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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
七王の戦旗
35/70

#032 『 反撃への一手 』

第2章は毎日投稿する予定です!!


今日は、毎日投稿 2日目!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 人材募集にて集まった三人は突如呼び出されたことで再びホーリー城を訪れていた。


 人材募集に受かってからすでに数十日。

 その間、三人はアルトスより命じられた仕事をこなしていた。


 型破りな騎士ことベイロンは兵達の訓練や実際に戦争で行う陣形や戦略などを調べ上げ、若手の女頭ことイザベルはこの時代には珍しい諜報部隊として新たに組織され、領内外の情報を逐一情報源含めて調べ上げていた。

 そして、名工ジェイムズの愛弟子である土木の才を見出した男ことウィリアムは先の戦いで崩れてしまったルシン、モルド、レクサムの三都市の城壁を修繕すると共に強化していた。


 そんな中での召集に三人とも少なからず不満を溜めていた。


「して、陛下はいつおみえるなる?」


 ベイロンが腕を組みながら未だ来ないアルトスの所在について訊ねる。


「あら、別にいいのでは? 陛下は陛下ですし。」


 ベイロンの質問に律儀に応えるイザベル。


「ったく!! 用があるんだったら早くしてくれよ!! こっちだって忙しいんだぞ!!」


 頭をかきむしりながらウィリアムは持ってきた城壁の設計図に筆を滑らせる。


 その光景を、一歩遠くから見ていたオリヴィアはボソッと呟くように告げる。


「なんと言いますか。気品があまり感じられませんが……。」


「そうですな、全く困ったものです。しかし、その実力は本物です。」


 オリヴィアの呟きに対して小さな声で応えたエクトルはそのまま会議室の席に座るとアルトスが来ることを静かに待った。

 そして、そこへマーリンとケイも集まり会議室にはオリヴィアの他にエクトル、マーリン、ケイ、ベイロン、イザベル、ウィリアムの七人がすでに集まり席についていた。


 残すはあとアルトスだけと言う状況でなんとも気まずい空気が会議室を覆う。


 そして、集まってから半刻は過ぎたであろう時にようやくアルトスは会議室に現れた。


「遅くなってすまない。」


 軽く謝罪しながら会議室に入るアルトスに皆視線を向けるとアルトスは笑みを浮かべながら続け様に言う。


「さて、軍議を始める。」


 その一言で、会議室にいた全員からざわめきが消え、ビシッと張り詰めた空気へと変わる。



◇・◇・◇


「軍議を始める前に、ベイロン、イザベル、ウィリアムの三人には労いの言葉を送らせてくれ。お前達三人の力のおかげで計画が思った以上に早く進んだ。」


 そう告げる俺にベイロン、イザベル、ウィリアムは一様に「寛大なるお言葉感謝します。」と短く返す。


「さて、今回の軍議だが、内容に行く前に目標を告げさせてもらう。

 今回の目標はウェールズ南方に広がる大地、ポーイスとデヒューバース地方を攻め、手に入れることにある!」


 攻めると言う俺の言葉にオリヴィアは疑問を呈するように口を開く。


「攻め落とすって!! でも、こっちには兵力も戦争を行えるだけの体力もないって話じゃなかった!?」


「ああ、正直なところ。我が国には戦争を遂行するだけの体力はない。」


