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Godin Fantasy —異世界建国譚—  作者: 高峰 遼一
幕間
33/70

#030 『 全ての始まり 』

毎日投稿 14日目!! (● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾

 領を隣国の侵攻から救った英雄として祭り上げられたアルトスは即位後に行われるパーティーに主役として呼ばれていた。

 そんな、パーティーでアルトスは貴族や豪族たちの相手をさせられていた。


 城下の街でも同じようにアルトスとオリヴィアの即位に新しい王国の誕生を祝ってどんちゃん騒ぎがあちこちで行われていた。



 そんな中、ホーリー城のベランダで一人グラスを片手にエクトルは夜空に浮かぶ青白い月を静かに眺める。

 もうすぐ夏だというにも関わらず冷たい海風が頬をそっと撫で髪がほんのりと靡く。


「それにしても、意外だわ。まさか、あなたがアルトスにアレを伝えていないとは。どういう吹き回しかな?」


 そう告げなが空中に浮かびながらワインボトルを煽るマーリンにエクトルは、一瞬驚き腰にぶら下げた愛剣に手をかざす。しかし、相手がマーリンだとわかると剣から手を離し、一呼吸を置いてからマーリンの質問に応えた。


「…………どうということもない。ただ、どう伝えればいいのかわからないだけだ。」


 額の前に拳を握りしめ、下唇を噛みながら苦しそうに告げるエクトルを見て、マーリンはため息をつく。


「なら、代わりに伝えてあげましょうか?」


 マーリンの提案にエクトルは即座に振り返る。


「できれば、そうしてる。ただ、これは……親子の問題だ。」


「親子……ね。」


 吐き捨てるように告げるマーリンは空中から降りるとエクトルに背中を見せて、告げる。


「私は、彼を王に育てる。そして、いずれアルトスは真相にたどり着く。もし、その時にアルトスが真実をしったとしたら、どうなっても知らないわよ。エクトル。」


「ああ、時間がないのはわかっている。」


「そっ。なら、私は追加の一本を探してくるわ。ほんじゃ。」




 マーリンがホーリー城に再び入ると、エクトルは再び月を眺め呟く。


「アルトス、お前は––––––––」




◇・◇・◇


 二十年前––––––––。


 エクトルは、今は亡き先代王ウーサーと幾人かの幼馴染で島を抜け出し、アルビオン島へと上陸した。


 当時、グレイシー島とアルビオン島の交易が盛んであり、常に船が往来したこともあって島からの抜け出しは容易なことだった。


 だが、そんなあるときエクトルや幼馴染は盗賊の襲撃に遭った村を見たことで、自分たちがいかに平和を享受していたのか。そして、いかに自分たちは恵まれていたのかを考えさせられた。


 そんな時、一際リーダーシップのあったウーサーが平和な世界を求め始めた。


 ウーサーが平和な世界を求めると同じ願いを持つありとあらゆる人々が集まり出し、次第にそれは大きくなった。

 そして、それに感化されたエクトルや幼馴染は全員、ウーサーに仕え始めた。


 しかし、自分たちは正義を掲げていることに誇りを持っていたエクトルやウーサーだったが、来る日も来る日も争いの絶えない日々が続いたことで次第に幼馴染の中でもっとも賢かったゴルロイスが戦の絶えない現状を嘆きウーサーへと直訴した。


 平和のための争いほど無意味なことなはい––––––––そう告げるゴルロイスにウーサーは激怒し、ゴルロイスを追放した。


 ゴルロイスを追放したことで同じ幼馴染でゴルロイスに好意を寄せていたイグレインはゴルロイスの後を追うようにウーサーの元を離れた。

 しかし、イグレインに好意を寄せていたウーサーはこのイグレインの裏切りに酷く失望した。


 その後、イグレインが新たにゴルロイスや反ウーサー派と手を組んだことを知るとウーサーはゴルロイスに騙されているに違いないとしてイグレイン救出を名目に兵をあげてゴルロイスのいるコンウォールへと向かった。


