#037 『 ポウイス攻城戦 』
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「このまま攻め立てろ!!」
ポウイス城を包囲する中、俺は咆えるように兵達に叫ぶ。
ポウイス城は小高い丘の中央にポツンと佇む少し変わった城だが、その堅牢さは有名である。
丘の上にあるだけに、兵達は丘を登らざるを得ず、攻める側としては無駄に体力を浪費する仕掛けになっていた。
また、丘の上だけあって通常の攻城兵器は使用できずにいた。
城は攻城兵器によって破ることが王道であるこの世界において、もはや攻城兵器が使えないのは非常に手厳しいが俺はこうした場合のために必要な戦術をあらかじめ兵たちと共有していた。
そしてそれは此度、招集したベイロンも変わりなかった。
俺は今回、エクトルではなく彼を指名したのには理由があった。
一つは、俺の目の届く場所に置くことで彼を見張れること、また彼の力を己の目で見て判断できることの二つに、もし彼が裏切りを前提に俺に近づいてきたのであれば、敵陣のど真ん中にいる今こそ好機であると言える。
なんせ、俺を殺せばすぐに逃げることができるほか、黒幕がいればその黒幕にいち早く行くことができるからだ。
とはいえ、そう簡単にやられる俺じゃない。
ベイロンが仮に裏切りを前提として近づいてきたのであれば、黒幕をいち早く見つけるチャンスでもある。
その黒幕が領内にいれば処断し、外にいれば打って出ることも可能。
むしろ、暗殺を理由に戦争を行い相手を追い込むことができる口実になる。
しかし、物事はそう簡単に行かない。
いかに綿密な計画を立てようとほんの小さなことやほんの些細なことでそれは台無しになる。
故に、俺は大雑把に考えた上でその時に備える。
「アルトス様、敵の城壁に至りました。」
兵からの伝言に俺は一瞬目を見開くと笑みを浮かべて、命令を下す。
「では即座に引いて火の準備を! また前線の兵達には一旦撤退を伝達しろ。
いいか、タイミングが命だ! ここで勝負を決める!!!」
そう告げて、俺は兵達を動かす。
城の兵達と戦っていた兵達をあえて下げさせる。その上で、予め伏せていた兵達もとある秘密の通路から呼び寄せて火をつけさせる。
そして、数分後。
ドカーンという爆発音に似た音とともにポウイス城の城壁が崩れ始める。
敵の守備隊は何がどうなっているのかわからず、崩れる城壁に巻き込まれ次々と下敷きになってはなくなっていく。
その様子を少し遠目に見ていた俺は、これを好機に兵達を崩れた城壁に向かって雪崩こませた。
そして、城壁を失ったポウイス城の至る所で兵達が戦う。
剣の斬撃音とあちこち聞こえ、矢がどこからともなく飛んでくるその光景に俺は護衛の騎士と共に敵陣に突っ込んだ。
敵に突っ込んだ勢いで俺はそのまま護衛の騎士達と共に城の最上階を目指す。
所々、仕掛けてくる敵兵がいたものの俺は全てを薙ぎ払い、ギルバルドのいる自室へと向かった。
案の定、ギルバルトは鎖で繋いだ女性達を前に自室にこもっており、兵達の指揮は別の将軍が前線で指揮していた。
「初めましてだよな。ギルバルド。」
「お、お前は、アルトス!! この協定破りが!! 文明人たるもの、そんなことが許されるとでも思っているのか!!! これだから、薄汚い蛮族は死滅すればよかったんだ!!」
「うるさい。」
そう言いながら俺は怒気を強めた低い声で告げる。
「お前にいくつか聞きたいことがあってな。まず、先代を殺したかどうか? 降伏するつもりはあるのかどうなのか? 早く答えろ。」
今すぐにでも剣を突き刺して殺したい衝動を抑えて訊ねる俺にギルバルドは笑みを浮かべて応える。
「フハハハハ!!! そんなことを聞いてどうする? あいつは死んだ!! もう戻ってこないんだ!! だから、聞いても意味などはないぞ!!」
「いいから、答えろ!!!!!」
そう告げて俺は、彼の前髪をポツンと切り落とすと次はないという目線を送る。
それを理解したギルバルドは怯えると即座に応えた。
「お、俺はただ奴に言われて通りに毒を持っただけだ! それで俺は欲しいものを手に入れた!! 富も名誉も、金もな!! ここにいるこいつらだってそうだ!! こいつらは俺の所有ぶ––––––––」
先代の死を噂通りの殺害であることがわかると俺は憤った。
また、彼が最後に言葉にしようとしていたことに関しても俺は嫌気がさし、言葉の最後を聞くことなく、首を跳ねた。
バサッと吹き飛ぶ頭部に、俺は真顔で見つめる。
そして、頭部の失った体がベットの上で無惨にも倒れる。
ドロッとした血を絶え間なく吹き出す元ギルバルドの体に俺は一瞬「クズが……。」と吐き捨てると、鎖で繋がれ怯えた様子でこちらを伺う女性達の元に歩み寄る。
そしてそのまま、剣を掲げると各々を縛りあげていた鎖をパンと切断する。
軽く、毛布を与えて、俺は彼女達に優しく告げる。
「もう大丈夫。これで家族の元に帰れるから。」
そう告げる俺に、彼女達は一斉に泣き始めた。
恐らく彼女らはギルバルドを奉仕するためだけに集められた女性達であり、一部の人たちは最愛の人たちから半ば強制的に引き裂かれて連れてこられたに違いない。