 はっきりと明言するように告げる俺に皆は頭を抱える。


「だが、それは問題ではない––––––––勝てばな。」


 戦争には国力を大きくすり減らすことになるが、実はこれにはあるカラクリがある。

 元より戦争とはなぜ起こるのか。

 それは戦争によって得られる富が少なからず関係している。

 人には衣食住がなければ生きてはいけない。そして、この世界でもこの衣食住を手に入れるには富がいる。

 詰まるところ、富を求めて人々は争い合うのだ。

 だが、戦争は大きな博打のようなものだ。勝てばいいものの負ければ全てを奪われる。加えて、引き分けになれば相手に攻める理由を与えてしまう事になる。

 故に、戦争はしない方が良いのだがすると決めたのであれば勝たなければならない。


 そして今回も俺はすでに予め用意させていた手札を切ることでこの減衰した国力を一時的にでも増幅させ戦争を行えるだけの体力を作り出した。


「勝てば良い。それだけだ。元より俺たちには前に進む以外の道はない。」


 はっきりと言葉に出し、皆に堂々たる姿勢で告げる。

 まさに、迷いのない決断にオリヴィアもついに折れて戦争を受け入れた。


「さて、腹は定まった。では、詳細に移ろう。

 まず、ウィリアム。盾の方はどうだ? 次の攻撃に耐えられるまでになったか?」


 そう訊ねるとウィリアムは一度、うーんと考えながら応えた。


「そうですね。攻撃の種類にもよりますが……大方、敵の進軍は止められるかと。」


「攻撃の種類とはどう言うことだ?」


「話ではポーイスやデヒューバースに攻め込むと言うことでいたよね。であれば敵はマーシア軍です。そんなマーシアの軍が一気に来られてはまず持ちません。

 一応、見てくれは良くはしていますが、中身はそれほどでもないんです。

 破城槌程度なら問題なく防げますが攻城塔が三機も出てこられた際にはまず無理です。持っても六時間程で落ちます。」


「なるほどわかった。」


 さすが、土木の才を持つウィリアムだ。

 城の構造をこの短時間で全て把握し、その弱点を見抜き対策を立てる。

 また、城の持つ目み見えない耐久値すらも容易に推測し導き出すその慧眼には驚きだ。


 そう思っていると次はイザベルに視線をむけて訊ねる。


「マーシア軍の動向はどうだ。イザベル。」


「特に変わったことは。

 ただ、思った以上に前回陛下が行った策にハマり、だいぶ国力をすり減らしているかと。勝ってアルビオンやヨークの軍勢を追い返したものの経済に陰りが見え始めています。その皺寄せが民に降りかかっていると言う話もちらほら聞きます。

 故に民は陛下の進軍を歓迎するかと。」


「わかった。」


 諜報能力に優れたイザベルにはベイロンやウィリアムよりも早く動員し、多くの情報を仕入れてもらっていた。

 特に、アルビオンやヨークによる侵攻があったマーシア東部での話は貴重だった。

 古代末期から中世全盛期までの世界観であるこの世界では情報の伝達は非常に遅い。

 例えば、今回の場合なんかは本来であればイザベルの持ってきた情報を知るのに大体二ヶ月ほどかかる。しかもこれはあくまで阻害されなければと言う楽観的な観測によるものだ。

 このような情報は必ずと言ってもいいほど秘匿される。故に実際であれば半年くらいかかってくる情報をここまで早く手に入れることができる、イザベルにはそれほどの腕があり、また手足となってくれる人材も多いと言うことだろう。


