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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
36/70

#033 『 ポーイス 』

毎日投稿 3日目!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 レクサムを勢いよく出立すると俺は徐々に兵たちの走る速度を遅くし、行軍速度を一定に保たせた。


 そうして進軍を開始してから六時間後。

 うっすらと夕焼け空が見える中、丁度一、二時間前に斥候として送った偵察兵が戻ってくる。


「この先、川の手前に中規模の村があります! 城壁などはないですが、簡易な柵と物見櫓が見て取れます。」


 偵察兵の情報を聞き終えると俺はすぐさま配下の将軍達に命令を下す。


「斥候の話は聞いたな。これよりその村を目指す。もし村が敵対的ならば攻め落とす。その際、抵抗する者は容赦無く殺せ。逆に抵抗しない者には手を出すな。

 また、仮に友好的であるならば村人には手を出さずに寝る場所を提供してもらおう。」


「「「仰せの通りに!」」」


 命令を全て下し終えると俺は赤く染まる西空をただ眺めた。



◇・◇・◇


「村長! 村長!! ほら、早く!! 急いで!!! 領主様が騎士たちを連れて来たよ!!」


 まだ幼い幼女に手を引かれ、私は村の中心にある広場へと連れ出される。


 村の女性や子供たちは各々家に篭り、男たちだけが広場で所有している農耕具やメンテナンスなどされていないだろう古びた武器を片手に集まっていた。


「村長! やっと来たか!!」


 そう告げる男に私は状況を訊ねた。


「なるほど、領主がか……。」


 拳を強く握り、私は死を覚悟した。


 ここ数年この村での収穫は下がっており、そしてこの前の収穫もほとんどが呪いによってダメになっていた。

 収穫は良くなく、むしろ年々悪くなっていた。


 また、村で取れる収穫も少ないために村で支えられるだけの若い男や娘たちを残して、他の若者には都市へ移り住めるよう勧めてきた。

 当然そんな者たちが都市で生きていけるとは思っていなかった。

 しかし、移住と称した口減らしをしなければこの村は食糧不足で壊滅してしまう事になる。


 以前、無理をして領主の城へと赴き、涙ながらに縋るように救済を求めたときも領主は顔色ひとつ変えずに告げてきた。


 『税を納めるのは民であるお前の義務だ。そしてその税が支払えなくなったら、どうなるか。わかるな? 村長よ。』


 私はその言葉を聞いて絶望した。これが話に聞く領主なのかと。

 以前、父から聞いていた領主とはまるで別人だった。話では非常に義理堅い領主のはずだった。

 だから助けを求めた。村からなけなしのお金を集め、旅支度を行い、長い時間をかけて訪れた。

 それなのに領主はただ税を払えと。


 拳に力を入れ涙を流した。悔しいという感情が溢れ出た。

 されど、そんな領主に逆らえる力など一村人の私にはなかった。

 