それなのに、今まで一才ギルバルドに抵抗しなかったのは恐らく彼女達の体の至る所にある痣があるからだろう。
ほぼ、日常的に暴行を加えられれば人は暴力を避けるように相手の言葉を受け入れる。
そんな洗脳まがいなことをギルバルドは行い、彼女達の心を奪っていった。
だが、俺たちが現れギルバルドが殺されると彼女達を縛り上げていた鎖はなくなり、彼女達は再び自由を手に入れたものの失った時間は長く、自由を享受するには未だ時間がかかる。
「お前達ここを守っていろ。俺は、この戦いに終止符をうつ。それとこれは言わんでもわかると思うが念のために伝えておく。彼女達に手を出せば、容赦はしない。」
護衛の騎士を睨むように告げると俺は彼女達の護衛に騎士達当てる。
そして、そのまま部屋を後にした。
部屋を出ると外からの音が徐々に小さくなっており、戦闘の流れがあらかた決まったと悟った。
そして、城の中央広場を眺められるバルコニーへと入ると眼下に広がる兵達に向かって叫ぶ。
「このアルトスがお前達の大将を討った!! 降伏しろ!! 降伏すれば命は助けてやろう。だが、抵抗するのであればこの俺が相手になってやる! さぁ選べ、生きるか死ぬかはお前達次第だ!!」
威風堂々と告げる俺に、敵の兵達はどこかホッとする感じで武器を手放し、その場で降伏した。
長い戦いに終止符を打った俺は、降伏する敵兵に武装解除を命じた上で捕虜としての待遇を言い渡した。
この世界での捕虜は騎士階級や貴族階級であれば身代金がもらえることがある。とはいえ、それは五体満足で返したらの話ではあるが、俺はこれ以上誰かを傷つけるつもりはなかった。
むしろ、俺は投降した一般兵を再度招集し自軍に取り込み戦力の増強を考えていた。また、騎士階級においても同じだった。
騎士という兵科は非常に使い勝手がいい。
なんせ、歩兵にしても弓兵にしても騎兵にしてもどれも他の兵に比べて優秀であるからだ。ただ、デメリットとして騎士というのは誇りを大事にするが故に時に暴走してしまうことであった。
兵科として使い勝手が良くても戦力としては保持しづらいというのも騎士のデメリットだった。
騎士の一人一人を呼び出し、現在の収入の倍近い金額を提示すると一部の老騎士以外は大方こちらの方に寝返った。
新たに兵千五百人に騎士百人の戦力を得た俺は、そんな彼らに武器を返した。
しかし、問題は貴族階級のもの達だった。
彼らの多くは権力や莫大な富を有しているものの扱いがしづらいもの達ばかりだった。
まぁ、ギルバルドという泥舟に乗っていたもの達だ
数はともかく質は期待できない。
と内心で思うと俺は貴族達をポウイス城の地下牢に閉じ込めた。
最低限の食事に水の提供を約束し、身に纏った豪華な衣類を剥ぎ取り代わりに簡素な囚人服に着替えさせた。
そんな待遇に時折、不満の声が漏れたが、剣を向けると一斉に黙った。
従わなければ死ぬ。
そう脅し、俺は貴族達を閉じ込めた。
その際、一際豪華な服装をまとった貴族がいた。
兵達に聞くと彼は降伏した貴族を収容する前からここにいるらしく、俺はギルバルドの被害者として牢から彼を出した。
ひどくやつれていた彼を見て俺は暖かいスープと医者を準備するように告げるとそのままポウイス城の一室を彼に与えて、治療した。
その夜、目を覚ました彼に事情を聞くと彼はギルバルドの唯一の親戚であり、ポーイスでギルバルドを止めようとした一派の頭だったという。
しかし、どこからか情報を仕入れてきたギルバルドに裏をかかれ、見せしめとして地下牢に投獄されたという。
その際、ギルバルドは反逆罪として親戚を皆殺しにした。
「あいつらしいといえばあいつらしいな。」
そう告げる俺に、彼は「そうですね。」と返すとそのまま話を続けた。
もはやこのポーイスに希望などはない。
そう思った矢先に戦争が起き、ポーイスは俺に支配されたという。
「それで、あなたはここをどうなさいますでしょうか?」
弱った状態で告げる彼に俺は悟る。
ここで彼を殺せばポーイスの支配権は名実ともに俺が手に入れられる。
逆に彼を生かしていけば、またいつか彼を旗頭に反乱軍が結成される危険性がある。
今ここで弱った彼にとどめを刺すことさえできれば、そうした将来的な反乱の芽を摘むことができる。
だが、俺はそんなことはせずに彼に告げた。
「ここを統治する。誰もが幸せに暮らせるようにな。お前もギルバルドに立ち向かったのならどうだ、俺についてみないか?」
そう告げる俺に彼は、笑みを浮かべると「はい」と短く答えた。
◇・◇・◇
一人、夜の闇に紛れて森を走る女性に影が告げる。
““王よ。奴が死んだそうです。””
「当然よね。アイツはバカだし弱いし、それに臆病だしね。でも、捨て駒としてはちょうどいい感じじゃないかしら。これで新たにアルトスのことがわかったわ。」
““ハハッ””
「それとこれからも彼のそばでアルトスを監視しなさい。アルトスはまだ、何か隠している気がするから……。」
““仰せのままに、王よ””
「さて、楽しませてもらうわよ。アルトス。」
そう告げる女性は夜の闇に消えてなくなった。
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