となるのは出せる兵士がいないということだった。

 仮に、予備兵を使って兵を出せば、恐らくエリン王国の侵攻を防ぐことが可能となる。

 だが、その場合には本国及び戦争の主戦線に予備の兵力がなくなることを意味する。予備の兵力を失えば、それこそ戦線を突破された途端に総崩れを行うことになる。

 それがわかっているからこそ俺はエルニア聖国の援軍要請について頭を悩ませていた。


 幸いにエルニア聖国からの正式な要請ではなく、イザベルからの速報であるが故に、まだ考える時間はある。

 だが、これで悩み事が増えたことは間違いない。

 そう考えて俺は座っていた椅子から腰をあげる。



「とりあえず、エルニアの件は放置だ。近い将来に正式な要請が来るまで延期させておき、その時になったら前向きに検討する。

 今更、同盟国を見捨てるわけにもいかないからな。

 とはいえだ。まずは目先のデヒューバースの攻略を急ぐ。良いな!!!」


 俺の決断に将兵たちは「「おう!!」」と賛同する。


 刹那、会議室の扉をバタンと開け放ち急足で駆け寄ってくる伝令兵は俺の足元まで近づくとそのまま、膝をついて伝令を告げる。


「デヒューバース地方のペンブルック辺境伯の領主、リチャード・クレアからの手紙です。」


 俺は伝令から敵軍の将の手紙を受け取ると静かに封を切り、そのまま読み始めた。


「“夜も冷えるこの頃、いかがお過ごしだろうか? ウェストリー王国の国王、アルトス王よ。貴殿の名は遠い私の耳にまでその名前が届いてくるほどに有名だ。

 そこで私から彼の有名なアルトス王に提案がある。

 四日後、ランビターの都市で決戦を行おう。互いが互いの全てをかけて––––––––勝者が全てを得、敗者は全てを失う。

 昔ながらの決闘方法だ。

 追伸、先に言っておくが我が軍勢は逃げも隠れもしない。ペングルック辺境伯、リチャード・クレア。”」


 俺が話し終えると配下の将兵からは怒りの声が上がる。


「ふざけやがって!!」


「そうだ!」


「逃げも隠れもしないだと!! 奴らはこの俺たちを舐めている!!!」


 そういった不満の声を抑えて俺は将兵に語りかける。


「皆の者、落ち着け。」


「ですが、我らは奴らに舐められているのですぞ!!」


「そうだな。相手はこちらを舐めているからこんなことをしているのだろう。

 であれば、我らの力を見せてやれば良いだけのこと。」


「ということは……まさか!!」


「ああ、敵の罠だというのなら食い破って見せようではないか。我が偉大なる将兵たちよ。兵にこの内容を伝え、ランビターへ進路を変更する。

 いいか、敵を粉砕するのだ!!」


「仰せのままに、我が王よ!!」


◇・◇・◇


「なんとなく。伝わっていると良いなぁ。アルトス王は賢いというし。

 問題もないだろう。」


 そう呟きながらリチャードは馬に揺られ、兵たちとともにランビターを目指す。

 すでに夏も終わり、秋が感じ始められる中でリチャードは力なく馬に跨り、兵たちを指揮する。

 今回の戦いで参加するのは総勢五千五百人の兵と大規模な兵力だった。

 とはいえ、半分以上の六割が傭兵であり残りの四割が正規兵で構成されたリチャードの軍はそう長くは維持できない。

 だからこそ、短期で勝者を決める今回の方法を考え、敵のアルトス王に伝えた。

 しかし、同時に自分が臆病と思われないように少し言葉を強め、挑発するような文面で手紙を書き送ったのだ。


 ランビターの都市は各都市との交易が盛んな都市の一つであるが、有名ではない。その理由としては周囲を森で囲まれているからだった。

 幸いにも、大勢の人が通れるほどの街道が四方に四つあるために迷うことなくランビターにたどり着くことができるが、問題はそこの地形だった。

 ランビター周辺の地形は丘が点々ある段丘の激しい地形が特徴だった。

 そのため、戦争には向かないがその代わりに防衛には適していた。

 今回、この場所を選んだのには理由があった。


 それはまず、周辺を森で囲まれていることによる被害の最小化だった

 周辺が森であれば、敵はランビターの都市だけに集中し攻めてくる。


 そうなれば、周辺住民への被害は少なくなる。


 また、ランビターは都市ではあるがそこまで大きくなく、規模の方も小さい。

 例え、負けて奪われたとしても森の中の拠点は容易に発見しやすいといったメリットがあった。

 とはいえ、敵が乗ってくるか未だ不安があった。


 仮に乗ってきた場合には自分たちに勝利するだけの自信があるのか。それとも確信があるのか。わからない。

 ただ唯一言えることは、アルトス王に決戦の意を伝えた以上、自分たちは引き返すことができないということだった。

 もし、引き返せば名誉を傷つけることになり、自分の言葉が意味をなさなくなる。

 そうなってしまえば、今まで苦労して維持してきた貴族としての矜持を捨てることになる。