 一方で、ゴルロイスはイグレインの支えもあり、反ウーサー派と同盟を組むとウーサーの進撃を止めるべく軍を動かし始めた。



 こうして、和睦による平和の実現を掲げるゴルロイスと圧倒的な力による平和を掲げるウーサーに別れたことで、アルビオン全体は二つに分かれ争い始めた。



 そして数年という長い戦争に終わりを告げるように事件の発端となった戦いが始まった。


 コンウォールの戦い。

 後にウーサー王の統治を決定的にした戦いとされ、ウーサー王が叛逆者ゴルロイスに攫われた王妃を救ったとされる有名な説話のモデルともなった戦。


 だが、実際にはウーサーの元を離れたゴルロイスとイグレインがウーサーを止めるべく戦った争いであり、ウーサーはその戦場でゴルロイスの首を刎ねて殺すことになる。


 幼馴染と対立し、挙げ句の果てにその命を奪ったウーサーは、横たわる幼馴染の遺体をみて初めて自分のしたことの重大さに気がつき、ゴルロイス派の拠点であったコンウォール城への攻勢を却下した。


 そして、イグレインの思い人を無惨にも殺したことで恨まれる悟ったウーサーは唯一魔法の使えた幼馴染のマーリンに頼み込むと”生まれて来る子を自身に預けること”を条件に、マーリンはウーサーの姿をゴルロイスへと変貌させ、イグレインのいるコンウォール城へと忍び込ませた。



 その後、ゴルロイスに変化したウーサーがコンウォール城へと忍び込むとイグレインと熱い一夜を共にする。


 最愛のイグレインと熱い夜を共にした翌日。

 魔法の効果が切れる前にウーサーはコンウォール城を去り、自軍へと帰った。


 だが、自軍に帰って以降もウーサーはイグレインのいる城への攻勢を却下していたが周囲の貴族や豪族に押される形で許可を出し、コンウォール城を包囲した。


 包囲された城で一人イグレインは昨夜共にいたゴルロイスを探すと周囲の人たちからゴルロイスの悲報を唐突に告げられる。


 戦場での死を最も毛嫌いしていたゴルロイスが友を止めるべく参加した戦いでその友に殺されたばかりか、自身を魔法という卑怯な手で欺き、同衾したという真実にイグレインは泣き崩れるとウーサーに対する憎しみを生み出した。



 そして、攻勢からおよそ六時間。ついにコンウォール城の陥落するとイグレインは最愛の人を嘆きながらウーサー王の元に降った。

 しかし、ウーサー王に降った後もウーサーに好意を全く寄せていなかったイグレインは一切、靡くことはなく次第にウーサー王の治める王城内で孤立していった。


 そうした中である日、イグレインがウーサー王との間に子供を成すと周囲は喜び、イグレインを励ました。

 周囲の励ましと子供へという神の授かりを受けたことで再び心を開くようになったイグレインは、次第に昔のような活発さを取り戻した。


 だが、それも束の間。子供が生まれた日の夜にウーサーはマーリンとの約束を果たすべく、就寝したイグレインから生まれたばかりの赤ちゃんを奪った。


 翌日、目が覚めたイグレインは居なくなった子供のことをウーサーに告げるとウーサーは何食わぬ顔でイグレインから取り上げたことを説明した。


 愛する人、愛する子供を同じ人物に奪われたことにイグレインの心は耐えきれなくなり、ついには発狂した。


 その光景を間近で見たウーサーはイグレインを城の塔に幽閉するとイグレインは何もかも自分から奪うウーサーという存在に恨みを持ち始めた。

 そしてその気持ちは次第にウーサー側についた同じ幼馴染である者たちにも向けられ、イグレインは徐々にその復讐心を増幅させていった。


 しかし、ウーサーもウーサーで王妃が発狂したというのは体裁が悪いためにイグレインに似た顔つきだった幼馴染のオルティアへと結婚を申し込んだ。


 だが、オルティアにはすでに他界した夫の子がお腹に宿っており、オルティアは亡き夫の忘形見である子供を守るべく、ウーサーに対して王族として認知することの他に亡き夫と一緒に決めた名を当てることの二つの条件を認めさせることでウーサーとの結婚の申し出を受け入れた。