 結果、私は途方に暮れながら村へと戻り領主の言葉を伝えた。


 そして今回、隣国との戦争ということで税が新たに課され村々から徴収された。

 その際、村にあるモノを全て出して、なんとか臨時に課された税を支払った。

 ただ、今はもう村には税にとって変わるモノはなく、あるのはせいぜい“若い娘達”だけだった。


 そんな所にお世話になっている商人から増税の話がもたらされた。

 その話を聞いて私は驚いた。まだ我々から奪おうというのかと怒りに燃えた。


 救いもせず、ただ奪うだけの領主になぜ税を支払わなければならない。

 ただそれだけが脳裏をよぎる。


 だが、どうする事もできずに私はこの瞬間を迎えた。



 甲冑を着た騎士が馬に跨り、列を成して森から出てくる。

 その光景に威圧されながらも、私は意を決すると男達と共に村の門へと集まった。


◇・◇・◇


 森を抜けるとすぐに斥候の言っていた通りの村があわられた。

 村の様子を自分の見てると俺は即座に戦闘隊形を将兵たちに取らせ、ベディヴィアを含めた四人の騎士と一緒に村へと交渉隊を結成させた。


 仮に農民達が襲ってこようものなら「容赦無く攻撃を加えよ」とだけ言い残し、選抜の交渉メンバーとともにゆっくりとした足並みで村の門へと歩み出す。


 村へと近づく我々に村長らしき男が前へ出ると頭を軽く下げて訊ねてくる。


「何か御用でしょうか? 騎士様方?」


 ギラギラと向けられる背後の男達の視線に戸惑いながらも村長らしき男の質問に応えた。


「寝れる場所を貸してほしい。何、悪いようにはしない。」


 高圧的な態度で告げる俺に目の前の男は数秒考え込むと力なく「……はい。こちらです、どうぞ。」とだけ応えた。

 村の男達に案内されて安心したのも束の間、どこからともなく飛んできた小石が被っていた兜に当たり、その光景を目の当たりにした護衛の騎士達が一斉に剣を抜く。

 それを合図かのように村の男達も一気に火がつき一触即発の状態と中、俺は小石が飛んできた方向に視線を移す。

 そこには幼い男の子が一人涙ながらに立っていた。

 直後、家から出てきた母親らしき人物に抱き抱えられ連れ出されそうになるが俺の隣にいたベディヴィアが矢を放ち、それを止める。


「オヤジを返せ!! この野郎!!」


 そう涙ながらに訴える少年を前に母親らしき人物が涙を流し震えた声で「どうか、許してください。子供のした事です……。」と許しを乞う。


「どうか、お許しください! 騎士様!! 彼はまだ子供です!! どうか! どうか!」


 村長らしき男が即座に幼い男の子とその母親らしき人物の前に入り、謝罪する。

 その傍らでは騎士が村の男達に向けて剣を振い牽制していた。


 その様子を見て俺は、眉間に皺を寄せながら力強く告げた。


「お前ら、剣を引け!!」


 その言葉に騎士達は一瞬戸惑うものの、たちまち抜いていた剣を再び鞘に戻した。

 騎士達が剣を鞘に戻したのを確認すると隣で未だ弓を引いていたベディヴィアに弓を降ろさせた。

 それを見て、村の男達は静まり村長らしき男も顔を僅かに上げた。


 そして、そのまま馬を降りると俺は村長の元へ赴き、手を差し伸べた。


「我が騎士達が粗相をして悪かった。長旅の疲れかイライラしててな。休める場所を早く案内してくれないか?」


 笑顔で優しく告げる俺に目の前の男は涙を流すとそのまま急いで場所へと案内してくれた。

 そして、母親らしき人物も幼い男の子を横に深々とおじきするとそのまま家の中へ消えていった。


 事の一部始終を見ていた護衛の騎士やベディヴィアは驚きながらも自分たちのしたことに少なからず反省していた。



 数分後、村長らしき男に案内された場所は村からは少し離れており、今では空き家ばかりの場所だった。

 空き家とは言っても最低限度のメンテナンスを施されているからか中まで綺麗に家具までも整えられていた。


「ありがとう、村長よ。今日は一晩ここで過ごさせてもらう。明日の朝には勝手に出て行く予定だ。」


「は、はい。」


 そう言ってわずかばかりのお金を渡すと村長らしき男は幾度となく頭を下げ感謝してきた。


 そして、待機させていた兵達を呼び出すと警戒にあたる兵達を残して休息を取らせた。


 俺とベディヴィアは村長の家に招かれたものの先程の一件があるために遠慮させていただいた。


 そして、夜。

 月が地上を照らす中、村長を含めた一部の村人達が感謝の印に僅かな食料と鍋を持ってきては料理を始め、歓迎してくれた。