「とりあえずは把握した。そこで攻撃を行う遠征軍と防衛を担当する防衛軍を作るのだが、遠征軍の指揮を俺とベイロンでやることとする。いいな、ベイロン。」


「陛下がお望みとあらば。」


「そして、防衛軍の指揮を––––」


 そう言いながら視線を向けるのは一人、会議の中でもおちゃらけている雰囲気を出す兄のケイ。


「ケイ、お前にする。」


「おっ俺!? エクトル卿がいるではございませんか! なぜ俺なんかに!!」


「エクトル卿には別に重要な任務があるからな。それに、いつまでもエクトル卿に頼るわけにもいかないしな。」


「わかった。やるよ。」


 ケイを防衛軍の指揮に置き、俺はエクトルやベイロン、ケイの意見を考慮して兵力の分配を行った。


 また、ウィリアムにはレクサムでの待機命令をだし、戦争中における城壁への攻撃を修繕する部隊の指揮を任せた。


 イザベルには再度マーシアに入ってもらい、ウェールズ南部の地形や障害物、村や都市の位置などを把握してもらい、報告するように新たに頼んだ。


 そして、本来であれば留守を言い渡すはずが本人の強い希望もあり、予備軍の指揮官としてオリヴィアが加わり、マーリンには留守番を頼んだ。


 こうして各々が新たな仕事と役割を得たことで会議が終了した。



 その夜、俺はエクトル卿を呼び出すと人の居なくなった謁見の間で相対した。


「お呼びでしょうか、陛下。」


「いい加減、その行動はやめてくれませんか。父上。」


「何をおっしゃいます! 陛下と私はすでに主君と従者の関係。いくら親とて変えるわけには……。」


 相変わらずの硬っ苦しさに笑うとエクトルは礼を解く。


「わかりました。では、エクトル卿。汝にエール島への“密書”を運ぶ任務を与える!」


「ッ!!! 仰せのままに!」


 そうして、俺は懐から羊皮紙で作られた巻物を出すとそのままエクトルに手渡すと即座に見送った。


「船の準備はできている。食料も武器も、全て。この密書をエルニアに届けてほしい。」


「ご拝命いただきました。必ずこの密書を届けましょう。」


 それだけ告げて謁見の間を後にしたエクトルに俺は一瞬だけ考え込むと気を取り戻し、前に向かって進み出した。


◇・◇・◇


 会議から一ヶ月。

 戦争準備の全てが整った今日。澄み渡る蒼穹の空の下、俺は眼下に佇む無数の将兵を眺める。


 準備は整った。


 心の中で告げる俺は意を決して、将兵の顔を見る。


 不安に駆られる者、期待を寄せる者、下心のある者などが入り混じる中で俺は声を発する。


「ウェストリー王国の兵士たちよ!! 今こそ立ち上がる時だ!!

 諸君らはこの我に何を求める!! 力か、名誉か、富か!

 それとも平和か! だが、生憎に私一人ではそれら全てを叶えることはできない!!

 平和を欲したところで、私一人で幾千万の兵を薙ぎ払うことなどできない!

 諸君らの家族を、財産を、名誉を! 私一人だけで守り切れる訳ではないのだ!」


 木造の台の上で一人、力強く告げる俺に兵達は次第に俯いていた顔をあげる。


 この中には少なからず、攻勢に出ると言うことに疑問を呈した者がいるはず。

 当然だ。自分の命だ。

 それをおいそれと投げ打っていけるほど彼らは強くはない。

 いかに英雄が導こうとも死の恐怖は拭えない。


 だからこそ、俺は堂々とした確固たる態度を見せて言葉を並び立てる。

 例え死のうとも、その死を意味あるものにするために––––。


「しかし、お前たちの一人一人が私に力を貸せば、それも不可能ではない!

 お前たちの家族を、財産を、名誉を守ることができるのだ!

 人は生まれながらに死へと進む生き物だ。それは国とて変わりはしない。

 勃興しては滅亡する。だが、お前たちが立っている限りこの国は倒れない!

 剣を取り、旗を掲げ、奮い立つのだ! 王国そのものである兵士たちよ!!

 剣を振るうその腕を失うその瞬間まで! 王国ためでなく、家族のために!

 己のために! 名誉のために!

 さすれば、私が諸君らに約束しよう! 私がこの長きに渡る戦争を終わらせると!!」


 剣を掲げながら決める俺に兵たちはドッと溜め込むと即座に「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」と奮声をあげ、鎧を鳴らす。


 そして、そのまま俺は台を降りると馬に跨り、整然と並ぶ兵たちの間を剣を掲げて駆ける。


「行くぞ!!」


「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ」」」


 短く掛けた声を合図に兵たちは重い鎧を身に纏いながら俺の後を走る。

 ガシャガシャと騒がしい鎧の音が周囲に響き渡り、大地を僅かに揺らす。


 もはや誰も恐怖に怯えておらず、不安も払拭されていた。

 俺自身も兵たちの熱に当てられ、いつしか笑みを浮かべていた。


「目指すは、ポウイス城!!」


◇・◇・◇


 アルトスが兵を鼓舞しマーシア領ポーイスへと進軍したその頃、エクトルはエール島に上陸したばかりだった。


「いち早く、この密書をエルニアのテア猊下にお届けせねば。この戦、負けてしまう!!」


 アングルシー島からの出発の際に兵から手渡されたアルトスの伝言書で記載されていた情報にエクトルは、頭を抱えた。


 勘が良すぎるという次元ではもはや説明のつかないこの現象にエクトルは驚きと同時に使命を絶対に果たさねばならないことを改めて思い知らされる。


 今、まさに懐にしまってある密書が領内に住む全ての人間の命をこの肩に背負わせているという緊張感。

 領主になって以降も味わったことのない重荷がエクトルを急がせる。

 しかし、すでに敵の領内に入ったエクトルは誰にも見つからないように静かに行動しなければならない。

 焦る気持ちとは裏腹な現状にエクトルは冷や汗をかくとそのままエルニアに向けて走り出した。


 戦の命運を握る密書を携えて––––––––

 


読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


広告の下にある星をタッチすると私を応援できるのでよろしくお願いします!!

また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

レビューや感想等の方もお願いします!!


( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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