 故に、そういったことはできない。


「何を心配しているのです? リチャード様。」


隣からふっと馬に跨りながら現れた将軍にリチャードは応える。


「心配するよ。大丈夫かな? アルトス王は結構強いし……。」


 ほんの二時間前までは頼りたいと思える貴族だったのにもかかわらず、今ではまたいつも通りの不安なリチャードに戻っていた。


 そんなリチャードを励ますように将兵たちは自分の主人たるリチャードを持ち上げる。


 徐々に和気藹々となる中でリチャードは笑みを浮かべ、ランビターへと進み出す。


◇・◇・◇


 夕焼け空の中、先にランビターについたのはリチャードだった。

 大勢の軍勢を指揮しながらの行軍に将兵は疲れ果て、ランビターに着いて早々に休憩を求める声が上がった。


 ランビターの都市住民を避難させると同時にリチャードはランビターの都市を拠点として兵たちに警戒網を弾かせ、休憩を取らせた。


 そして、リチャードがランビターに到着してから一時間後にアルトス率いるウェストリー軍がランビターに到着した。

 まるで一つの巨大な生き物のように整然と動く兵にリチャードやその将軍たちは唸る。

 着々と進むウェストリー王国の拠点にリチャードは緊張感が増し、冷や汗をかく。


 そんな中、ウェストリー王国から非武装の男が馬を駆けさせてリチャードの支配するランビターの城門前に訪れる。


「交渉に来た。門を開けよ!!」


 告げる男にリチャードは兵たちに命令を下す。

 

 リチャードに充てがわれた大きな屋敷の中で男の話を聞く。


 男は平和とはいかに素晴らしいかを説いた上でなぜこのような侵攻とも取れる行為をアルトス王が行っているのか。また、どうすればこの戦いは終わるのかを説明した。

 その上で、最後に戦いが終わるのに必要な条件を提示してきた。


「忠誠の礼をとることか……。」


 リチャードは男からの条件を書き記した羊皮紙を手に頭を抱えた。

 男にはすでに席を外していただき、部屋の中にはリチャード本人の他に優秀かつ信頼できる将軍たちがいた。


「どう思う?」


 訊ねるリチャードに将軍たちは首を傾げる。

 今までは、奴隷を差し出せだの。金を差し出せだの。若くて美人な女性を何人だせだの色々な要求がある中でただ忠誠の礼を求めるために戦争を起こした事例はなかった。


「リチャード様。おそらくこれは我々を油断させる作戦などでは?」


 ある若い将兵が告げる。


「なるほど。忠誠の礼要求することで悩ませ、我が軍を脅かそうとしているのか?」


「そもそも、アルトス王は若い!! おそらく、侵略に対する大義名分が欲しかっただけではないか?」


「あの年頃は血気盛んですからな〜。」


「困ったものだ。」


 将軍たちの話を軽く受け流しながらリチャードは忠誠の礼が何を意味するのかを考えた。


 アルトス王は馬鹿ではない。

 それは今までの戦いや駆け引きで何度も証明されてきた。

 ただ、だとしてもわからない。

 仮に忠誠の礼が侵略の大義名分であれば、先に使者を送る方が早いはず。

 どのみちウェストリー王国は三国同盟と戦争を行なっているし、わざわざ自分から敵を増やす必要はない。

 なのに、敵を作ってまで欲しかった何かがあるのか。

 それとも本当に大義名分のためだけに動いたのか。


 確かな情報もないままにリチャードは決断を迫られる。


「とりあえず、忠誠の礼はしないことにする。

 仮に侵略に対する大義名分であろうとなかろうとアルトス王は馬鹿ではない。

 おそらく何か我々が知らないことを掴んでいるのか。または、力を示したいのかはわからない。

 でも、戦争をしてくるくらいだ。それが並大抵のことではないことは確か。

 であれば、全力で勝ちに行こう。勝って、アルトス王に吐かせよう。」


 自信たっぷりに告げるリチャードに将軍たちは歓喜の声をあげる。


 時は満ち、場所も整った。

 残すことは何もなく、あるのは目の前の敵だけ。

 そう考えながら、リチャードは覚悟を決めて決戦へと歩みを進めた。


◇・◇・◇


「ダメでした。」


 王の天幕で開口一番に告げる男こと交渉を任せた部隊長にアルトスは「ありがとう」とだけ返すと、そのまま軍議に参加させた。


「さて、改めてだが。敵は我々の降伏勧告を無視した。

 当然、こちらもな。だが、少なくとも我々の意思は伝わったと思う。

 そこでだ。今宵、仕掛けるつもりだ。」


「はい!!」


「夜戦は戦術的に決して褒められたことではないが、敵を破るのには最適かつ効率的だ。

 故に、今宵襲って明朝に仕掛ける。」


 そう言って俺は笑みを浮かべた。


読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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