 その雰囲気に当てられ兵達も少なからず表に出ては村人達が作ったスープを頬張った。


「楽しそうですね。」


「本当に、そう思うか?」


 ベディヴィアの言葉に俺は言葉を返す。


「すみませんでした。アルトス様の顔に泥を塗るような真似をして……。」


 その場で膝をつき、頭を下げるベディヴィアに俺は「良い」とだけ告げると、楽しく食事をする村人達と兵達を見る。


 数時間前まで、いがみ合っていた両者が手を取り合い食卓を囲む。

 その光景に俺は不思議と笑みを浮かべた。


「なぁ、ベディヴィア。君は考えたことあるか? 平和とはなにかを?」


 不思議と脳裏に浮かんだ言葉に俺は隣でひっそりと立つベディヴィアに訊ねた。


「特には……。私は主君に命じられたことを遂行するまでです。ですから自分の意見など……。」


「そうか。俺は、先に寝るよ。何かあったら呼んでくれ。」


 少し残念に思いながら告げた俺は空き家の中に入るとそのまま寝室に向かった。



◇・◇・◇


 翌日、早朝。

 すでに隊列を組み終わった兵達を見て俺は更なる進軍を開始し、村を後にした。

 ドッドッと歩み出す兵達に俺は遥か先に待つ敵の拠点に思いを馳せる。


 ポーイス。

 そこはポウイス侯爵家が代々受け継いでいきた自然豊かな大地。

 ウェールズ地方には珍しい広大な平野が広がるこの大地は遥か昔から幾度となく外敵から侵略に遭ってきた。

 だが、それも一代前のポウイス侯爵が現れるまでの話。侯爵は聡明で軍の指揮にも長けていた。そのため、襲いかかってくる敵を幾度となく返り討ちにしてきた経験を持つ。


 しかし、王の崩御以降、民に優しかった侯爵は謎の病死によって亡くなった。

 侯爵の後を受け継いだ長男のギルバルド・ポウイスは支配欲が強く民に対しても非常に差別的な性格を持っているという。

 そんな侯爵には父親を毒殺して現在の地位を手に入れたという噂があった。


 本当かどうかは定かではない。

 しかし、もし本当であればそれは許せなかった。

 その昔、俺はポウイス侯に一度会ったことがあった。


 まだ、八歳の時のことだった。

 優しいおじさんという感じだったポウイス侯はいつも民のことを心配していた。

 そして口癖のように『私は貴族になるべき人間ではない。』と言っていた。

 心優しいだけに貴族社会からは異端扱いされてしまう。だが、自分が上に立たねば民の生活を変えることはできない。

 民と貴族の両者から板挟みに悩みながらも決して希望を捨てずに前へと進む。そんな、ポウイス侯に俺は密かに憧れていた。

 八歳の俺よりも十分立派な志を持ったポウイス侯がその道半ばに自らの息子によって倒されたのであれば俺はその息子を例え何があろうとも倒さなければならない。


 かつてのポウイス侯の無念を晴らさんがために。



 そう心に決めて、俺は馬を歩ませ続けた。

 真実をこの手につかむために––––––––。



 ◇・◇・◇


 バタンッ!!


「い、今まさに向かって来ているというのかッ!!」


 お腹をボヨンと弾ませながら驚くギルバルドに斥候兵は告げる。


「はッ! 現在チャーク村を越え、オスウィンへと行軍中。明日の夜明けにはオスウィンに辿り着く勢いです!!」


「くそッ!! あいつらとは不可侵条約を結んだはずだろう! なぜだ!! なぜこうなる!!! くそッ何もかもうまくいかない!!! おい!!!! お前、どうにかしろッ!!!」


 まるで子供のように駄々をこねながら近くにいた将軍に叫ぶとギルバルドは、斥候兵と将軍を追い出すように下げさせる。

 出ていく斥候兵と将軍の背後でギルバルドは首を鎖で繋いだ裸の女性達に奉仕を命令する。


 その様子を見て将軍は静かに謁見の間を後にした。


 数時間後、兵を編成し終えた将軍は兵達とともにポウイス城を後にするとアルトスの向かうオスウィンへと進軍を開始した。

読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


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また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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