 こうして晴れて結婚した両者であったが、ウーサーはかつてのイグレインを忘れられず、その面影があるオルティアと会うことは少なかった。

 また、オルティアもオルティアでそのことを知っていたこともあり、ウーサーとの関係はあまり発展しなかった。


 そして、オルティアの子が生まれるとウーサーは結婚の時にに決めたように娘を王族として歓迎し、名もオルティアと亡き夫が決めた”オリヴィア”と決め後日、公式に発表された。


◇・◇・◇


 あれから早くも二十年という月日が経ち、エクトルは秘密を守り続けていた。

 それはアルトスにだけではなく、王都より逃したオリヴィアも含まれていた。



 秘密を知るのは、ことの当事者である幼馴染たちとエクトルの妻、メアリーだけだった。

 そのメアリーもエクトルを信じていたため、誰かに話すようなことはなく秘密が外へ漏れるようなことはなかった。


 当初、エクトルはアルトスを育てることに専念した。

 それはいつの日か、アルトスが運命を背負うことを聞かされていたから。


 しかし、アルトスを子供の頃から育ててきたエクトルにとって、アルトスは特別だった。

 政治の道具でもなければ、運命を背負う者でもない。

 

 エクトルにとってアルトスはもはや一人の息子だった。


 長年、人をその手で殺めたエクトルにとって家族というのは自分を未だ人間としていさせてくれる大事な存在。

 だからこそ、エクトルはアルトスに真実を告げることができないでいた。


 自分と同じ穢れた道を息子にも進んでほしくない。だが、自分のした行いが巡り巡って今の息子達に影を落とす。


 あの時、あの瞬間、もし自分たちが別の道を取っていればどうなったのだろうか。

 イグレインはウーサーを憎むこともなければ、ゴルロイスが死ぬこともなかったかもしれない。

 そんな事ばかりがエクトルの脳内で巡る。


 しかし、その考えは同時にアルトスの存在を否定することになる。


 そんな矛盾にエクトルは一人、不器用ながらも悩ませていた。


 真実を告げるような事になれば、アルトスはどういった反応をするのだろう。

 もしくは、アルトスに何も告げずにアルトス自身が真実に辿り着いたら……。


 どうすることもできない悩みにエクトルは頭を抱える。

 特段賢いわけでもなかったエクトルにとって、アルトスの秘密は重荷だった。

 しかし、それでも隠し続けれらたのはメアリーの支えがあったからであり、アルトスを自分の子として迎え入れたのもメアリーがいたからだった。


 幾度となくエクトルはメアリーに助けられてきた。

 しかし、それももう時期終わる。


 アルトスはもはやかつて何も知らなかった子供ではない。いつの日か、彼は真実へとたどり着く事になる。そうななった時に、エクトルはどういう言葉をアルトスに告げなければならないのか。それはまだ、わからない。しかし、それでもエクトルは決めなければならない。


 例え、未来がどのようになろうとも––––––––。







「そうよ、エクトル。私たちは今度こそ全てを終わらせなければならない。今度こそ、全てを……。」


一人、ホーリー城の上でワインボトルを片手に騒ぐ城下を眺めながらマーリンはどこか儚げに呟いた。

 


 それでは読んでくださってありがとうございます!! ( ^ω^ )V


 広告の下にある星をタッチすると私を応援できるのでよろしくお願いします!!

 また、少しでもこの物語を『面白い』、『続きが気になる』と思っていただけたら、

 レビューや感想等の方もお願いします!!


 ( ✌︎'ω')✌︎<オネシャス!

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